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健康寿命をのばそう!シニア力を生かす地域の取り組み

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健康寿命をのばそう!シニア力を生かす地域の取り組み

健康寿命をのばそう!シニア力を生かす地域の取り組み

宮部 綾乃 (postgresグループ暮らしいきいき館・主任介護支援専門員)

2016-09-01

「支えを必要とするかもしれない人」から、「誰かを支える人」へ!シニア力が活かされる地域は規定概念に縛られることのない豊かな社会創出へのバトンなのかもしれません。

健康寿命を延ばそう!

これは、急激な少子高齢化が進むなか、国を挙げて取り組んでいる課題です。

国は、健康増進法に基づく「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」に、健康の増進に関する5つの基本的な方向を示し、その一番目に【健康寿命の延伸と健康格差の縮小】を掲げました。


                  
 

「健康寿命」とは、日常生活に支障がない状態のことですが、つまりは医療や介護といった社会保障費を使わなくて済む(使ってもごく少額)期間ということで、高齢社会における社会保障費の抑制のためには、この「健康寿命」を一年でも半年でも長く伸ばすことが、今後の日本の経済負担を軽減させるために非常に大きな要因であるということです。

 

現在日本人の平均寿命が「男性80.8才」「女性87.1才」(ともに2015年7月現在)であるのに対し、「健康寿命」は「男性 71.1才」「女性 75.5才」と、男性でおよそ9年、女性だと12年もの間、誰かの世話になって生活を送るということで、これは国の経済的負担の軽減ということだけでなく、「個人の生活の質」という側面からも「心身とも健康で、自分のことが自分できる期間の延伸」は、多くの人にとって目標となることだと思います。

「健康寿命」を延ばすための具体的な取組み

高齢者に対しては、「介護予防の推進」が挙げられています。
全国での取り組み事例は、厚労省のホームページに詳細が掲載されており、私たちの事業所がある大阪の大東市では「大東元気でまっせ体操」という、市のオリジナル体操が紹介されています。

http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/yobou/dl/torikumi_05.pdf
 

今年6月末から、弊社、川村義肢株式会社の本社ショールームにて、週1回「大東元気でまっせ体操」を開催するようになりました。

~効きまっせ! 若うなりまっせ! 寝たきりならんで儲かりまっせ!~
「大東元気でまっせ体操」
 

DVDをみながら、座位や立位、臥位によるストレッチと体操、6パターンある運動の中から座位によるストレッチと体操を必須で行うのですが、市のバックアップとして、開催初日には集客を目的とした体力測定会、開催から三回目までは大東市内にある大学から運動指導のためにインストラクターを派遣していただいています。また、半年後には栄養教室・口腔ケアについての勉強会なども企画され、単に運動教室だけではなく、健康教育の場としても活用されています。

 

こちらに参加されている皆さんは、地域の元気シニアの方々で、当所だけではなく別の場所でやっている「大東元気でまっせ体操」にも参加されている方や、別に有料の体操教室に通われている方、ウォーキングをされている方と、非常に健康意識の高い皆さんです。

 

一時間ほどの時間の中で、DVDをみながら体操を行うのは、休憩を取りながら40分ほどです。 残りの時間を使って、何かしらの『来てよかった、また体操しに来よう』『家でも意識してやってみよう』と思っていただけるようなきっかけづくりをするということも地域のなかで、私たち民間事業所ができる役割の一つではないかと考えています。

 

まだまだ、どんなことを提供していけば皆さんの運動や健康意欲の助けになるのか手さぐり状態ではありますが、私たちが持っている知識や情報を中心にご提供していきたいと思っています。
 

先日は事業所のケアマネより認知症予防に効果があるという「デュアルタスク」を紹介したところ、皆さん「あ、間違えた。難しいわ~」と言われながらも、お互い笑顔で楽しまれていました。
 

ケアマネジャーから「認知症予防のデュアルタスク」をご紹介

商店街の憩いの場 ・寄り添う想い ・つながる心

 大東市に隣接する四條畷市では 「四條畷荘 いっぷくステーション よろか」という、商店街の空き店舗を活用した社会福祉法人の地域公益事業の取り組みがあります。
 

     ~商店街の憩いの場 よりそう想い、つながる心~

       いっぷくステーション 「 よろか 」

 

「よろか」は、昨年(平成27年9月)に、この地域に昔からある栄商店街の空き店舗を借りてオープンしました。
誰でも気軽に立ち寄れる立拠り所として、祝日をのぞく週三回(月・水・金11:00~17:00)地域に開放されています。
商店街の入り口近くという立地で、お買い物のついでや、トイレを借りにといった感じで皆さん立ち寄られているとのことです。
 

                      
                   誰でも気軽に立ち寄れる  いっぷくステーション よろか

 

オープンからおよそ1年。
単にお茶のみの場というだけではなく、近隣の整骨院が体操教室を指導されたり、訪問看護ステーションの看護師さんが健康相談会を開かれたり、ミニコンサート、男性のための調理教室などの多彩な催しが企画され、来られる方を飽きさせません。

 

                  
               近隣の整骨院より健康体操教室を開催 イケメン講師との会話も楽しい
 

また地域住民の方の相談をいつでも受けることができる様に、多忙な業務をやりくりし、同法人の職員さんが常に詰めているのも「市の窓口や包括に行くのは、どんな人が出てくるか不安だけど、ここなら知ってる人がちょっとした愚痴も聞いてくれる」という気安さにつながっているようです。

 

ただし、法人の職員さんたちは、あくまでも裏方に徹しており、来客への対応や新しく来られた方が、気持ちよく過ごせるようにとのお声かけなどは、この「よろか」に通ってこられる地域の方が中心に担っておられます。

 

その中で、リーダー的な役割を果たしておられる一人の女性のお話しが、とても印象的だったので、ご紹介したいと思います。

 

地域の立拠り所が、個人の生きがいに

女性はSさん 80才というお年を聞いてびっくりするほど、軽やかな身のこなし、来客や、話をされている方々へのお茶やお菓子の準備、長年飲食業をされていた方では?と思うような気配り、目配りぶりです。

 

実は、このSさん 同年代のご主人とお二人暮らしで一年前まで、物忘れに悩まれていたそうです。夫婦でぼんやりとテレビを見て過ごす日々、物忘れが増えて不安に感じる。自分の物忘れを夫のせいにして、ご主人を攻めることもあったようです。そんな時、オープンするよろかでのお手伝いを頼まれました。

 

ご主人に相談されたところ「必要としてくれるとこがあるんやったら、そんないい話はない。ぜひ行って来い」と快く送り出してくださったとのこと。
 

この理解あるご主人は、今では週三日Sさんがよろかに行っている間、留守を守り家事を手伝ってくれるようになりました。何よりも物忘れが増えて不機嫌になることの多かったSさんがよろかに通うことで、いつも機嫌よくいきいきとしていることを、誰よりも喜んでいるそうです。
 

そして、Sさんはこう言われました。
『 よろか に来るのは、私の生きがいです。なんだか物忘れも減ったんですよ』 と。           

 

Sさんが、この よろか に出会っていなかったら、どうなっていたでしょう?物忘れが進行し認知症になって介護サービスを受ける立場になっていたかもしれません。閉じこもりがち、無気力になって、体調を崩し医療ケアを受けることになっていたかもしれません。つまり、支援を必要とする人が一人増えていたわけです。

 

私は、介護保険のケアマネジャーという仕事柄、何らかの介護サービスを利用している方と接する機会が多いのですが、「誰かのお世話になっている」という状態は、利用者さんやご家族にとって、決して満足した生活を送っているとはいえない、と感じています。

 

誰だって、介護ヘルパーやケアマネジャー、医師のペースで生活を決められたくはないはずです。誰かに決められた生活よりも、少しくらい体がしんどくても、自分で選んで、自分で決めた毎日を送りたいと思っています。

 

よろか への参加は生きがいと役割を再得したSさんの生活の質を格段にあげました。
 

Sさんは、「支えを必要とするかもしれない人」から、「誰かを支える人」へと変わったのです。Sさんのように、地域で潜在しているシニアの力を活かすことは、地域全体の健康寿命を延ばすための大切なキーワードになります。

てきぱきと調理教室で腕前を披露するSさん

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