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パシフィックニュース

公的支援に基づく適切な補装具の処方

装具

リハビリテーション

公的支援に基づく適切な補装具の処方

大阪府障がい者自立相談支援センター 正岡 悟、池田一、池埜弥生、奥田真規、岡村憲一

2009-07-01

公的支援に基づく補装具処方の中核的なものは障害者自立支援法による補装具支援である。同法では市町村による補装具費支給という形になっており、同法施行規則で身体障害者更生相談所が補装具費支給の意見書(判定書)を通して市町村に専門的・技術的支援をすることとなっている。その際の補装具の要件の一つに、利用者(申請者)の日常生活や就労/就学等のために長期間使用されるもの、という内容が挙げられている。そしてこの点が、病態や機能の改善のために処方される治療用義肢・装具と一線を画す点となっている。

治療の段階では、日々変化する患者さんの全身状態や装着する局所状態に応じて調節・修正できる柔軟な機能をもち、しかも早期装着・訓練に対応できる義肢・装具の処方が基本となっている。これに対して、いわゆる更生用補装具では耐用年数の期間中、ICFでいう「参加」のニーズを満たし、日常生活・就労/就学を保障する安定した機能を持っているものが重要となる。

今回のテーマとなっている麻痺性疾患の補装具を考えた場合、病態や機能改善の延長線では、変形の矯正・予防、関節の運動制限・補助、異常運動の制限、免荷、歩行補助、等を目的とした処方がなされる。しかし更生用補装具による支援の場合は、これらは通過点に過ぎない場合が多い。寧ろこれらの目的が達成された上で、本来利用者が目的としている生活や仕事がどれだけ支援できるかということについて処方の主眼が置かれている。

図は更生相談所業務を行っている大阪府障がい者自立相談支援センターにおける直接判定に際して、過去1年の間に脳卒中者に処方された補装具の内容ごとに、機能的自立度評価法(FIM)の運動評点合計点の分布を示したものである。

図を見ると運動評点の低いものには下肢装具は殆ど用いられていない。下肢装具が変形の予防や異常運動の制限などにいくらか用いられることがあっても、日常生活を安定させるものとしては寧ろ車いすや座位保持装置の方が実際的であることがわかる。逆に運動評点の高いものは下肢装具使用による機能改善・維持の上に社会参加への展開が図られていることが窺える。また電動車いすのグラフを見ると、移動というニーズ達成のためには下肢装具による機能改善にこだわらず、電動車いすによる実用的な移動手段の確保がもう一つの実際的な選択肢となっていることがわかる。

治療用義肢・装具では、その処方においては合併症管理が高い比重で求められ、専ら医師の判断・裁量が大きい。これに対して、更生用補装具は、その処方目的が歩行機能の改善という段階に留まらず、「参加」やノーマライゼーションを目的としており、処方に関しては、利用者・介助者自身のニーズを中心に、ケースワーカーによる支援、PT/OT/STによる機能・活動の評価と指導、補装具費支給の主体である市町村担当者の調整、補装具を作製するCPOの技術的意見、その他の複数からなるチームが携わっている。これら多種職チームにより、利用者の障がい状況、ADL、QOL、障がい者の生活環境やニーズ、介助者の状況やニーズ、補装具外観についての心理的側面、社会福祉制度による費用負担の調整、といった複数の要因について幅広い見地からの意見が反映された処方がなされていることに、公的支援に基づく適切な補装具処方の最大の特徴があるといえよう。

図1,2:過去1年の間に直接判定により脳卒中者に処方された補装具のうち下肢装具、電動車いす、車いす、座位保持装置について調査。処方の内容ごとに、機能的自立度評価法(FIM)の運動評点合計点の分布をヒストグラムとして示した。

図1

図2