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脳血管障害への下肢装具カンファレンス2018in福岡

装具

脳血管障害への下肢装具カンファレンス2018in福岡

脳血管障害への下肢装具カンファレンス2018in福岡

遠藤 正英(理学療法士・桜十字福岡病院) 

2018-10-15

8月に開催された下肢装具カンファレンスin福岡。下肢装具に精通した医師、セラピストが存在しない地域や施設をどう支えるのか。その仕組み作りが問われています。

はじめに

脳卒中片麻痺患者において下肢装具を用いた歩行練習を行うことは重要である。しかし施設によっては知識、経験の不足などの理由により、下肢装具を積極的に作製、使用することができていない場合もある。そこで各施設の下肢装具に精通した医師、セラピストなどが中心となって装具回診などの議論の場を作ることで作製、使用を行いやすい環境を作ることは重要と考える。しかし施設によっては下肢装具に精通した医師、セラピストが存在しないこともあるため、それぞれの施設を地域で支える仕組み作りが必要だと考える。

当院の装具回診と装具外来

当院は福岡県福岡市にある100床の回復期病棟を有した病院であり、以前は装具作製の判断を理学療法士(以下PT)に一任していたが、個々人の判断により装具の作製が遅かったり、装具が必要な患者に作製されなかったりしていた。そこでリハビリテーション専門医1名、PT1名、義肢装具士1名が運営し装具の検討を行う装具回診を週1回実施した。しかし装具回診への参加はPTの判断に委ねていたため、個々人の判断による差は埋めることができなかった。

そこで装具回診が実施されるまでの1週間に当院に入院した脳血管疾患患者は、症状に関係なく全症例が装具回診で装具の必要性を検討することを義務付けた。その結果、装具の作製本数に変化は見られなかったものの、装具の必要性を検討するまでの日数と完成するまでの日数が短縮し、作製した装具の種類にも変化が生じていた。

しかし入院中における装具完成後のフォローアップに関しては義務付けていなかったため、患者の身体機能に適した状態での装具を使用していない場合が見られていた。そこで装具を作製した患者は月に1回装具回診で検討を行うことで患者の身体機能に適した装具の調整をすることを可能にした。

装具を使用して退院した患者においては、患者とその家族、ケアマネジャーなどに装具に関する注意点を申し送りしていたものの、装具の不適合、破損などに気づかずに装具を使用している症例を目にすることがあった。そのため週に1回1時間程度、予約制で装具のフォローアップを行う装具外来を装具回診と同じメンバーで実施した。装具外来は退院後1、3、6ヶ月、それ以降は半年毎に受診するように促している。

その結果、退院した約半数の患者が装具外来を受診することができ、すべての患者が装具の調整を必要としていた。さらに調整する時期に関しては1ヶ月の患者もいれば6ヶ月の患者も存在し、一定の傾向がみられなかった。装具外来を行い定期的にフォローアップすることにより退院後も患者の身体機能、生活に適した装具の調整をすることを可能にした。

福岡装具連携の会

図1.福岡装具連携の会の実施風景

装具に関する研修会(左)、症例に関するディスカッション(右)を実施している。

装具回診、装具外来を各地域、各施設で実施することができれば早期の装具作製と入院中、退院後のフォローアップが可能となり、患者の身体機能、生活に適した装具の使用が可能となると考えた。そのため、福岡市近郊で働いている地域のリハビリテーション専門職に声をかけ、2から3ヶ月に1回19時から2時間程度、装具回診、装具外来を実施するための検討を行う福岡装具連携の会を結成した。

結成時は4施設5名の参加者だったが、2回目には16施設、24名が参加し、検討の結果、まずは知識の向上を図るために事例検討と研修会を行うことが必要という結論に至り、現在まで9回実施し平均20施設弱の30名程度の参加者が参加している。しかし、事例検討と研修会のみでは装具回診、装具外来を各地域、各施設で行うことはできないため、装具回診ワーキンググループを作り、装具回診を実施していない施設でも装具回診が実施可能となる様に装具回診マニュアルを作成し配布した。

以上のように福岡装具連携の会を実施することにより、今まで装具作製をしていなかった施設でも装具作製に踏み出すことができ、さらには装具回診を開始する施設まで見られる様になった。

下肢装具カンファレンス2018 福岡

下肢装具の必要性をさらに広めるとともに、福岡装具連携の会の活性化を目指して、パシフィックサプライ株式会社の協力により2017年に下肢装具カンファレンス2017福岡が開催された。私は企画から携わることができ、基調講演を2演題、装具作製の取り組みを行っている回復期の3施設でシンポジウムを1つ行った。非常に多くの参加者に来場いただき、装具を積極的に使用、作製する意図と各施設が取り組んでいることを発信できた会になったと考えている。

下肢装具カンファレンス2018においても引き続き企画から携わることができた。下肢装具カンファレンス2017では装具を積極的に使用、作製しているモデルのような話をして頂いたため、下肢装具カンファレンス2018ではできていないところへの働きかけができればと思い、「装具療法の全体のプロセスとその現状と課題を考える」と題し、基調講演を1演題、急性期、回復期、生活期のセラピストから各期における装具を取り巻く現状と課題を講演していただいた(図2)。

図2.下肢装具カンファレンス2018福岡


各グループに急性期、回復期、生活期で働いている人が入るように配置し、テーマに応じたディスカッションを実施


      ディスカッションをした内容の発表



その後、シンポジストと参加者を6人程度の6つのグループに分けた(各グループには各期のセラピストができるだけ入るように、そしてできるだけ各県で集まるようにした)。基調講演をして頂いた西宮協立リハビリテーション病院の医師である勝谷将史先生の進行の下、各グループで急性期、回復期、生活期における現状と課題、各期が求めること、今後行うべきことをディスカッションし発表してもらった(表1)
 

急性期では装具の積極的使用と情報の共有(患者に対して使用した装具や詳細な訓練内容)、回復期では装具作製する仕組みと生活期との連携強化、生活期ではフォローアップの強化と生活期同士、回復期との連携強化が課題として挙げられた。各期においては所属する施設は違うものの、ディスカッション後に辿り着く内容は同様であり、特に知識の不足は非常によく聞かれていた。またそれぞれが連携する必要があるということが特に言われており、問題の共有と解決への取り組みを地域で行う必要があるということが改めて浮き彫りにされた。


脳血管障害への下肢装具カンファレンス2018福岡 

今後の展望

福岡装具連携の会での取り組みは十分とは言えないが、地域の施設に非常に良い影響を与えることができているのではないかと考えている。今後は各県各地区でも装具連携の会を定期的に開催されることが期待される。また、各県がバラバラに装具連携の会を行うのではなく、各地区の情報を各県でまとめ、各県で出た議題に対して意見交換できるような取り組みを行うことにより、各地域での格差も是正できるのではないかと考える(図3)。



 
引用文献
1)遠藤正英.装具を使用した歩行を維持する連携・教育システムの構築.脳卒中リハビリテーション.増田知子.株式会社gene;2018.P86-101