検索

Close

検索したいキーワードを入力してサイト内検索をする

パシフィックニュース

震災特集 11

震災特集

震災特集  11

一般社団法人りぷらす 代表理事(理学療法士) 橋本 大吾

2014-05-01

震災後、石巻市に移住した理学療法士がいる。リハビリ職ネットワーク集団「face to face(FTF)」の一員である。原稿依頼の電話の時に熱血漢な青年をイメージしていたのだが、予想は爽やかに裏切られた。穏やかに語る青年の口調は、しっかりと地域の方々に向き合い、共生している自信とも受け取れた。静かなる闘志は、人を動かし、行政を動かし、未来のリハビリをも見据えている。

「face to face 東日本大震災リハネットワーク」は、有志のリハビリテーション専門職者(リハビリテーション専門医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)を中心に、栄養士、保育士、ボディーワーカー等も参加する、災害リハビリテーション支援団体です。

被災地の現状

石巻市は2005年9月、1市6町村が合併し現在の石巻市となり、宮城県では仙台市に次ぐ人口第二の地方都市である。みなさまご存知の通り石巻市は、東日本大震災における最大被災地である。死者・行方不明者は3,957人。現在石巻市の人口は約15万人であり、その中で仮設住宅入居者15,377人、民間借り上げ住宅入居者12,555人、合計27,932人とおよそ5人に1人が不自由な生活を強いられている。

石巻の現状としては、地域により異なり一概に論ずることは出来ないが、いわゆる地方と都市の関係がある。人口は、旧石巻市や仙台などへ流出し合併前の町村のほとんどは、高齢化、少子化、産業の担い手不足、過疎化が進んできたところに今回の震災が起こった。そして、地域を支えていた医療・福祉・介護機関が被災し、地域による格差がどんどん進んでいる。

被災地の課題

課題は多種多様で全てを把握しているわけではないが、私の活動している領域での大きな課題は10月4日に河北新報に報道された介護度の増加である。この記事によると、この2年間で介護度が全国で最も増加しているのが宮城県であり、その中で2番目に増加しているのが石巻市である。震災のため、仮設住宅生活や民間の借り上げ住宅で生活される方が、生活不活発病によって介護度が増加することや、新たに介護を必要となった方がいることは想像出来ることだと思う。

さらに、被災地域において再建可能な家に住まれている方も、やはり近隣の方が被災で転居を余儀なくされたことで社会交流が減少し、生活不活発病となり介護を必要とする方もいる。そして、介護や福祉の担い手が不足しているという課題もある。石巻市の介護関連職の有効求人倍率は約2.63倍と圧倒的に求人が足りていない(平成25年12月4日時点)。

上記のように現地では、介護の需要が増えているにもかかわらず供給が追いついていない。

三陸こざかなネット代表(元OT)のお宅を関東のPTが訪問

介護需要の増加

  1. 80代後半男性、震災前は自宅の畑仕事を精力的に行っていたが、震災後仮設住宅に入居し家で座っていることが多くなった。さらに、両膝変形性膝関節症が悪化し歩行距離が減少し、介護保険サービス利用
     
  2. 70代後半女性、息子と2人暮らし。震災により自宅の全壊は免れ、自宅を再建し生活を行っているが、近隣の住民も被災しその地域で同年代の方がいなくなり、人と会う機会が減少。歩行能力も低下し転倒を繰り返すこと、物忘れが増え、介護保険を申請しサービスを利用

被災地との関わり方・必要な支援

この記事の読者に、自分には何が出来るのだろう?震災からもうすぐ3年が過ぎ今から出来ることなんてあるのだろうか?もう、復興しているのではないか?そう思っている方はいないだろうか。

私は、平成23年5月から現在まで数多くのボランティアをコーディネートしてきた。日本全国、遠くはアメリカ、イギリスから参加者がいた。そして、学生から経験年数20年を超えるようなベテランまで多くの方と交流してきた。今年度は、夏休みに1週間ずつ4名理学療法学科の学生が参加し、10月には15名ほどの方が見学、ボランティアに訪れた。多くの方が、被災地に関心があっても、どうやって行けばいいか分からない、何が出来るか分からないということを言っていた。これは、震災当時と全く同じ声であり、私自身も当初同様の思いがあった。

私は「支援」という気持ちより、「学ぶ」、「知る」ために被災地を訪れて欲しいと思っている。そして、それが最も重要な支援だと思っている。上述したような課題が深刻化していることはもちろん、東北の方々は食糧や人材など今の日本を支えてきた方々である。福島の原発にしてもそうである。第一次産業を営んでいる方の「からだ」や「こころ」は、強くたくましい。適切に表現出来ないが「生きる」とはどういうことなのか学ばせて頂くことが非常に多い。東日本大震災という未曾有の大災害を経験し、今何を想い、未来に向けてどう歩んで行こうとしているか、是非多くの方に足を運んで頂きたい。実際の被災の現状を見て、現地の方の声を聞いて感じて欲しい。そして、出来ることをして頂ければ有り難い。関心を持ち続けることだって、大事な支援である。

近年、大災害が非常に増えてきたと感じる。今後起こることが確実視されている南海トラフ地震など、いかに減災するかが重要である。そのためには、東日本大震災で何が起こり、どう対応していったか、現地に学ぶことが最短の道であると思う。自分の家族や友人と是非東北に足を運んで美味しい食を堪能しながら、現地の方に当時の様子をお聞きしながら災害について考えて頂ければ幸いである。

ノルディックウォーク研修

スタジオぷらす

橋本大吾

震災を機に平成23年7月にface to face東日本大震災リハネットワークにて宮城県石巻市でリハ支援を始め、同年12月より石巻市へ移住。今年度、現地の課題を解決するために起業し「リハビリ特化型複合施設スタジオぷらす」オープン。

関連情報