パシフィックニュース
PHP社 車いす・シーティング事例紹介
車椅子/姿勢保持
2010-01-01
パフォーマンスヘルスプロダクツ社について
パフォーマンスヘルスプロダクツ社(PHP社)はイギリスの車いすバックサポートシステム専門メーカーで以下3点を企業理念としております。
- 最も進んだ効果的なシーティングシステムを供給することで、車いす使用者のQOLを向上します。
- シーティングシステムの向上と洗練させること、新製品を開発することを継続し続けます。
- 顧客の要望の幅広い多様性を理解し参考にします。製品力の向上や、製品とカスタマーサポートでの知識を組み入れ、連携を継続します。
車いすとシーティング機器が少女に与えたもの
【PHP社 事例報告】
シャルロットのケースは、機器選択がエンドユーザーにとっていかに重要かということを示してくれるケースです。シャルロットが初めて車いすに乗ったのは、4歳の時でした。シャルロットが住むイギリスでも、4歳から車いすに乗るというのは珍しいケースといえるかもしれません。なぜなら、多くの両親はこどもが車いすを使うことを受け入れることが出来ず、なかなか車いすを使わせようとしない傾向があるからです。
シャルロットは骨形成不全症です。毎朝のあわただしい通学の流れになかなかついていけないシャルロットのことを見ていた母親は、「車いすは必要ない」「車いすを使うことはシャルロットを不幸にする」といった考えを思い改めました。
しかし、シャルロットは多少歩行が可能であったため、NHS(注 英国国民保険サービスの略)の評価基準を満たさなかったため、車いすの給付を受けることが不可能との判断を受けてしまいました。そのため、両親は自費で車いすを購入することにしたのですが、車いすに関する知識は何もない状態で車いすを探さなければなりませんでした。一番最初に手に入れた車いすは、結論から言うと、まったくシャルロットの体格やニーズに適合していない車いすでした。車いす自体の重量がかなりある上に、シーティングも行なわれていなかったため、介助者が車いすを押すことは可能なのですが、シャルロット自身で漕ぐことは不可能でした。強いて1つだけ良い点を挙げるとすれば、シャルロットの妹のローレンが疲れてしまった時に乗ることが出来るバギーボードが付属していたことだけです。しかし、この工夫もシャルロットにとっては、ますます車いすを漕ぐことが出来なくなる理由となっていました。
シャルロットが手術を受け、リハビリテーションに通っていたシェフィールド病院の作業療法士がシャルロットの現状を問題視し、我々PHP社に相談してきました。
作業療法士からの相談内容は「本来持っているはずのシャルロットの自立を促し、今使用している車いすよりも操作しやすい車いすを使わせてあげたい」という内容でした。
私たち(PHP社)がシャルロットに初めて会った時に、彼女が使っていた車いすは、単純に大人用の車いすの寸法を小さくしただけの車いすでした。構造や使用されている材料のパイプも大人用と同じものであったため、非常に重量のある車いすでした。
このような車いすで自走しようとすると、操作に大きな力を必要とするため、ユーザーの体力や腕力を奪ってしまうだけでなく、二次障害を引き起こす原因にもなってしまいます。そのため移動性・可動性に深刻な影響を与え、使用者の自立の妨げになってしまうのです。
シェフィールド病院の作業療法士と私たちは、シャルロットの真のニーズについて話し合いを行ないました。シャルロットは車いすを自分で操作する能力を持っています。また障害の特性上、成長の予測をする事が困難です。結論としては「体に長期間適合し、操作しやすい車いすを提供して、自立を最大限助ける」ということを目標としました。
次にベースとなる車種を選択しました。シャルロット用の車いすに求められる条件として、駆動効率を高めるために軽量な固定式フレームの車体であること、操縦性と後方転倒への安全性を高めるために主車軸の位置が調整式であるもの、この2点を満たす車体を探しました。シャルロット自身は車いすに対して「不安定で危険なもの」という認識を持っているようでした。
私たち(PHP社)とセラピストの間で話し合いをした後に、シャルロットの両親を訪問しニーズの確認と方針の説明を行ないました。私たちが説明に訪問した時、シャルロットの両親は、NHSからの車いす給付の拒否、販社から個人的に車いすを購入する過程と車種選択の難しさに嫌気がさし、もう一度車いすを選ぼうという気力を失った状況でした。シャルロットと両親の抱えている問題を解決し、長期間使用が可能な車いすを選択する必要がありました。
すべてのニーズを満たし、問題点を解決できる車いすとして、パンテーラ社のバンビーノを選択することになりました。この車いすは重量・剛性の要件を満たしており、さらに、高さを調整できる介助バー、サイドガード、スポークカバー等の付属品が充実している車いすです。
シーティングも重要な点でした、シャルロットは非常に小柄でしたが、長期間の使用が可能なように座奥行きは長めの車いすを選択しました。
そのままでは座奥行きが長すぎるため、バックサポートには「Vトラックバックサポートシステム」を使用しました。シャルロットのケースでは分割バックサポートを1つだけ使用しています。独特な形状を持つVトラックバックサポートの構造により、体幹が全面的にバックサポートに接触し、適切な仙骨骨盤サポートとラテラルサポートが可能となります。
また、Vトラックバックサポートシステムは前後方向に大きくバックサポートの位置を動かすことが出来るため、座奥行きが長めの車いすを選択しても適切なサポートが可能です。パンテーラ社のバンビーノは主車軸位置を大きく前後に調整できるため、タイヤの位置も適切な位置に調整が可能です。大きな調整幅を持った2つの機器を組み合わせることで、長期間にわたり1つの車いすを使用することが可能となりました。
シーティングを行い、車軸位置の調整を行うことで、シャルロットの車いすに対する「フラフラする」という恐怖心はなくなりました。念のために転倒防止バーは常時使用しています。
最後にシートベルトを取り付けて完成となりました。
シャルロットのケースでは2つの点をポイントとしてあげることが出来ます。
- 適切な道具を使用することで人生は大きく好転する
- 単純に車いすを提供するだけでは駄目で、適切なシーティング機器を確かな技術で適合させることが重要である。
ユーザーの生活全体を観察し、現実的・実用的な目標を達成することが、ユーザーにとっての成功と言うことが出来ます。
最後に、今回のケースを紹介することを承諾してくださったシャルロットと彼女の家族に感謝いたします。これを読んだ多くの方が何かを得てくださることを期待します。シャルロットは私たちの「光」です。彼女は様々な問題を抱えていますが、勇気と明るさを持ち合わせています。
私たちは、シャルロットの将来の幸せのお役に立てることを望んでいます
Vトラックは標準型車いすなどの布製バックサポートでは得られない、車いすユーザー様へのサポート力、姿勢保持力を発揮する製品です。長時間車いす上で過ごす際の姿勢の崩れや、円背、側彎などの姿勢に対して、金属支柱とポリカーボネート製のバックサポートを骨格とした本システムを装着することで、長時間でも安心して楽に座り続けられたり、安定した状態を作り出すことができます。
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