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パシフィックニュース

児童デイサービスでの感覚統合機器活用の取り組み

感覚統合

児童デイサービスでの感覚統合機器活用の取り組み

児童デイサービスでの感覚統合機器活用の取り組み

元氣ジムジュニア東戸塚  理学療法士 藤浪 恭

2019-06-17

全国に放課後等デイサービスが増えています。今回は、“運動とリハビリテーション”に特化した運動スクールのような児童発達支援・放課後等デイサービス“元氣ジムジュニア東戸塚”の取組みをご紹介いたします。

元氣ジム ジュニアの取り組み

株式会社ルネサンスは運動とリハビリテーションに特化した児童発達支援・放課後等デイサービスとして 元氣ジム ジュニア東戸塚 を2018年12月に開設した。元氣ジムジュニア東戸塚では運動の機会を提供するとともに、運動発達を促し身体機能向上、社会性を育むことを目的としている。

当施設利用者の疾患の振り分けを図1に示す。開設前は個別的な関わりを中心に考えて感覚統合機器(トランポリン、ホーススイング、スペーススイング、フレクサースイング、ボルダリング、スペースブロック)を導入したが、10人がほぼ同時刻に来所する状況ではスペースの確保や注意の持続が困難であった。


株式会社ルネサンス利用者の疾患の振り分けグラフ
 【図1】

そこで、主体的に遊びの幅を広げられ、他児との関係性を構築できる児童に関しては、個別的な関わりの時間を減らして全体の枠組みで介入することとした。


代わりとして、週替わりでアスレチックのようなセット(図2、3、4参照)を作り、来所後すぐ自分たちで遊びを展開できる土台を作っておき、来所から1時間程度は自由な遊びの時間とし、感覚統合理論に基づき、前庭感覚、触覚、固有感覚が正確に入力できるよう、また児童がワクワクするように、動きを想像しながらセットを組むように注意するなど、環境設定により、集団での遊びの中に感覚統合を取り入れるよう創意工夫している。


一方、なかなか他児との関係性を構築できない場合は、マンツーマンで介入し、他児と交わって遊びが展開できたら徐々に離れるようにしている。

来所時のセット例

図2】 
ハンモックとボールプールを組み合わせた環境を中心に設定している。

マットを5枚使用し凹型にして使用。凹型部分をボールプールにして触覚入力を実施する。ハンモックは見た目も鮮やかで児童に人気があり、前庭感覚、触覚、固有感覚の入力が可能である。トランポリンを使用してマットに飛び移ったり、マットから床に飛び降りたり、凹みの淵に立ち綱引きをしたりして固有感覚を入力する。

ラダーは固有感覚、前庭感覚、眼と手、上下肢の協調性運動として有用である。セットの周りは走り回れるようにして、鬼ごっこなどがしやすいよう工夫している。鬼ごっこ中は動線に障害物を設置し、難易度の調整をしている。
図3

図3、図4:トランポリンを中心とした設定。
マット5枚を凸型にして使用し、トランポリンでマットに飛び移ったり、よじ登ったり、飛び降りたりする動作を通じて固有感覚を入力する。

また、スペースブロックの円柱状のものはボールプールのように使用することで触覚を入力する。
ラダーはハンモックのように吊るして使用し、上に乗ったりぶら下がったりして固有感覚や前庭感覚が入力できるようにした。

ホーススイングは一本橋のように使用しているが、危険がないように必ず職員がつくようにして安全を確保している。
こちらも、子どもたちの活動の変化に応じて常に変化させている。
図4

サーキットトレーニング

図5

図5、図6:スペースブロック、ボルダリング、トランポリン、スリングなどを組み合わせたコースを作成し、30分程度のサーキットトレーニングを実施している。


このセッションは、36の基本動作を意識しながら作成し、競争や協力を想起することで、他児との関わりを推進している。
図6

運動による効果と社会性の学び

サーキットトレーニングでは運動機能の向上とともに、順番に待つこと、チームで協力するなどの社会性を学ぶことを目的にしている。座る、待つことが困難な児もまだいるが、開設から4か月を迎えて少しずつ変化が見られている。もちろん感覚統合機器を使用し、必要な感覚入力を行った結果と考えられるが、もう一つ報酬系の影響だと考えている。報酬系の中心的役割を担っているのは中脳の腹側被蓋野、線条体の側坐核である。中脳視蓋野は様々な脳領域から軸索入力を受けており、一次運動野との連絡もあるとされている。

※1、2 また、藤本※3は運動後の脳の神経伝達物質代謝と情動の変化についての研究で、「運動終了15分後ではほぼ全ての運動において快感情、リラックス感、不安感の改善が認められた」としている。また、サーキットトレーニングでは感覚統合器機を用いて、子どもたちがワクワクするコース設定と難易度を各々に設定し、達成感という適応反応が出現するようにしている。学校で着席する場合、待っているのは勉強であるが、当施設の場合は子どもたちが楽しいと思えることが待っている。運動による快感情、ワクワク感、達成感により報酬系のサイクルが回り、座る、順番を待つことができるようになったのではないかと推察される。


身体機能面では感覚統合器機を使用して遊ぶことにより、前庭脊髄路、毛様体脊髄路が賦活され、身体機能向上の可能性があると考えている。内側前庭脊髄路は対側を下降し、体幹の近位筋に作用し、外側前庭脊髄路は同側を下降し下肢伸筋に作用している。感覚統合器機を使った前庭感覚や固有感覚の入力は感覚統合障害のみではなく、前庭脊髄路を介して体幹筋や下肢の伸筋に作用しているものと考えられる。


また、サーキットトレーニングやセットを組むことで、頻繁に姿勢を変換することになる。その結果、毛様体脊髄路や前庭脊髄路など腹内側系の活動が賦活し、コアユニットが安定することにより運動機能の向上が見られていると推察される。

最後に

放課後等デイサービスでは、個別のセッションの時間は5~10分程度しか確保できないことが多く、十分な機能訓練とは捉え難い。だが、他児の励ましを受け、自分の限界を超え、学校とは違うコミュニティーを形成するなどマンツーマンのセッションでは見られない効果も見受けられる。

感覚統合機器はセラピー用の機器ではあるが、子どもたちにとっては、魅力的でワクワクする遊び道具である。

感覚統合理論を理解し、環境設定を創意工夫することで、放課後等デイサービスのように集団という枠組みの中で使用した場合においても、十分な存在価値と効果を発揮できると考えている。


※1Uchida Naoshige et al. Whole-brain mapping of direct inputs to midbrain dopamine neurons Neuron2012
※2Liqun Luo et al. Circuit Architecture of VTA Dopamine Neurons Revealed by Systematic Input-Output Mapping (Cell 2015)
※3 藤本 敏彦 運動時における脳の神経伝達部質代謝と情動変化および運動の具体策
※4 舟波 真一、山岸 茂則 運動の成り立ちとは何か 2014.5