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パシフィックニュース

装具療法地域連携のあり方 事例紹介

装具

装具療法地域連携のあり方  事例紹介

神戸における「装具療法地域連携ミーティング」のとりくみ

医療法人社団康人会 適寿リハビリテーション病院 リハビリテーション部長 栄 健一郎

2013-10-01

はじめに

平成24年5月より神戸で「装具療法地域連携ミーティング」を月1回の頻度で開催している。参加しているのは、適寿リハビリテーション病院(以下当院)と医療法人榮昌会吉田病院、株式会社近畿義肢製作所、株式会社澤村義肢製作所、パシフィックサプライ株式会社の2病院と装具関連企業3社である。

ミーティングでは毎回ユーザーに「よりよい装具療法」を提供するための課題を話し合い、それぞれの立場から活発に議論している。はじまって間もないが、このミーティングをきっかけに、いくつかの変化が生じてきている。
今回は主に当院での装具療法の変化(先行する病院の見学、装具検討会の開始、義肢装具士との関係の変化等)について報告する。

装具療法地域連携ミーティングの紹介

ミーティングのメンバー
参加している2つの医療機関のうち当院は83床すべてが回復期リハビリテーション病棟のいわゆる回復期リハ病院であり、吉田病院は脳卒中の救急医療を専門とするいわゆる急性期病院である。この2つの医療機関からは理学療法士が参加している。

澤村義肢製作所と近畿義肢製作所はどちらも神戸市の義肢製作所である。2社からは義肢装具士が参加している。
この4社に義肢装具メーカーであるパシフィックサプライを加えた5者が参加メンバーである。急性期、回復期の医療機関と義肢装具製作所、メーカーというなかなかそろって顔を合わす機会のない5者となっている。5月から台風で1回延期された以外は現在まで毎月開催され、欠席は0である。


ミーティング開催の経緯
パシフィックサプライの担当者が4者に声をかけたことをきっかけに当院で定期的に集まることになった。
それぞれ違う立場ではあるものの、「装具療法」について、いくつかの問題意識を持っていた。そのうちの一つは装具も装具療法も進歩しているのに医療機関で処方される装具は進歩に対して変化があまりないように見えるのはなぜか?である。

この数年間で装具は進歩し、装具療法の新しい方法論も見聞きする機会が増えている。さらに脳卒中ガイドライン2009において早期の装具療法が推奨されている。
そんな状況にもかかわらず、現場の医療機関ではまだまだ「以前から使っているor使ったことがある」一部の装具をステレオタイプに処方、作製、使用している現状がある(少なくとも当院はそんな状況であった)。
装具療法と装具は進歩しているはずなのに、新しい装具や装具療法が医療機関で活用されないのはなぜか?は5者にとって共通の課題となっている。

平成24年3月までの当院の装具療法

平成23年4月から平成24年3月に当院に入院した脳血管疾患患者118名のうち、下肢装具(短下肢装具:以下AFO 長下肢装具:以下KAFO)を作製した患者は19名、装具本数は21本(AFO14本、KAFO7本)であった。
作製時期はAFOで発症から117.8日±69.0日、当院入院から60.5日±20.9日となった。同じくKAFOではそれぞれ105.0日±23.4日、45.8日±16.7日であった。

ミーティング開始後の当院の変化

愛仁会リハビリテーション病院の見学
ミーティングで近畿義肢さんより先進的な取り組みをしている医療機関として、社会医療法人愛仁会・愛仁会リハビリテーション病院の取り組みについて報告され、それをきっかけに平成24年7月当院の装具チームが見学させていただくこととなった。その後、愛仁会リハビリテーション病院を手本にしていくつかの取り組みがはじまる。

取組み(1)「装具検討会」の開始
愛仁会リハビリテーション病院が実施している装具検討会をモデルに8月より当院でも開始した。参加者はご本人・家族と担当理学療法士、装具チームの理学療法士、澤村義肢の義肢装具士を必須メンバーとし、主治医、リハ医、ソーシャルワーカーなどが必要に応じて加わる形で運用されている。


取組み(2)義肢装具士の時間予約
義肢装具士と理学療法士が一緒に患者さまをみる時間を確保する目的で、義肢装具士の時間を30分単位の予約制とした。

これまでは当院の理学療法士と澤村義肢の義肢装具士の関係は「注文する人」と「注文を受ける人(業者さん)」というイメージに近いものであったが、30分ごとの予約制にすることで「理学療法士」と「義肢装具士」という専門職同士の関係性に変化していくことを期待している。患者さまご本人にとってもしっかり時間を共有するため信頼関係は築きやすいようである。


取組み(3)評価用装具の活用
当院には備品として評価用のAFO、KAFOを数本購入し、積極的に活用している。特にKAFOは平成24年7月に納品されたばかりで、はじめはどのように活用してよいか分からず装具が空いている時間もあった。現在は、当院の装具チームが中心となり部内の理学療法士へ「使い方」を伝達してきた。今ではレンタルで補わないと足りないくらい活用されている。

しかし評価用装具が活躍する一方で、評価用装具でのトレーニングが長期にわたり、なかなかご本人用の装具が作製されないケースをしばしばみかける。

変化(1)装具作製の増加
装具検討会開催後に装具作製本数は微増である。しかし作製本数の増加以上に装具に関連するやり取りがスタッフ同士や澤村義肢とで活発になってきている印象をもっている。今後の変化を見ていくうえで、作製本数の増加だけでなく、作成時期は適切か?処方内容は適切か?変更のタイミングは適切か? 退院後のフォローアップ計画は?など中身にもキチンと目を向けていく必要があると感じている。

まとめ

「装具で困っているひとを何とかしたい」「装具療法を何とかしたい」という問題意識をもつ5社があつまり、はじめは雑談会のようなことから始まったミーティングである。

まだまだ標準化が進んでいるとは言えない装具療法において、このようなメンバーで定期的に集まり、ざっくばらんに話せることはそれぞれの立場で大きな力になっている。

当院においては変化のきっかけとなっただけでなく、変化をどのように進めていくかを相談できる頼りになる存在となっている。小さな集まりではあるが、様々に連携不足・理解不足が言われる中、一つの有意義な「連携」のカタチではないだろうか。

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