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パシフィックニュース

リハビリテーションプログラムの中の補装具使用実践

装具

リハビリテーション

2010-01-01

今日では、脳卒中に対して発症早期からリハビリテーションを行うことが重要であると認識されている。急性期では合併症の予防に努めながら、座位立位練習をすすめていく。下肢の随意性がほとんどないか、大腿四頭筋の収縮が少し見られるくらいの状態でも、「介助で立位がとれる」と判断したら、長下肢装具を使用する。膝継ぎ手はリングロックを、足継ぎ手はダブルクレンザックを使用することが多く、足部については、将来屋外を歩くことが予想されるときは短靴を、屋内歩行にとどまりそうなときは足部おおいを選択する。患側の膝あても必要である。健側の足底は1.5から2cmの補高をすると患側が振り出しやすい。練習をすすめていく中で、大腿四頭筋や大殿筋の筋力が増強してくると、立位も安定する。そのときは長下肢装具の支柱のネジを外して短下肢装具に変更し使用していく。

回復期病棟(病院)に入院している時期は、最も患者さんの能力が向上するときである。シューホーンブレイスと呼ばれているプラスチック短下肢装具を使用することが多く、移乗や立位や歩行での下肢の支持性を高めることを目的としている。装具の高さは腓骨頭より1.5~2横指下、足部はclaw toe(槌趾)が強く出るときは足先(足尖)まで、そうでないときはMP関節までとする。足継ぎ手付きのものは立ち上がりや斜面を登るときに足関節背屈が可能なため、より生理的な運動に近い。歩く機会の多い活動性の高い方に適応があるが、足関節から踵部にかけての構造上、靴のサイズが大きくなることが欠点である。

内反が強い場合は、プラスチック短下肢装具では足部が充分接地できないため、金属支柱付きの短下肢装具を処方する。内反矯正の補助となるアンクルストラップを加えることもある。足継ぎ手をダブルクレンザックにしておくと、足関節の角度調整が可能となる。

長下肢装具

シューホーンブレイス

金属支柱付き短下肢装具

既製品でよく使用されるのはオルトップLHである。高さが17cmほどで、標準的なプラスチック短下肢装具より高さが低い(長さが短い)。大腿四頭筋の筋力が十分で内反が少ない中枢神経疾患の軽度麻痺や下垂足の方に使用する。

話は戻るが、急性期でも短下肢装具を、回復期や慢性期でも長下肢装具を使用することはある。適応は患者さんの状態で判断するのが原則である。

反張膝を呈しているときの短下肢装具処方はどのようにすればよいであろうか。患者さんは、大腿四頭筋や大殿筋が弱い状態のときは膝を過伸展することで、膝折れを防いでしまうものである。装具をつけることで支持性は高まり膝折れはなくなるが、反張を修正するため足関節角度を背屈5度前後にして作製する。もし足関節が硬くなってしまって背屈0度とならないときは、足部を底屈位のままでヒールをつけることで修正する。

誤って標準より高さの低い短下肢装具を使用すると、装具の支持性が弱すぎるため膝の過伸展をせざるを得ない。この状態が持続すると膝の後面の靭帯は伸び、腰を曲げなければ歩けなくなる。

初めに長い装具を使用して短いものに変更していくのは可能であるが、初めに短いものを使用してから「装具の支持性が弱かったので長いものへ変更」は装着したときの違和感がありすぎてつけられない。初期加療が大切である。

最後に、全ての方が歩行を獲得できるわけではないが、入院期間に縛られて目標を低く設定する(=歩かなくてよいと決める)ことは避けなければいけない。患者さんを大切に思い、能力を最大限に高めることが治療に関わるスタッフのできることだと思う。

オルトップLH

反張膝

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