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オズール上海訪問研修参加報告
海外情報
義肢
2009-07-01
はじめに
3月26日より29日まで、5社の義肢装具業者様とご一緒して、オズールアジア上海本社を訪問し、同社での研修に参加いたしましたので報告します。
同研修は技術セミナーのみならず、中国の義肢装具供給事情についてや、病院・院内の義肢装具制作施設の見学、マーケティング担当者からブランド紹介、研究開発部門担当者(アイスランド本社直轄部門)からBionicについての最新情報等、様々な興味深い内容がありました。
オズールアジア上海本社について
オズールアジア社は2006年8月に上海に設立され、アジア、オーストラリア地域に対して製品の供給、技術教育、地域の利用者に適する製品開発を担当しています。昨年8月に、オフィスと製作研修施設を備えた現在の場所に移転し、地域内の義肢装具士や製作技術者に対して技術研修活動も行っています。
また、中国国内では北京にある唯一の義肢装具士の養成校における教官、生徒への技術教育や、四川大地震後の義肢供給など臨床サービスも行っています。
中国の義肢装具供給の現状について
端的に感じたのは、義肢装具を必要とする膨大な人数に対して、専門教育を受けた義肢装具士が600名程度(日本国内の1/5程度)しかおらず、圧倒的に需要に対して供給がおいついていない現状です。
義肢装具士の養成校は北京に1校のみ。ここ10年で、教育体制は整ってきたものの欧米や我が国の水準と比較すると技術的には未だ発展途上といえます。一方、切断者だけでも200万人以上と言われており、年間10万人以上(厚生労働省統計による我が国の切断者総人数と同様の人数です。)の方が不幸にして、新規切断を余儀なくされており、結果として良質な義肢装具の供給が追いつかないという課題を抱えています。
また、利用者の金銭的負担についてですが、欧米や我が国のような補装具の公的な補助制度が“無く”(未整備、不十分ということではなく無いということです。)、義肢装具の価格基準も無いということです。切断原因は、末梢循環障害などの内疾患によるものが8割以上といわれる我が国とは全く異なり、交通事故や労災など外傷による切断の比率が80%と高く、一方で生活習慣病による切断者も増加しており、結果として非常に多くの方が切断にいたることとなっています。本人の負担や補償ということからすると、労災による切断の場合でも、雇用主と交渉し補償額が都度決定され、その補償も義足の作り替えなどを考慮することなく、一時金で済まされるケースも多いとのことです。
上海第六人民病院について
今回同社より車で30分ほどの場所にかる上記病院を訪問することができました。この病院は168年の歴史があり、敷地面積はおよそ1万平米。病床数は1,500床。施設職員の総数は約2,800人。1日当たりの外来人数は5,000人以上とのことです。実際に、待合室は入りきれないほどの人であふれており、日本では見たことの無い情景を目の当たりにしました
上海第六人民病院 トイレ
上海第六人民病院
オズール製品について
オズールはもともと、ICEROSSという義足ソケット技術から出発した企業ですが、現在は装具についても幅広いラインアップを持つ総合メーカーに成長しています。さまざまな説明から、オズールが単に機器を製造し販売するだけでなく、装着者、病院、製作所それぞれにとって最良のソリューションの構築を目指している企業であることを確かめることができました。
採型の様子
修正の様子
人工知能を用いた最先端の義足部品 Bionicシリーズについて
本社直轄部門であるBionic義足の開発担当者から人工知能を中心に、非常に興味深い説明を受けることができました。人工知能の特性は、外部から入力され続ける情報を学習し続け、その後の動きを予測することができるようになることです。
Bionic製品とは人工知能を義足に応用することで、製品自体が装着者の歩きの学習を続け、装着者の歩容の左右対称性を高めることや、結果としてエネルギー消費を最小限に抑えることもできます。使えば使うほど、装着者にとって最適に動作する義足へと変化していきます。
研究開発部門担当者からは、「Bionicは決して特別な製品でなく、義肢装具の自然な流れの中にあり、数ある製品の中で選択肢の一つとして捉えて欲しい。」との説明がありました。義肢装具が装着者のモビリティーを補完するものであるということから考えると、そのような説明も良く理解することができます。開発担当者からの説明を受けることで、今までとは違う観点からBionic製品の魅力を感じることができました。
技術セミナーについて
大腿用ICEROSSシールインX5ライナーを用いた坐骨収納型大腿義足ソケット製作実習を行いました。
ICEROSS大腿用シールインX5ライナーについての座学の後、参加者が2グループに分かれ実技を行いました。少人数であることや、上海という場所で集中して行うことができましので、大切なポイントをきちんと確認しながら実技が進みました。セミナーの途中にも、参加者同士がお互いの考え方や普段の製作方法などについて活発に意見交換をする姿が見られました。特別な環境の中で技術者同士のコミュニケーションも図ることができ、すべての参加者にとって、非常に実りのある技術セミナーであったと確信しています。
やはり、上海という非日常の空間で開催されていることが、自然といい雰囲気を作っているように感じました。
以上のように、今回オズール社上海研修に参加し、多くの良い経験をすることができました。研修の内容については当然ですが、みんなで一緒に多くの時間を過ごし、良い経験ができたことが今後の財産になりました。
弊社では今後もオズールアジア社と連携し、このような研修を企画してまいります。
上海は日本からそれほど遠くなく、活気にあふれ街自体も魅力的です。これからもこのような機会を多くの方々に体験していただきたいと思います。
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