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車椅子いす整備士による『車椅子プロメンテナンス』
車椅子/姿勢保持
環境整備
車いす安全整備士による『車椅子プロメンテナンスについて』
川村義肢株式会社製造本部車椅子・姿勢保持課/車いす安全整備士 大西弘
2015-06-01
「車いす安全整備士」の称号を耳にされた方はまだ少ないかも知れません。車椅子の製造・販売にあたってはJISに基づいて一般社団法人日本福祉用具評価センター(JASPEC)が強度、耐久性のテストを行い安全性は保障されています。しかしその後の定期検査やメンテナンスにあたっては、販売業者やメーカー側のフォローも行き届いていない状況でした。車椅子に関る業界あげてのメンテナンス体制をと「車いす安全整備士」の資格制度ができました。今回はお客さまの「安心安全」を届ける川村義肢株式会社・車いす安全整備士/大西によるプロメンテナンスをご紹介いたします。
電動車椅子安心プロジェクト
2年前に当社のお客様で電動車椅子の後方転倒の事故があり、「電動車椅子安心PJ」が発足しました。
電動車椅子の安心・安全ってなに? 川村義肢での見直しや取り組みの中から、スタートした「電動車椅子定期点検」プロメンテナンスの紹介です。
電動車椅子定期点検の取り組み
・簡易電動のフレームバランスの検証(重心位置の問題について)
・安全に運転や操作が出来るように「さあ、はじめよう」DVDの制作
・自動車の車検のように、定期点検の仕組み作り
安心や安全は製品だけに依存できないことです。安全に取り扱うこと操作方法や安全運転への啓蒙活動や定期点検を通じて電動車椅子ユーザーに安心して利用して頂く環境作りが必要です。
川村義肢でおこなうプロメンテナンスには訪問対応と来社対応の設定があります。申し込みから6か月毎に定期点検の案内連絡をすることで、ユーザーの電動車椅子の状況確認と点検の必要・不要を確認します。
訪問対応は¥14,000、来社対応は¥8,000の価格設定になります。
公費の対応ではなく自費での対応です。
専用の点検表を使用しての点検作業と経年変化や劣化の判断やアドバイス、ユーザーからの疑問への返答など、「単にネジを締めて終わり」ではなく安全に利用してもらえるように対応しています。部品の交換時期についてとか、こんな状態になったら「危ない」など使用状況から判断できるこれからの状態も説明します。
ユーザーはなんとなく疑問に感じているのですが「大丈夫かな?」なんて、ついつい業者側へ連絡を後回しにしたりすることもあるようで、判りやすく説明することで理解してもらえることも多くあります。
「川村義肢の大西です。
電動車椅子定期点検でお伺いしました。今日はよろしくお願いします。」
初めてお会いするお客様です。挨拶や対応には注意しています。
毎回緊張しています・・・ そんな訪問点検での様子をお話します。
電動車椅子定期点検の申し込みパンフレットと「さあ、出かけよう!」DVD
専用の点検表
6ケ月で走行距離100km?
部品の交換時期などの判断として、走行距離が確認できる機種はお客様に現在の走行距離をお伝えします。
2度目の訪問のお客様とのお話です。
前回の点検から100kmしか走行が増えていません。
「あんまり走っていないやろ~」とお客様から声がかかります。
「飼っていた、ワンちゃんが亡くなってな~」
「朝晩の散歩に行かんようになったからな~」
寂しい表情で話されます・・・・
訪問点検だから、お客様の近況も知ることが出来るのですが・・・・
楽しい話や悲しい話、どちらも待っています。
タイヤ交換時期について見て判るように見本を準備
安心・安全な環境 を目指して
時期は12月の末・・・ 日が暮れるのも早く真っ暗な中での作業です。
「外は寒いし、暗いし」作業環境は悪いですが、文句や手抜きは出来ません。
LEDのライトで照らしながらの点検作業中にタイヤに刺さった画鋲の針を発見!パンクはしていませんが、これを見落とすとパンクの可能性があります。些細なことですが、こんな対応が安心・安全に使用して頂くため必要なことと自分に言い聞かせたりしています。
「定期点検」って言っても、形が残らない行為に対価をお客様から頂いています。「自責の念」というか対価を頂く以上、完全な対応を心がけています。
ぎりぎりセーフはアウトです!技術がどうこうと言われることもあります。お客様の電動車椅子ですが、私は自分の車両のように考えて対応します。
だから、「ダメです」「危険です」とはっきりお話します。細かなお話もします。「ややこしい人」と思われることもあると思います。見落としもいけないし、適当な作業なんてできません。
常に自分を責めています「完璧か?」なんて・・・
安心・安全・信用・信頼と簡単に言いますが、ものすごくエネルギーが必要なことなんです。
車両に、このステッカーを見かけたら私が作業した電動車椅子です。製品に安全を求めるだけでは、本当の安心・安全ではないと考えます。利用されるお客様やご家族、周りの人たちも含めて協力が必要です。
「これ危ないよ」
「タイヤの空気少ないんじゃないの?」
安心・安全ってそんな身近なことからだと思います。JASPECでおこなわれる「車いす安全整備士養成講座」現在800人ほどの認定者が全国で車いすを安全に継続使用できるようにがんばっています。
車椅子を安全に継続使用する為に必須な知識と技術を持つ人が増えることで、これから本当の意味で「安心・安全な環境」が整備されることと思います。
作業完了を示すステッカー
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