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自閉症の子ども達: AAC導入について その2

AAC(コミュニケーション)

海外情報

自閉症の子ども達: AAC導入について その2

米国で発行されている、障がいを持つ子ども達や特別な医療ケアを必要とする子ども達の家族のための月刊誌、Exceptional Parentの2008年4月号に掲載された記事

Joanne M. Cafiero, PhD Ann Meyer, Med

2010-01-01

自閉症児にとってAACはどのように見えるか

AACは受容的(理解しやすい)と表出性(コミュニケーションする)を兼ね備えた視覚言語システムです。スケジュール、することリスト等のような視覚支援は、自閉症の子ども達が彼らの世界や変化、指示を理解することを助ける視覚入力方法です。自分が話すことと言葉やシンボルを指差して組み合わせる視覚入力方法は、自閉症児がより言葉を理解し、学ぶことに繋がります。読み書きのできる自閉症の子ども達は文字でのコミュニケーションを好むかもしれません。その場合はシンプルな貼付できる付箋もAACツールになり得ます。前述のように、AACは表出性言語です。絵カード交換コミュニケーション(PECS)や、双方向のコミュニケーションボード、会話補助装置、Eメール、インスタントメッセージ等が表出性のAACとして挙げられますが、ほぼ全てのAACツールや機器が表出性であり、また受容的でもあることがAACの非常に重要な特筆すべき特徴です。

ビッグマックやスーパートーカーなどのシンプルなコミュニケーション機器を自閉症の生徒へ提供した事例研究において、生徒はコミュニケーションスキルの表現が著しく増加したことを示しました。生徒がそれぞれの作業をしている間、コミュニケーション機器を生徒の机に直接設置しました。機器にはよく使用する言葉を簡単に録音しました:

「終わったよ」
「できたの見て!」
「手伝って」
「休憩したい」

コミュニケーションスキルの表現の向上に加えて、生徒に以前あった不適切な問題行動も減少しました。

双方向コミュニケーション

コミュニケーションは2人以上の間で行われるやり取りです。コミュニケーションの相手はAACの介入において不可欠です。最初のストーリーのアリシアと息子のニコラスにAACシステムを入れてみましょう。

まず、我々はニコラスがよくコミュニケーションする場所はどこか見極めます。母親のアリシアは、ニコラスの要求を満たせず、アリシア自身の不満がたまる場所をいくつか特定します。ニコラスはよく外の庭で遊びたがります。庭へ繋がる裏のドアのところでめそめそと泣いていて誰かがそれに気づいてドアを開けるのがよくあるパターンです。そこで、1つの言葉が録音できるビッグマックやトーキングシンボルに「外に行きたいよ」と録音しておき、裏のドアの近くにあるカウンター上に置いておきます。ニコラスが外に行きたくて泣き始めた時に、アリシアは「ニッキー、外に行きたいの?」と、機器を指差し、実際に「外に行きたいよ。」と押して聞かせました。2週間もしないうちにニコラスは機器を使って外に行くお願いをできるようになってきています。

キッチンもコミュニケーションを教え、またニコラスとアリシア両方の不満を多く減らせる場所です。コミュニケーションボード(図1)にアリシアがニコラスに話すのに必要な言葉とニコラスが答えるのに必要な言葉を準備しました。準備した語彙にはニコラスが好きな食べ物や彼が答える言葉、「手伝って」のようなお願いをする言葉を含んでいます。またアリシアがニコラスに言うべき言葉も入っています。

このコミュニケーションボードはボードメーカーというシンボル作成ソフトにて作成しました。またアリシアはコミュニケーションボードをカード用紙にプリントアウトし、ラミネートし、アリシアとニコラスがすぐに使えるように冷蔵庫へ貼りました。ニコラスがAACシステムを使用し始めると彼の行動は向上し、アリシアは彼女の家全体をAACで設計し、ニコラスがいつでも自発的に機能的なシンボルコミュニケーションを使えるようにしました。

AACツールや機器は洗面所にも置き、身なりを整える時に手伝いを呼べるようにし、就寝の時間には本を読んでもらう際にコミュニケーションが取れるようにし、車の中ではニコラスが感じる変化を理解しやすいようにしました。ニコラスはコミュニケーションのためにAACツールや機器をどんどん使うようになってきています。アリシアはAACがニコラスのコミュニケーションと学びの可能性の窓を開けたと感じました。

トーキングシンボルと男の子

図1:コミュニケーションボード

最後に

AAC導入の成功の鍵を持つのは、コミュニケーションパートナーの深い関与と力量です。AACを使ったコミュニケーションの発達を支えるのは以下の原則が非常に重要です。

  • 子どもの知力が高く、理解力があり、コミュニケーションが可能だと考えます。
  •  話す言葉と、コミュニケーションボード、コミュニケーション機器の絵やシンボルをいつも合わせます。
  • AACを使って自然に子どもに話しかけ、子どもに考える時間を与えて、答えを待ちましょう。AACを一度に連続して使うのは最小限にしましょう。
  • AAC機器を子どもへのクイズやドリルに使用するのは止めて下さい。
  • 子どもへコミュニケーションするプレッシャーを与えないで下さい。子どもを励まし、忍耐強く見守ります。
  • 子どもが知らないかもしれない言葉もAAC機器に入れるようにします。AACはコミュニケーションを発達させる助けになります。
  • AACツールや機器を子どもの声や耳として考えて下さい。どの場所においても子どもがAACツールやAAC機器を使えるようにして下さい。
  • あきらめないで下さい。新しい言葉を教えています。時間がかかります。

【著者の紹介】

Joanne M. Cafiero, PhD
自閉症・AACコンサルタント。Meaningful Exchanges for People with Autism: An Introduction to AAC(自閉症の人々との有意義な交流: AAC概論)の著者。このテーマにおける最初で唯一の書籍である。
自閉症児への教育的介入に関する全米科学アカデミー委員会の前メンバー。ジョーンズ・ホプキンス技術センターの自閉症プロジェクトの前ディレクター。ジョーンズ・ホプキンス大学大学院課程の中の「自閉症を持つ生徒への教育」を策定した。現在は米国内及び海外において自閉症児に関わる人々や家族への指導に携わっている。

Ann Meyer, MEd
自閉症スペシャリスト/特別支援教育アドミニストレーター。現在、AbleNet社の研究開発部部長。AbleNet社は創業20年以上のAAC・アシスティブテクノロジー機器の製造販売企業であり、自閉症の子ども達が家庭、学校、社会の中で取り入れやすい、革新的なAACソリューションを提供している。

本文献の翻訳掲載についてはEP Magazineより許諾を得ております。
Exceptional Parentは米国で発行されている、障がいを持つ子ども達や特別な医療ケアが必要な子ども達の家族のための月刊誌です。
購読料:$39.95(年間12冊/送料など含まず)
連絡先: 電話(877) 372-7368/住所: 416 Main Street, Johnstown, PA 15901 USA