パシフィックニュース
千里リハビリテーション病院
病院・施設紹介
2010-04-01
コンセプトは“リハビリテーション・リゾート”
大阪府箕面市の閑静な住宅街に「医療法人社団和風会 千里リハビリテーション病院(橋本康子理事長)」はあります。エントランスから院内に入るとさわやかなBGMが流れ、アロマの香りにセンスのいいインテリア。病院でありながら、まったく病院であることを感じさせないハイセンスなデザインと居心地。まさに「リゾート・ホテル」のような雰囲気を醸し出しています。
同病院は時代をリードするクリエーター・佐藤可士和氏を総合プロデューサーに、建築からインテリア、ユニホーム、図書にいたるまで専門のクリエーターが患者さまの一日も早い社会復帰をという患者目線にたって「患者さんにストレスなく快適に過ごしてもらう病院」を考えた結果、ホテルのようなものになったといいます。ロビー、病室、庭園、階段。院内のさまざまなスペースにリハビリにつながる工夫が施されています。2007年10月に開設された回復期リハの千里リハビリテーション病院を訪ねました。
外観写真
館内写真
館内和室
病院の理念「気づきの医療」
既成概念や常識にとらわれず、今までとは違う視点(リハビリテーション医療に関わる医療提供者としての視点、患者さんの視点など)から見たり考えたりすることで初めて生まれる「気づき」。そこに存在していた病院の環境などさまざまな矛盾に「気づく」。そしてその「気づき」を迷わず確実に実践する。「リハビリテーションの現実を変えていく『気づきの医療』」を病院の理念としている。
写真
病院概要
医療法人社団和風会 千里リハビリテーション病院
〒562-0032 大阪府箕面市小野原西4丁目6番1号
電話 072-726-3300
FAX 072-726-3600
HP http://senri-rehab.jp
保険医療機関として2007年10月開設
鉄筋4階建て
病床数172床(一般病床14床)
言葉でなく心地よさで入院患者のやる気を起こさせる
橋本理事長は、香川県三豊市内で橋本病院を経営。地方医療に携わりながら高齢化時代を迎え、救急も大事だが、その治療後のリハビリの必要性を痛感したといいます。「お年寄りはしんどいが口癖。入院生活で気力も低く、リハビリにならないことも多かったのです。患者さまをどのようにすればリハビリに積極的に取り組ませることができるかが問題でした」と振り返ります。
脳卒中などの病気や大きな骨折などにより脳や脊髄を傷め、急性期を脱した患者さんに早い段階から集中的にリハを行うことによりその後の回復に大きな効果がでることは分かっています。回復期の患者さまが寝たきりにならないように早期リハを目指し、約3年前、この大阪・箕面に新たに病院を開設する時に、これまでの経験から「病気になり絶望している患者さんが頑張れる環境をつくろう」と考えました。
「今までの病院は、食事もベッドの上でしたり、カーテン1枚でプライバシーも守られない状態。
これでは心は和まない。患者さんを前向きに、やる気にさせる快適な環境をつくることがリハビリへのモチベーションアップにもつながる」と、これまでの暮らしに近い環境にし、自分だけの空間があり、ゆったりでき、ロビーでは静かな音楽が流れるといったホテルのような病院が誕生しました。「先駆的と思われますが、これが回復期リハ病院の原点です」。
「一般病床14床を備えたのは早期においては容態が安定していないこともあります。緊急時に対応できるようにすることと、急性期病院から少しでも早く、この回復期の病院へ転院させていただき、廃用症候群などにならないようにしなければなりませんから」と内科医としての目が光ります。
橋本康子 理事長
本当の意味での社会復帰をサポート
一般的にリハビリテーション病院は体育館のような広い空間にベッドがたくさん置かれ、トレーニングの3分の2近くがベッドの上で行われているといわれています。吉尾雅春副院長は、「起き上がりに必要な筋肉は腹筋ではなく腸腰(ちょうよう)筋と呼ばれる股関節の屈曲の働きをする筋肉が重要となります。股関節の屈曲が大事なのに、ベッドの上で起き上がりの練習をしても効果は少ないですよね。ベッドの上でのトレーニングは寝たきりになりがちですから、当院ではベッドから離すことを心がけています」と力説されます。
リハビリは日常生活能力(ADL)を回復させること。しかし病院にいると玄関で靴を脱いで廊下に上がるといった基本的な動作は忘れがち。そこで病棟には家と同じように玄関をつくり靴の着脱も、病室に畳を敷きクローゼットも設置、着替えも大切なリハビリ。キッチンもあります。レストランへは外気を浴びて歩いていく、豊富なメニューの中から自分で選び、家族や友人と一緒に食事することも。
また門限はありますが外出は自由で、患者さんが近隣のコーヒーショップまで歩いて出かけることも多いようです。社会生活と同じような環境で人間の尊厳を大切にし、また基本的動作にも注意した造りとなっています。
回復期リハビリテーション病院はバリアフリーの必要がありますが、あえて一部バリアフリーでない構造にしているのは、退院後の社会はバリアフリーでないところが多いからです。
「エントランスに設置された椅子が可動式であっても、こちらが患者さんに注意してあげれば済むことですからね」。できるだけ社会復帰してからも患者さんが困らない環境をつくることで、本当の意味でのリハビリを目指しています。
解剖学的視点からの機能回復
リハビリテーションに関しても解剖学的視点から人間の身体の構造を理解した回復トレーニングが行われています。「人間は生活を営む社会的動物」(吉尾雅春副院長)という考えの下、廊下など人目につく環境下で回復トレーニングを実施するよう心がけています。
また、義肢装具なども積極的に病院内での生活の手助けとして使われることが多い。直立歩行が人として本来の姿であり、早期からその感覚を取り戻してもらうため、油圧式長下肢装具(ゲイトソリューション・GS)を使って足首の動きを意識した歩行トレーニングを行ったり、短下肢装具へ移行するのも解剖学的視点にたったトレーニングとして行われるのが、同病院の特徴です。
トレーニングは1日3時間以上、365日実施する体制を整えており、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士合わせて100人近くのスタッフを抱えています。スタッフの数が十分でなければ、サービスの質の向上にもつながらないからです。
吉尾雅春副院長
通称「寺子屋」と呼ばれる勉強会
同病院では各病棟で若手セラピストと吉尾副院長による勉強会が行われています。若手セラピストが「寺子屋」と呼ぶ勉強会は、セラピストからの要請で、患者さんのリハビリの進行方法などについて意見交換を行う場となっています。実際に患者さんの身体状況や進行状況を見ながら、吉尾副院長がより効果的なリハビリ方法を指導することで、若手セラピストの成長を促しています。
最後に吉尾副院長は「人はその気にならないと学習しません。その気にさせるにはリハビリを心地よく感じてもらう必要があります。そういった意味で介護は『快』護でなければなりませんし、若いセラピストにも伝えていきたいですね」と話してくれました。
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