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モーリフトスマート150の導入と定着

リフト・移乗用具

モーリフトスマート150の導入と定着

パシフィックニュースは2011年より3年間、介護職員・セラピストによる【リフト導入事例紹介】の掲載を続けております。過去の事例紹介もご覧ください。

社会福祉法人名張育成会 名張育成園成峯 橋本健治

2014-07-15

今年5月パシフィックサプライ?にて初の腰痛予防カンファレンス「SPH-Jカンファ2014」が開催されました。エタック社(スェーデン・移乗用具リフトメーカー)から移乗機器部門ウーラ・リンダール・ティ教育部長の基調講演、また森之宮医療大学理学療法科教授上田喜敏氏の講演も行われ、適切な機器の活用と介護腰痛予防の取組みの必要性を訴えました。また介護施設・病院勤務職員による腰痛予防実践事例も10事例紹介され熱心な意見交換の場となりました。

今回は、その10事例を発表いただいた中から、社会福祉法人名張育成会 名張育成園成峯・橋本健治氏の演題発表を掲載させていただきます。

1. はじめに

知的障害のある方たちの生活や日中活動の支援を主に行ってきた我々にはいわゆる高齢者介護の経験がほとんどなかった。しかし近年、入所者の高齢化が進み、身体介護が必要な利用者が増えてきた。

現在車椅子を常時使用している利用者は8名、歩行器を使用している利用者は3名いる。普段は歩行器を利用している3名の方も状況如何では車椅子を使用することがある。従って60名の利用者のうち11名の方が車椅子を利用している。そしてこの数は今後さらに増えることが予想される。

生活支援の経験しかない職員や入職間もない職員にとって、身体介護を含む高齢者介護は未知の分野だった。以前に高齢者施設で働いていたことがある少数の職員の指導を受けながら、手探りで行っているという状況があった。

身体介護に不慣れな職員が行う介護は利用者・職員双方にとって高いリスクを生む。身体介護の経験がない職員が、無理な体勢から力任せに利用者を持ち上げようとして、腰を痛めることが多くなった。腰痛に関するアンケートを行ってみると、腰痛に限らず何らかの痛みを訴える職員が増えていた。

平成25年度は腰痛のために休む職員も現れ始め、何らかの対策を打たなければならないことはわかっていたが、かといって職員の技術が急に向上するとも思われず、困っていたところにモーリフトスマート150(以下、モーリフト)の存在を知った。

 

 2015年4月1日利用者年齢構成

2. 導入に向けて

2.1 現場の意見
介護リフト導入について話をしたとき、賛成する意見はなかった。反対意見は以下の3点に要約される。

1.大きすぎる。利用者の居室で使えるのか。
2.時間がかかるのではないか。
3.扱い方が難しく使いこなせるまでに時間がかかるのではないか。

実際に稼働しているモーリフトを見たことはない。が、介護リフトは使えないものというイメージが先行していた。汎用性の高いリフトよりも使用方法が限定されたリフトの方がまだつかわれる可能性があるという意見もあった。また介護リフトの導入に反対する意見は経験年数の多い職員に多かった。従って、その意見は正論のように思われた。

2.2 見学
モーリフトを導入することは決まっていた。問題は職員が日常業務の中で使用するかという点にあった。現場で実際に活用されているモーリフトを職員に見てもらいたいと考えていたとき、幸いなことにモーリフトをすでに導入して使っておられた『社会福祉法人 紀成福祉会特別養護老人ホーム鮎川園』を訪問させていただく機会を得た。

結論から言えば、紀成福祉会の訪問は大成功だった。実際に動いているモーリフトを見て、触れて、使用させてもらって、データに基づく説明を受けたことで職員の気持ちが変わった。質疑応答の場では、職員の質問も最初のころはモーリフトの使用について懐疑的な質問が多かった。しかし、途中からどうすれば使用できるのかという前向きな質問に変わっていった。

 

3. 導入から定着

それでも、モーリフトを実際に現場に入れてみるまでは、不安があった。気になったのはやはり大きさだった。奥行に比べて幅の狭い、細長い構造の居室でモーリフトが使えるのか。入ることはできても回転させることが出来るのか、という点が不安だった。しかし実際に居室に入れてみると、取り回しについては大きな問題がないことが分かった。

他にもリフトを使用するには、大工仕事的な工夫も必要だった。幸い施設には設計士の資格を持った職員がいてあっという前にベッドの底上げを行ってくれた。

使用する条件が整い、次は実際の運用方法だった。運用方法については紀成福祉会を訪問し、使えそうだというめどが立った直後から考え始めていた。使用する利用者を決めて、まずその利用者から使い始めるという方法を考えていた。
運用方法については鮎川園を訪問した職員も帰りの車中で様々なアイデアを出してくれた。

モーリフトを全員に対して使用するということはありえない。必要な人からまず使用するべきだということは、紀成福祉会での見学の際にもアドバイスを受けていたことだった。

想像していたよりも取り回しは楽だったといっても、やはりそこそこの大きさがあるモーリフトを居室から居室へ移動させることには、なにがしかの不便が伴う。まずリフトの移動を考えなくても良い状況から始めることにした。体重がかなり重く、ベッドから車椅子への移乗などで苦労している利用者からモーリフトの使用を始めた。普段から支援に苦労していることもあり、モーリフトの使用回数は自然と増えていった。

いざ使い始めると人力での介助にくらべて身体にかかる負担がはるかに少ないということに皆すぐに気づいた。モーリフトを使用することによって生じる時間的なロスも使い慣れてしまえば許容できる範囲のものだったし、何よりも楽であるということのメリットが、多少の時間的なロスを補って余りあるものがあると、皆すぐに気がついた。

導入してから二か月ほど過ぎると、職員からモーリフトのさらなる増設を希望する声が上がるようになっていた。

モーリフトスマート150使用風景

4. 最後に

モーリフトの導入と定着は想像していたよりもはるかにスムーズに進んだ。思い当たる理由は

1. 現場で最もキャリアがあり指導的な立場にあった職員が積極的に動いてくれたことがやはり最大の理由だったと思われる。この職員は自分の経験に固執しない柔軟性を持っていた。使用方法について様々なアイデアを出し、すぐにそれを実行してくれた。
2. 経験の浅い職員が多かった。施設の職員は入職2年未満の者が最も多く、直接利用者支援を行っている職員の37%にあたる。介護経験がほとんどない職員たちで、自分のスキルに自信がない。経験とスキルの不足を補ってくれて、 体に負担がかからず、しかも安全な介護ができるとわかれば、たとえ時間が多少かかっても積極的に使ってみようという姿勢あった。
3. 身体介護が増え、腰痛に限らず肩、首等に不調を抱える職員が多くなっていた。

以上の3点が挙げられるかと思う。いずれ職員から聞き取り調査などを行い、使用前と使用後の変化について調査したいと考えている。職員からは腰痛、肩こりがなくなったという声が多い。妊娠中の職員でも体に負担をかけることなく利用者支援ができるため、現場的には非常に助かっている。

現在、施設では3台のモーリフトが稼働している。職員はさらに増やしてほしいという希望を持っている。現在3台のモーリフトは利用者居室と特浴室に置かれている。

 

職員勤続年数構成比

腰痛予防カンファレンス「SPH-Jカンファ2014」

日時:2014年5月24日(土)
場所:パシフィックサプライ株式会社 大東本社 大ホール

エタック社・ウーラ・リンダール・ティ教育部長

基調講演【移乗用具を導入する成功の秘訣】

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