パシフィックニュース
モーリフト利用事業所からの発信 事例紹介
リフト・移乗用具
社会福祉法人朝日園 鈴木 美砂江
2012-10-01
すずらんの誕生
すずらんの歴史は、平成9年1月に任意団体である小規模作業所すずらんとして誕生したのが始まりです。
当時は、重度心身障害者の日中活動の場として、家族やボランティアの応援を得て運営しておりました。その後、お子さん達も成長し、お母さま達は、年を重ね、移乗や入浴介助の負担が厳しくなってきました。このため、ご家族の介護負担を軽減したいという要望が強くなり、平成15年に社会福祉法人朝日園に運営移譲し、すずらんは、作業所から身体障害者療護施設(通所)へ、さらに今年4月からは障害福祉サービス事業所(生活介護)へと移行しました。
開設当初からの毎日入浴、普通に過ごすということを大切に考えております。ただ小さな作業所に造られた入浴設備は、とても狭く、介助のできにくいものであり、事業所移行後もその設備は、そのまま使用されていました。
写真のように狭い入浴場へ入っていただくために、まずは畳へ移乗してもらう必要があり、利用者の負担やスタッフの移乗介助・入浴介助負担は、利用者の増加に伴い、限界に達しておりました。
写真1
写真2
負担のない介護をめざして
この状況を何とかしなくてはいけないと摸索しているときに、香川県高松市リハビリテーションセンターにて平成21年に行われた、保田淳子先生の「負担のない介護、抱えない介護」の講義を聴講し、リフト、スライディングシートの学びを知ったときは、眼から鱗の衝撃でした。
しかし、今までの介護現場から、果たして、利用者が受け入れてくれるか、職員がリフトを取り扱うことができるか、設備の問題、リフト導入への理解を得ることなど課題は多くありました。
そこで、私たち職員が本当に必要かどうかを確認するため、神戸で開催された日豪国際フォーラムに全員で参加しました。「新しい介護、良い介護」とはどういうものかを知り、様々な製品を見聞きした上で、実際にリフトに乗る側、動かす側を体験してみました。
その中で、動きがスムーズで速度も速いモーリフトに出会い、重度の障害により身体に緊張がある方にもスリングシートが差し込みやすく、安心して移乗が出来るのではないかと参加者全員の思いが一致しました。
モーリフトを使用することにより、利用者が安全に安心して移乗できること、職員の介護の負担が軽減できること、そのためには、畳へ移乗するのではなく、ベッドが必要であること、リフトを使用して入浴していただくには、プライバシーが保てる広い場所が必要であることなどを説明するために、ほかの施設で使用済であったリフトを譲り受け、実際に使用してみることにより、利用者と施設の理解も深まり、モーリフトの導入が決まりました。
ザ・パーソンズ・ケアリング最優秀賞受賞
朝日園では、AIP(アサヒ・インディペンデンス・プラン)活動を実施しております。意識を変え、みんなで工夫と知恵を出し合って業務改善を行うなど、楽しく働きがいのある職場づくりに取り組んでいます。年1回活動発表会をしており、平成22年度に発表した私たちのすずらん職員チーム「ザ・パーソンズ・ケアリング」(その人のためのケア)が最優秀賞をいただきました。
発表内容としては、モーリフトと以前使用していたリフトとの比較を行い、利用者1名当たりの移乗時間と短縮できた時間を検討しデータ化いたしました。
利用者写真
利用者3名による統計
検討課題としては、下記の4点です。
- 移動・移乗
- 食事について
- 入浴について
- 排泄について
当時すずらんでは、入浴施設を新築する計画が進んでおりましたので、特に移動・移乗については、重要な項目でした。
旧リフト:車いす→ベッド 平均時間6分3秒
モーリフト:車いす→ベッド 平均時間3分33秒
旧リフト:ベッド→車いす 平均時間5分54秒
モーリフト:ベッド→車いす 平均時間2分58秒
以上、平均所要時間を比較するとどちらもモーリフトが旧リフトより約3分近く短縮されているという結果となりました。
リフトを使用することのメリット
- 介護者の負担が軽減される
- 利用者を安全に移動できる
- 利用者の部分的痛みが軽減される
- 遠い所へも移動が可能
- 車いすへの座位が一度で安定できる
- 利用者・介護者ともに体格にかかわらず介助できる
リフトを使用することのデメリット
- 人の手による介助より時間がかかる
- 慣れると1人で操作できるが、今は2人介助が必要
- リフトの回転スペースが必要なため部屋の広さが必要
- リフトの両足が入るスペースが必要なためベッドと車いすへの移乗しかできない
モーリフト使用のメリット
- 四点式ハンガーにより揺れや締め付けが少なく、利用者の部分的痛みの軽減
- 以前使用していたリフトよりモーリフトは、重量が軽く使いやすい
- 昇降時の位置合わせがしやすく車いすへの位置が一度で安定できる
- 折りたたみができるのでどこへでも持って行ける
今後の課題として、デメリットについて解決するため、練習を重ね、慣れていくことで、時間、人の問題は少しずつ、解決していき、広さ、場所に対しては新しい入浴施設を増築することで解決されると思われます。
以上がAIPでの発表概要です。
平成23年6月には、利用者、職員が心待ちにしていた明るく広い入浴施設が完成し、モーリフト、スライディングシートを活用し、安心、安全な入浴サービスの提供に努めております。花の湯と名づけられた新しい入浴施設では、毎日、明るい笑顔の利用者の方々の笑い声が響き、心から楽しんで入浴いただいております。
リフト使用時間
写真3
写真4
今後の課題
日中活動の場の一部が低い畳になっているため、移乗は、「持ち上げ介護」を行っておりましたが、一部改修を行い、部分的にリフトが使えるようになりました。
今後は、さらに環境整備を行い、モーリフトがフルに活用出来るようにしたいと考えております。そのことにより職員の、腰痛、身体的負担が今以上に軽減されると思います。今後とも鋭意、技術研修を行い、昨日よりも今日、今日よりも明日と提供する介護の質の向上を図り、利用者や関係者の満足度をさらに高められるよう、職員一同努めてまいります。
改善個所
関連情報
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