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大東市での『地域包括ケアシステム』構築の動き
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大東市での『地域包括ケアシステム』構築の動き
川村義肢?暮らしいきいき館 主任介護支援専門員 宮部綾乃
2015-05-15
厚生労働省ホームページに大東市の介護予防の取組みが紹介されています。大東市は地域リハビリ発祥の地とも言われていますが、それはどのようにして始められたのでしょう。前回掲載記事『地域包括ケアシステム』の第2回目をお届けします。
大東市の独創的な官民連携による『地域包括ケアシステム』。魅力的な取り組みが始まっています。
大東市の歩み
居宅介護支援事業所「暮らしいきいき館」は、大阪の大東市にあります。
大東市は大阪の東部、北河内と呼ばれる地域で、大阪市の衛星都市です。
大東市は人口12万強で、大阪府の中でもけっして大きな市ではありませんが、こと「地域包括ケアシステム」の構築については、この大阪府下のどこよりも意識が高い町ではないかと感じています。
今、地域包括ケアシステムの構築に向けて、大東市がどのように歩みを進めているのか、今回はそのあたりをご紹介していきたいと思います
地域リハビリ発祥の地
大東市は、「地域リハビリ発祥の地」とも「ノーマライゼーション実践の町」とも呼ばれています。それは、昭和50年代の初め、障がいを持った子どもを育てる母親たちが、健常、障がいに関わらず地域で教育を受けさせたいという思いから、地域の小中学校で障がいのある子どもが教育を受けられるように、そのために必要なハードやソフトの整備を求めた活動がそもそもの始まりだったようです。
他市に類のない、市職員としてのセラピストの配置を行ったのも、その活動の発展から「養護学校だけではなく、自宅でも切れ目なくリハビリテーションの機会が与えられるように」という目的のためで、障がい者や高齢者らの住環境の整備の助言や生活動作訓練の相談・指導を行っています。つまり、大東市では「住民力」で行政を動かしてきた実績があるわけです。
また、大東市は「介護予防」にも先駆的に取り組んできました。
「大東元気でまっせ体操」というオリジナル健康体操を作りDVDで地域の高齢者を中心に紹介していきました。その体操をするために公民館に定期的に人が集い、サークル活動化していきました。つまり、運動の継続による介護予防と、定期的な他者交流の場、また世話役としてのリーダー養成を果たしてきたのです。
※「元気でまっせ体操」は厚生労働省のホームページでも紹介されています。
http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/yobou/torikumi_02.html
元気でまっせ体操
大東元気でまっせ体操グループ活動紹介集
地域包括ケアシステムの実現に向けて
地域包括ケアシステムの実現に向けて、国からその整備が不可欠といわれていること、つまり市町村への宿題が4つあります。
1.地域ケア会議の開催
2.医療と介護の連携の推進
3.認知症施策の推進
4.生活支援の充実
大東市では、4つの宿題にどのように取り組み始めているのかをご紹介します。
1.地域ケア会議の開催
「地域ケア会議」とは、地域の課題を見出し、課題解決の優先順位や利用できる地域資源を検討し、解決のための施策などを立案するために、生活圏や市町村で開催される会議のことです。大東市では月に一回地域ケア会議が開催されていますが、内容は個別課題に対する事例検討会のほか、【高齢者の役割作り】【若い世代への啓発】【SNSを使っての情報共有ページの作成】【買い物支援】といった4つの作業部会が立ち上げられました。
また、地域ケア会議は「高齢者虐待会議」「認知症対策検討会議」「高齢者見守り検討会議」とも連携しています。この会議の開催に先駆け『大東市における自立支援とは』という「自立支援」の定義を検討したのは、面白い試みだったと思います。
大東市の自立支援とは
『個人因子と環境因子の双方から個人を知り、それを本人だけでなく、家族、近隣住民を含めた支援者で共有し、本人の能力・意欲を最大限に引き出し、その人らしい生活をいきいきと送ることができる環境を整えること』
支援者それぞれの価値観で、ばらばらに支援をすることでの支援の無駄やばらつき、過剰な支援が自立を阻害することがないように、地域ケア会議の場で、大東市における「自立支援」とは?をはっきりと明示し、それに向かって官民協働して「医療・介護の連携」「認知症への対策」「地域ケア会議」「生活支援」を整備していくという目標が共有できました。
地域ケア会議
2.医療と介護の連携の推進
ケアマネを含む介護職にとって、医療、特に医師との連携は敷居が高く、うまくいっていなかったのが実情です。
そこで、大東市を含む保健所圏域で医師会の協力を得て「Dr.連絡票」なる書類を作成し、医師との連絡ツールとしました。第一表で主治医の希望する連絡方法を確認 第二表で要件を伝える、またその返信については無料で提供をしていただく、というルールを確立しました。
また、病院との連携については、入院時、退院時にそれぞれの担当者(入院時はケアマネ、退院時は病棟の看護師)がその患者の情報を双方向に申し送りをする書式「医療・介護連携シート」を作り活用しています。
とはいえ、まだまだ「顔の見える関係」には、あと一歩というところですが、最近医師の方から連絡をいただける機会が増えたことなどを考えると、少しずつは距離が近くなっているのかもしれません。
3・認知症施策の推進
「認知症になっても住み慣れた地域で住み続けるために」地域での体制をどう整えるのか、ということです。見守りの体制と適切な医療の提供、介護負担の軽減が対応すべき課題です。
大東市では「認知症フォーラム」を二年前から市民向けに開催していますが、毎回1000人を超す市民が集い、認知症への理解を深めています。
このようなフォーラムや勉強会などを通じて、市民への啓発活動を行っています。
認知症の徘徊行為への見守り方法を検討(地域ケア会議)
生活支援の充実
高齢者にとって、加齢による心身の衰えは病気を治せば解決する、というものではなく、部屋の掃除や買い物などといった生活上必要な動作がしにくくなるという不便を抱えるようになるのは事実です。
介護保険ではそもそも認められていない、生活上の不便を近隣の住民同士が「共助」として支えあう仕組みを作ろうとしています。大東市では『生活サポーター』という、有償のボランティアを公募し、養成をはじめています。
近隣だからこそ、「お互い様」の気持ちを持ちつつ、「自分でできることまで他人に甘えたらあかんのちゃう?」という叱咤激励もなじみの関係ならでは言えるのではないか。また高齢者でもヘルパーの資格が無い人でも、働く機会が得られるという「支える側」「支えられる側」双方にとってのメリットがあるのではないかと期待されています。
いま、日本の各地でそれぞれの地域特性に合った、地域包括ケアシステムの体制作りが始まっています。
大東市の「地域包括ケアシステム」作りもまだまだ始まったばかりですが、培われてきた住民力と官民の知恵と工夫で、どのような個性的なシステムが構築されるのか、、、 大東市で働く私たちもワクワクしています。
「自分が年を取ったらどんな町で住んでいたいのか」「親がどんな地域で、どのように生活できたら安心なのか」ということをイメージすることが『地域包括ケアシステム』構築の肝なのだと思います。
地域包括ケアを考える講演会・シンポジウム開催
6月13日(土)、postgresグループ主催「地域包括ケアの講演会・シンポジウム」を開催します。
10年後の2025年には、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、4人に1人が75歳以上という超高齢社会をむかえます。地域で暮らせる医療と介護の環境づくりに、日本中の市町村で「地域包括ケアシステム」の形作りが始まっています。
このたび、私たちの本社がある大東市で「地域包括ケアを考える講演会・シンポジウム」を開催することとなりました。これからの未来をみなさんで一緒に考えてみませんか?地域包括ケアに関心のある方ならどなたでもご参加いただけます。
日時 2015年6月13日(土) 13:00-17:00
場所 大東市総合文化センター サーティホール 大ホール
大阪府大東市新町13-30
JR学研都市線 住道(すみのどう)駅より500m
講師 酒向 正春先生 (世田谷記念病院 副院長)
鶴田 真也先生 (厚生労働省 老健局 老人保健課 課長補佐)
内容 ◆特別講演「あきらめない力 ~攻める 脳リハビリ医が挑む 希望の人間回復~」
◆基調講演「これからの地域包括ケアシステムとは」(仮題)
◆シンポジウム 「これからの地域包括ケアシステムを考える
~地域資源となるそれぞれの立場から~」
募集人数 400名
参加費用 2,000円
下記お申込みページよりお手続きお願い致します。
https://www.p-supply.co.jp/app/webroot/moushikomi2/branch_cut.html
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