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パシフィックニュース

東北に走る喜びを!②~ランチャレin秋田・仙台~

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東北に走る喜びを!②~ランチャレin秋田・仙台~

~ランチャレin秋田・仙台~

JA秋田厚生連湖東厚生病院・理学療法士 佐藤陽介

2013-02-01

東北ランチャレ2回目となる開催地は仙台市。大学野球の強豪、東北福祉大学野球部の屋内練習場をお借りして開催いたしました。スポーツを通して、理学療法士、義肢装具士の医療職が集結し、義足ユーザーの走りを応援しています。再びスポーツができる喜び、またスポーツの持てるチカラを2回にわたり、佐藤先生に掲載いただきました。東北の地は夢に向けての伴走がすでに始まっています。

ランチャレin仙台

秋田で開催されたランチャレの後、Ambeinsは5月と9月に練習会を行いました。パシフィックサプライの仙台営業所の門奈さんは「ランチャレ終了後にAmbeinsの仲間が増え、後に残る形を。」といつも気にかけてくれています。お陰で秋田開催以降Ambeinsメンバーも増え、岩手県花巻市での練習会、秋田県大館市での練習会をそれぞれ実施。東北は広く交通の便も悪いので、決まった会場で練習すると参加し難いメンバーが出てしまいます。そのため東北の競技場を転々と回る形で練習会を開催しています。東北を大まかに分けると北東北(青森・秋田・岩手の3県)と、南東北(宮城・山形・福島の3県)に分けられます。これまで南東北では義足ユーザーの仲間が増えずにいました。そんな時、パシフィックサプライ仙台営業所の門奈さんから「もう一度東北でランチャレやりましょう!今度は仙台開催でどうですか?」と連絡をいただきました。私たちとしては願ってもないチャンスでした。

 

 仙台開催は11月、東北福祉大学野球部の屋内練習場をお借りしての開催でした。Ambeinsのメンバーの他、宮城県や千葉県から参加された方もおり、今回も沢山の出会いに恵まれました。また、東北福祉大学を始め、理学療法士の養成校の教員の方の参加もあり、今後の新たな展開も期待できる開催となりました。インストラクターには長倉先生と浜本先生が熊本からいらしてくださいました。参加者は中学生から還暦を超えた方まで幅広い年齢層でした。

 

午前中は秋田開催の時と同じように体力測定、準備運動から始まりました。その後は恒例のステップ練習です。初めての参加者も普段からスポーツ活動をしている方がおり、運動神経が良く着々とメニューをこなしていきます。お昼休みにはスポーツ用の義足に履き替えますが、パシフィックサプライ社の計らいで、発売前の膝継手をお借りして義足を組みました。Ambeinsメンバーの中には、本格的に陸上競技の大会出場をしているメンバーもいますので自身のスポーツ用義足を使用していました。義足の履き替えも一筋縄ではいきません。義肢装具士が義足の履き替えとアライメント調整をしますが、普段からAmbeinsに参加している義肢装具士でもスポーツ用義足となるとアライメント調整は難しいようです。義足は根元から足関節の部分までいろんなところに調整箇所があり、車のアライメント調整のように前後左右に角度調整をして歩きやすい、または走りやすいセッティングを見つけていきます。日常用の義足では歩く様子(歩容)を確認して調整を進めていきますが、スポーツ用の義足はそもそも足の形をしていないので、何を基準にアライメントを合わせていけばいいのかわかりにくいのです。普段スポーツ用義足に触れたことがない義肢装具士にとっては尚更難しかったものと想像します。私も義足をいじるのが好きなので、マイレンチを持ってうろちょろしていましたが出番はありませんでした(笑)。

午前中の様子

アライメント調整

関東からも参加してくれました

午後の走行練習

午後の走行練習ではAmbeinsメンバーが手本として活躍してくれました。しかし、初参加の方々も素晴らしい能力の持ち主揃いで、普段高校の陸上競技を指導している方、バドミントンで活躍されている方などすぐにスポーツ用の板バネを使いこなしていました。遠目に見たのではっきりとは見えませんでしたが、縄跳びをしている参加者もいました。長倉先生が参加者に走行の指導をしている傍らで、私はまだ義足に慣れていない中学生の指導をさせてもらいました。担当の義肢装具士も熱心で、中学生と相談しながら3人で悩みながらの練習でした。普段履き慣れていない義足で、思うように使いこなせず、恐怖感もあった事だったでしょうし、もどかしい気持ちもあったと思います。それでも諦めずに練習している様子に私自身が感動をいただきました。そして一緒に悩みながら調整やアドバイスを付きっきりでしていた義肢装具士といいコンビのように見えました。参加していた皆さんも遠目に中学生の頑張りを見ていてくれたのだと思います。Ambeinsメンバーも心配して見に来てくれていました。私も必死だったので、あの時義足ユーザー目線でアドバイスをもらえたらもっと良かったなと反省しています。


最後に20mのタイム測定をしましたが、中学生が20mを自分の足で走りきった後は、彼に向けて会場から拍手が起こっていました。本当にこの活動をしていて良かったと思う瞬間でした。終わってから門奈さんに言われたのは、「今回のランチャレでは参加者がそれぞれに分かれて練習できていたことがとても良かった」という事でした。他動的に進行されていく会ではなく、参加者全員が自主的に動いて楽しいランチャレにすることが出来ました。今回は長倉先生も私に中学生の指導を任せていただき、私にとってもレベルアップできたと思います。

午後はスポーツ用義足での走行練習

素晴らしいフォーム!

走る喜びを

読者の皆さんにとっては「走ること」は特別なことでしょうか。健常な方であれば速さや持久力はともかく「走る」ことはできることでしょう。義足ユーザーの多くは、上手に歩ける方であれば、形はともかく走ることができる可能性が高い方が多いのではないかと思います。スプリント用の板バネは購入を悩むほど高額な製品ですが、今の制度上では医療保険の対象外となります。義足ユーザーが走る事を「特別な事」にしたくないと思っています。挑戦したい気持ちがある人には挑戦するチャンスを身近なものにしたい。Ambeinsの活動を通して伝えたいのは走行練習の場を提供することだけではなく、多くの医療従事者に義足ユーザーが走る様子を見てもらうことで義足の高い能力に気づいてもらいたいということです。


前回の記事で私たち理学療法士は義足を使用する切断患者さんを担当する機会が多くはないと書きましたが、経験不足から「この患者さんは将来走れるのだろうか。」という判断が難しいと思います。また、下肢切断術を受けた患者さんに「義足を処方するか否か」についても臨床の現場では判断が難しい場合があります。その判断は医師が、担当理学療法士や義肢装具士と相談したうえで下すことが多いと思います。ぜひ医師の方々にも見ていただければ何かしらのヒントになるのではないかと思います。Ambeinsに限らず、全国に義足スポーツサークルがあります。関心のある方はぜひお近くのサークルを見学してください。きっと多くの気づきがあると思います。パシフィックサプライ社が提供しているフレックスランという板バネであれば1ヶ月7000円でレンタルができます。義足ユーザーにとっても「走る」ことは身近なことになりつつある中で、私たち医療従事者も自分が担当する患者さんに「走る喜び」を近づけることができたら素晴らしい事だと思います。お近くで「ランチャレ!」が開催される際はぜひ参加してみてください、きっと素晴らしい経験につながると思います!

 


  
 東北にもこんなに仲間がいます!

 

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Ambeins事務局、info.ambeins@gmail.comまでご連絡をお願いいたします。

走る喜びを

国体ではメダルをとりました!

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