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震災特集 12

震災特集

震災特集 12

東日本大震災復興特別区域法における訪問リハビリテーション事業所の活動

(財)訪問リハビリテーション振興財団 事務局長 松井 一人

2014-05-15

2011年3月東日本大震災直後、postgresグループ(川村義肢?・パシフィックサプライ?)は、社長川村の方針の下、被災地域の復興支援を、全力をあげて取り組む声明をWebサイトとパシフィックニュース144号(2011年4月)に表明いたしました。
パシフィックニュースの震災特集はこの直後からの記録となります。報道の影で埋もれさせてはならない現実とリハビリ業界に生きる方々、そして私たちが震災後どのように行動したのかを後世に遺したいと多くの方に寄稿を依頼いたしました。悲しい記録ではなく未来への記録となるように。


今回は被災県の県士会を招集し、被災地の復興を第一義として、訪問リハビリテーション事業所の設置を推進している(財)訪問リハビリテーション振興財団松井事務局長へ記録のバトンを託しました。

はじめに

2011年3月11日、三陸沖で発生した東北地方太平洋沖地震により最大震度7の強い揺れと国内観測史上最大の津波を伴い、東北・関東地方を中心とする広い範囲に甚大な被害をもたらした。これを受け2011年12月に復興特別区域法が成立し、その中に「訪問リハビリテーション事業所整備推進事業」が、位置づけられた。

被災地では特に災害弱者と言われている障害者や高齢者が、仮設住宅での住まいや、これまでとは違った地域環境の中での生活を強いられる事となったと同時に、限られた医療機関等の資源も災害により失われた。
同時に、福島においては、津波被害に加え、原子力発電所の放射能漏れの影響もあり、子供たちや働き手が他の地域に避難され、その地域における高齢化率が一気に高まり、医療機関の稼働可能ベッド数が低くなるという、まさに、これからの日本の高齢化社会の進展の縮図のような状況となった。このような状況下、被災県の県士会を招集し、それに対する対応を検討し、結果、被災地の復興を第一義として、訪問リハビリテーション事業所の設置を積極的に推進していく事となった。

 

復興特別区域法における訪問リハビリテーション事業所の位置づけについて

平成23 年6月に成立した東日本大震災復興基本法において定められた基本理念に基づき、東日本大震災からの復興のための諸事業を被災地域の地方公共団体の申出により、区域を限って、東日本大震災復興特別区域法が平成23 年12月に成立した。その多くの項目の中の1つに、被災地における医療・介護確保のための特例(医療法施行期規則等の特例)として、「訪問リハビリテーション事業所整備推進事業」が位置づけられた。

今回の規制緩和の内容は、当該地域において訪問リハビリテーションが、病院診療所、老人保健施設と密接な連携体制をとる事を前提とし、医療機関や介護老人保健施設でも訪問リハビリを行う事業所を設置できるように設置主体の要件を緩和されたのである。

 

訪問リハビリテーション振興財団とその事業所について

1.一般財団法人設立の経緯
訪問リハビリテーション事業所を経営・運営するノウハウや経験等が十分に備わっていない我々理学療法士等が、限られた一定の期間の中で事業所を立ち上げ、運営する事のハードルは非常に高く、不安も多い中での準備となった。様々な検討をした結果、日本理学療法士協会を上げて、被災地の復興を第一義とし、公共性の高い事業を実施する事が出来る法人として、平成24年8月に一般財団法人訪問リハビリテーション振興財団(以下財団とする)を、訪問リハビリテーション事業所の運営母体組織として、日本作業療法士協会・日本言語聴覚士協会と共に設立した。

2.訪問リハビリテーション事業所について
○事業所設置の地域の選定経緯
復興支援のボランティア活動を推進してきた経緯の中から、早急に支援が必要と考えられた地域を優先に事業を行う事とし、その要望が強く表出されていた南相馬市に1つ目の事業所「浜通り訪問リハビリステーション」を平成24年11月に設立する事とした。現在、当該事業所では6名(理学療法士4名、作業療法士1名、言語聴覚士1名)のスタッフで運営している。さらに、被災地のなかで唯一、会員が業務中に津波の犠牲になった地域であり、県士会からの要請もあった岩手県宮古市にて「宮古山田訪問リハビリステーションゆずる」を平成25年4月に開設する事とした。当該事業所では、現在6名(理学療法士3名、作業療法士3名)のスタッフで運営している。

 

訪問リハビリテーション事業所の実際

1.訪問リハビリテーション事業所の運営実態
平成25年度における事業実績推移は、浜通り、宮古の事業所共に、利用者は順調に推移している。平成26年4月現在、浜通り98事例、宮古72事例に対し、訪問リハビリテーションを提供している。ケースの担当ケアマネジャーは多岐の事業所にわたり、2事業所とも20か所の居宅介護支援事業所、37名を超える介護支援専門員よりケースの紹介を得ている。医療機関においても同様であり、浜通りでは17医療機関39名の医師、宮古では11医療機関、26名の医師より指示を受け、訪問リハビリテーションを提供している。つまり、被災地復興特区における、訪問リハビリテーション事業所は、1医療機関・居宅介護支援事業所当たり、少人数ずつケースの依頼を受け、地域の幅広い機関より支持されている事がわかり、地域の医師や介護支援専門員から、地域における共有のインフラとして位置づけられている事が伺える。

 

浜通り訪問リハビリステーション1

浜通り訪問リハビリステーション2

まとめ 

復興特別区域法における訪問リハビリステーションは、様々な不安要因の中でスタートしたが、被災地という特別な環境下においても、その役割を適正に果たし、結果事業としても地域に根ざし一定以上の成果を上げることが可能となっている。

現在、被災地において訪問リハビリテーションのサービスを中心に提供しているが、仮設住宅等において、閉じこもりの高齢者も多く、活動量が制限されている事などにより、いたずらに生活機能が低下しているケースも多く見受けられる。その様な中、今後、通所機能を兼ね備えた自立支援型の施設や介護予防の視点からの介入も、ニーズとしては高く、様々な手法を検討し復興の支援の一助となれる取り組みも今後の展開として、視野に入れていきたい。

 

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