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パシフィックニュース

スーパートーカーを用いた就労事例と就労支援の取組み

AAC(コミュニケーション)

スーパートーカーを用いた就労事例と就労支援の取組み

グループ事業開発本部 松井 由起子

2011-07-01

弊社が2010年4月より開始しました就労支援の取り組みについて、開始の経緯や就労事例を2010年12月12日、ATACカンファレンス(京都)にて発表致しました。前号に引き続きまして、その内容を紹介させていただきます。

機器を使った会社案内業務の開始

実際には6月から業務を開始しました。VOCA(Voice Output Communication Aids:音声出力型会話補助装置)も電動車いすも本人にとっては初めて使う支援機器でしたが、少しずつ慣れ、スムーズに案内できるようになりました。会社見学ツアーでは、義肢・装具・車いすなどの多くの製造現場を約1時間かけてご案内します。学校などの団体から、個人様までさまざまなお客様がお越しになります。工場内は音が大きいため、スーパートーカーの音量を最大にし、さらにマイクを横に設置して、説明の声がお客様に届くようにしています。

会社案内

アンケート結果

お客様の満足度

毎回お客様の満足度をアンケートで測っていますが、機器を使った見学ツアーと社員のみで実施したツアーを比較した場合、満足度に差がないことも確認できました。

軽作業業務

前号にてご紹介しました会社案内業務に加えて、軽作業も担当していましたので、その様子もご紹介します。
写真1はセミナー終了後の資料の仕分け作業です。写真2はDMの封筒入れです。中身を入れる方向を間違えないように、前に見本を置いて取り組んでいます。
写真3は粗品を20個まとめてビニール袋へ入れる作業です。あらかじめ20個入れた重さをはかりで量っておいて、その重さを目安にして、数を数えています。また部屋の中で誰かに助けを呼ぶ際、「通じにくいかも」という不安を本人が持っていたため、「すみません、ちょっと来てください」と録音したビッグマックを置きました。「あると安心する」という本人からの意見に、VOCAの役割を改めて実感しました。

写真1:セミナー後の資料仕分け

写真2.DM封筒入れ

写真3.粗品ビニール封筒入

これまでの気づきと社内での効果の確認

2010年6月から12月までの7ヶ月間、一緒に働いて気づいたこと、学んだことが多くあります。

  1.  「働くこと」が本人に与える好影響
    仕事を始めてから、身だしなみやマナーに気をつけるなど、生活面での良い変化が表れて驚いている、とセンター職員の方から教えていただきました。また出勤日を非常に心待ちにしていて、仕事の様子などを頻繁にセンターで話していることを聞いています。
     
  2. 会話補助装置の可能性と限界
    言葉がうまく伝わらない時にきちんとサポートしてくれる人や機器があることは本人にとって大きな安心につながること、その面で機器が持つ役割はとても大きいことを実感しました。同時に、場面に即した、臨機応変な対応を求められる時は限界があることも改めて感じています。
     
  3. 障がいのある人と働く上で配慮すべき点
    昼食時の配膳や支払い、トイレに関することなど、業務以外での心配事が少なからずあること、またそれらは本人からは言いにくいことであること、これらのことを私たちは理解し、いつでも喜んで手助けすることを本人に言葉でも態度でも示し続けることが大切だと感じています。

今後の取り組み

障がいのある人々、特に「重度障がい者」と呼ばれる人々が働きやすい社会を実現するには、当然ながら支援機器の活用だけでは不可能です。社会(公的制度、通勤事情)・企業(職場環境の整備、重度障がい者の能力を高めるOJTプログラムの開発、トレーナーの育成)・人(家族・同僚の理解)など様々な要素での成熟が求められます。これらについて包括的な理解を持ち、社会へ提言・変化を推進できる「スペシャリスト」も必要だと考えます。

ここで紹介させていただいた、「会社見学の説明員」という業務は、限定された事例です。今後は、幅広い業務において障がいのある人が働く上で支援となる機器や職場環境を学んでいきたいと考えています。これからは職業リハビリテーションセンターからの積極的な実習受入れを開始し、より多くの気づき、学びを得ながら、「誰もが働くことができる社会」へ企業として取り組みを続けていきます。

スーパートーカー

ぺちゃら

ビッグマック

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