パシフィックニュース
日本版感覚統合検査について
感覚統合
2010-07-01
日本感覚統合学会とパシフィックサプライ(株)では、機器の開発、販売に取り組んで参りました。今回日本感覚統合学会より、検査器具の開発経過と、15th International Congress of the World Federation of Occupational Therapists(世界作業療法学会)で発表されたレポートをご紹介いたします。
2001年より日本感覚統合学会は検査開発委員会を組織し日本版感覚統合検査の開発に取り組んできた。特別支援教育に代表されるように、発達障害児の支援は国をあげて取り組んでいる重要な課題の一つである。発達障害児の学習、行動、コミュニケーションの困難さに対しては教育、心理、医療など様々な専門家による支援がなされており、感覚統合理論にもとづく感覚統合療法もそのひとつである。発達障害児の学習、行動、コミュニケーションの困難さの背景には感覚統合障害がある場合が多い。感覚統合障害は行為機能障害と感覚調整障害の大きく2つに分類され、感覚調整障害は多動、注意、不安、攻撃性、行為機能障害は姿勢や運動の不器用さといった生活上の困難さと関連することが多い。
今まで、日本で使用されてきた感覚統合障害を評価する検査のほとんどは米国のものであり、日本の子どもを対象として作られたものは日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査(JMAP)のみであった。JMAPはスクリーニング検査としての有効性は高いが、感覚統合障害の診断、鑑別には十分とはいえず、日本オリジナルの検査開発が望まれていた。
JPANは検査項目の作成から標準化まで、すべてを日本でおこなった、遊び心あふれる評価ツールである。その特徴は
- 発達障害児の感覚統合障害の早期評価とそれに続く治療的介入に役立つよう4~10歳の年齢を評価できる。
- 注意集中が難しい子どもが多いことから、可能な限り楽しく、遊び感覚で子どもが検査に臨めるような内容、構成になっている。
- 子どもの姿勢・平衡反応、体性感覚、視知覚、行為機能の4領域が評価できる。
- 既存の発達検査にはないオリジナリティーの高い検査内容が多く含まれている。
- 検査は姿勢・平衡反応6、体性感覚7、視知覚4、行為機能15の計32の下位検査より構成されている。
- 32の下位検査は、A~Cの3セットにわかれており、1セット約40分で検査可能であり、段階的に子どもの感覚統合機能の評価を深めることができるようになっている。
JPANは今年10月に開催される第28回感覚統合学会研究大会(札幌)で正式発表され、販売開始予定である。日本感覚統合学会の検査開発委員会は最終の完成に向け、最後の追い込みに入っている。
Aセット
Bセット
Cセット
JPAN感覚処理・行為機能検査 WFOT世界大会で中間発表
京都大学大学院医学研究科
日本感覚統合学会検査開発委員会委員長
加藤 寿宏
日本の裏側、飛行機で約30時間、チリ共和国の首都サンチアゴで15th International Congress of the World Federation of Occupational Therapists(WFOT世界大会)が開催された。この学会は4年に1回行われる、国際学会であり、世界約60のWFOT加盟国の作業療法士が集まり、研究成果を発表する場である。
現在、日本感覚統合学会とパシフィックサプライ株式会社で共同開発しており、今年の冬に販売予定となるJPAN感覚処理・行為機能検査(Japanese Playful Assessment for Neuropsychological Activities)に関する研究成果を3題、山田孝 先生(首都大学)、岩永竜一朗 先生(長崎大学)、加藤(京都大学)の3名が発表した。JPANは日本でオリジナルに開発した、4歳から10歳までの感覚統合機能を評価する検査であり、子どもが遊びながら楽しく主体的に検査に参加できるように作られている。
チリで開催ということもあり、スペイン語を公用語とする南米からの参加者が多かった。このため、英語でのポスター発表の他に、スペイン語を話すことができ、JPANの開発にも関わっていただいている、引野里絵 先生にお願いしスペイン語での質疑応答も行った。また、実際の検査がわかりやすいよう、検査場面のDVDも持参した。
参加者の関心は非常に高く、「SIPT(米国を中心に使用されている感覚統合検査)にはない検査が含まれており、非常に興味深い」「マニュアルを英語で作成する予定はないのか」「外国からでも買えるのか」など、ポスターの前には多くの参加者が次々集まり、活発な意見交換を行った。スペイン語での対応も可能であったこともあり、南米からの参加者に非常に興味をもってもらえた印象である。日本語だけでなく、英語、スペイン語でのマニュアル作成をする必要性を強く感じ、発表を終了した。
日本感覚統合学会は、学際的(医療・福祉・教育)な学術団体です。
感覚統合療法は、発達障害児のリハビリテーション、療育実践として、主に医療現場(作業療法)で発展してきました。この療法では、子どもの学習、行動、情緒あるいは社会的発達を脳における感覚間の統合という視点で分析し、治療的介入を行います。
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