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パシフィックニュース

フロッグスイング(ロングタイプ)で感覚統合を育もう

感覚統合

フロッグスイング(ロングタイプ)で感覚統合を育もう

こどもの主体的な関わりを成功・達成に導くために

滋賀県立小児保健医療センター 療育部
作業療法士 天田 美恵

2024-09-02

感覚統合療法へのニーズの高さ

当センター療育部は、昭和63年(1988年)10月に、当時、滋賀県立心身障害児総合療育センターとして開かれ、当時にはめずらしく感覚統合療法を実施するための100㎡を超える専用室を備え、作業療法士全員が日本感覚統合障害研究会(現、日本感覚統合学会)認定講習会を順次、受講して、外来診療においてその任に当たってきました。
また、滋賀県からの委託を受けて、県下の地域療育教室(現在は19教室)への巡回療育相談事業も担ってきました。とりわけ作業療法士は、感覚統合の視点で支援を要するこどもさんを対象とすることが多く、昨年度は15教室に、計59回巡回し、延べ288人のこどもさんと出会い、評価・実践を通して、ご家族様、地域療育教室をはじめ、保育園・幼稚園など関係機関の方々に療育相談を行いました。

さらに、当療育部では、毎年、多様なテーマで療育研修会を主催しています。そのなかで、作業療法士は、感覚統合の理論や遊具の体験、事例検討をテーマとして実施しています。この療育研修会には、前述の関係機関に加えて、学校、教育委員会、市役所、支援事業所など県内の関係機関の多くの方々にご参加いただいており、発達に課題や困り感のあるこどもさんに対する感覚統合療法への関心の高さを実感しています。

感覚統合を促す遊具

対象となるこどもさんとご家族様、周囲を取り巻く支援の方々にこれまでの発達の経過や困りごとを伺いながら、こどもさんの発達を脳における感覚統合という視点で評価・分析し、治療介入や相談・指導を行う上で、感覚統合を促す遊具は大変重要な役割を果たします。
当療育部でも、たくさんのこどもさんの多様なセンソリーニーズに応じ、適応反応を引き出すために、これまで多種多様な遊具を購入し、使用してきました。また、遊具の安全性を維持し続けるためには、細やかなメンテナンス(点検・修理)や更新(買い替え)も必要です。
県下の地域療育教室でも、35年間の巡回療育相談事業を経て、全教室において感覚統合を促す遊具を用いた療育が展開されています。
作業療法士は、相談事業時には①遊具の正しい取り付け方や安全な設定を確認し、必要に応じて指導します。そして、職員の方々からは②個々のこどもさんに応じた効果的で多様な遊具の使い方の指導を求められます。

また、当療育部で使用している遊具を実際に見に来られて、体験して効果を実感されてから購入されることもあります。

フロッグスイングについて

フロッグスイングは、腹臥位で乗り、上部のバンジーゴムの特性を利用して、名前の通り、カエルのように上下に跳ねることができます。また、自分で手や足を使って移動・回転、または、手や足から誘導してもらっても使用することができます。
腹臥位伸展姿勢を促すこともできます。
また、腹臥位とは別に、ブランコのように座位で乗ることもできます。当療育部で設置しておくと、こどもさんにとってはブランコのイメージに近いのか、個々の発達の特性からか、自分から乗り込む場合は、腹臥位よりも座位で乗ろうとするこどもさんが近年は多いように感じます。

前庭感覚を求めているが、姿勢筋緊張が低緊張だったり、重力に抗した姿勢保持や姿勢バランスの難しさから、満足できるほどの前庭感覚を質的にも量的にも受け取れていないこどもさんが、固有受容感覚の反応を高め、同時に前庭感覚も自分で得られる姿勢として好んで選択する印象を持っています。
座位では、両手で青いロープを握り、重心を上げ下げできれば上下に跳ねることができます。自ら足で床を踏んだり、蹴ったりして直線的な動きや任意の動き、軸性回旋や大きく円を描くような回転ができます。
腹臥位より、乗り込みのイメージがしやすく、顔・頭が直接床についてしまう恐れが少なく、視空間が広く、より速いスピードや大きな可動範囲が得られます。
誰もいないと自分から乗ろうとするのに、他の人が近付いてきたり、動かそうとされることに不安や警戒があったり、体に触れられることに嫌悪や抵抗があるこどもさんが前庭感覚を求める場合でも、自分で乗り込めて、動かすことができて、方向や速度を自分で調整して、自分で止められる、自分でおりられる、何度でも繰り返すことができるという特徴は受け入れやすく、好んでくれることを多く経験しています。

求める感覚を自ら入れることができ、さらに、立てられた大きなウレタンブロックを蹴って倒す、床に置かれた輪を手足で取るなど、こどもさんが目的をもって成功・達成して自ら楽しめることは、固有受容感覚・前庭感覚・触覚などの感覚間の統合を促すことだけでなく、その統合のレベルを高める動機づけになり得ると考えています。

立てられた大きなウレタンブロックを蹴って倒す様子

床に置かれた輪を手足で取る様子

しかし、パシフィックサプライ(株)さんがこれまで販売されてきたフロッグスイングは座面から上部の木製バーまでのロープの長さが約30cmで、座位で乗るには、就学前のこどもさんでも木製バーが頭に当たる位置にあり、おしりから乗り込もうとするとバーをくぐらないといけませんでした。

当療育部では、ロープの長さを50cmに設定したものをすでに長らく使用していました。この長さでは、両手を挙げてバーを持つことができるこどもさんでは、上下の動きが行いやすく、骨盤が後傾しがちなこどもさんでもまずは自分で乗れるチャンスを持つことができていました。

一昨年から昨年にかけて当療育部のフロッグスイングを更新する際、ロープの長さを50cmにしていただきたいとパシフィックサプライ(株)さんにお願いしたことがきっかけで、フロッグスイング(ロングタイプ)の商品化が検討され始めたと伺いました。

昨年度、県内の関連機関からフロッグスイングの購入について当療育部が相談を受けた際には、ロープの長さの変更について情報提供し、これまでの長さで納品されたものを修理対応していただいたり、新規購入時から特注扱いで対応していただいたりして、7施設で約50cmのものが導入されました。

地域療育教室 セッティング例

地域療育教室 セッティング例

そして、今年度5月にフロッグスイング(ロングタイプ)が商品化され、従来の長さのものと約50cmのものを選択して購入することができるようになりました。
 
今年度も5月から始まった巡回療育相談の際、約50cmのものを導入された施設の実際の使用場面では、こどもさんたちが順番を待って自分で乗ろうとしています。施設によっては、こどもさんがこれだけ自分から求めるのなら、もう一台購入して、2人で一緒にクッションを倒したり、手を伸ばして把持した床上のボールで、または、足ですくった輪でストラックアウトをしたり、遊びの共有・協力が促せそう…と話されるところもありました。

おわりに

今回、当方の希望に対してご対応くださったパシフィックサプライ(株)さんに深謝いたしますとともに、今後もこどもさんの目線で遊具に対するニーズをお伝えさせていただけたらと考えております。

小児施設支援営業担当者より

「あれ?なんか長くないですか?」
滋賀県立小児保健医療センター療育部にて、フロッグスイングを初めて見た時、つい聞いてしまいました。
しかし天田先生は「これがいいんです!」と断言し、その良さを一生懸命教えてくださいました。
巡回療育相談の施設でもその良さを伝えていただき、ご注文につながったのですが、当時は標準仕様だったため特注での対応とさせていただきました。
 
その後、特注での実績が増えてきまして、ロングタイプとして正式にラインナップに加えることになり、その旨お伝えした時の天田先生の笑顔は忘れられません。
 
お子さまが自発的に取り組む様子が見受けられる、
そんなフロッグスイング(ロングタイプ)を、
ぜひお試ししてみませんか?
 
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