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AACケーススタディ紹介 エーブルネット社 その2

AAC(コミュニケーション)

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AACケーススタディ紹介 エーブルネット社 その2

エーブルネット社研究コンソーシアムより、障がいのある子ども達が学び、成長し、素晴らしい結果を成し遂げる機会を、いかにして教育者が創り出しているか、実際の事例を紹介致します。

2010-07-01

どんな夢でもかまわない  Any Dream Will Do

ジュディは英国、ロンドン北部にあるハートフォードシャー州にて活動している、24年の経験を持つ、フリーの言語聴覚士です。選択場面を作ったり、語彙を増やしたり、生活の中で楽しみや参加の機会を広げるためにスキャンやスイッチを活用します。

「その子どもにとって100%関連した機会を創出すること」
「明確なゴールに向かって小さなステップを踏むこと」
「子ども自身へフィードバックし、子どもが確認できるようにすること」
という3つの基本を持ち、コミュニケーション支援を実施しています。重度の脳性麻痺、皮質盲のマシューはジュディがコミュニケーション支援に関わり始めた6歳半から現在の12歳まで目覚しい成長を遂げてきました。

前号からの続き

マシューはこのようにしてステップバイステップとビッグマック、2つのコミュニケーションエイドを使ったコミュニケーションを始めました。ステップバイステップに録音しているアクティビティの選択肢を頭のスイッチを使って、ひとつひとつ再生しながら、それを聞いて確認し、手元のスイッチで「はい」と言って選択を確定するようになったのです。

このシンプルな選択方法から、マシューはFL4SHという機器での2つの聴覚スキャンへ移行しました。頭のスイッチで選択肢をスキャンで再生させ、手元にあるジェリービーンスイッチにて選択を確定させます(写真3、写真4)。マシューはシンボルを見て確認することが視覚的に困難なため、聴覚で言葉を確認することが必須です。

マシューのFL4SHのオーバーレイには音楽、行きたい部屋、行きたい場所、会いたい人、したいことが録音されています。また2つの言葉を組み合わせながらの選択にも取り組んでいます(例:「ラウンジに行く」+「テレビを見る」や「お母さん」+「本読んで」等)。マシューは言語表現が発達すると共に語彙も広がっています。

次の段階は、オーバーレイの数を増やしていき、マシューにたくさんの異なった選択肢を提供することでしょう。例えば、次のようなオーバーレイです。

シェリル:
あなたの重要な介入アプローチの3つめ、「子ども自身へフィードバックし、子どもが確認できるようにする」ことですが、支援技術、AAC機器の使用を学んでいる子ども達に効果が高かったそうですね。それについて具体的に教えてください。

ジュディ:
ユーザーへのフィードバックは子ども自身の経験を我々が共有することに大いに関係があります。ユーザーと我々で交互に行うアクティビティの場合、それが非常に自然にできると思います。ユーザーと共に笑い、ユーザーと共に歌い、フィードバックすることや子どもを受け止めることに関しては「大げさ過ぎるのでは」と躊躇してはいけません。
マシューは一緒に歌を歌ったり、一緒に本を読んだり、一緒に音楽を聞くのが、大好きです。周りの人と一緒に楽器を鳴らすことも好きです。これからは、マシューはどの楽器を鳴らすか、誰と楽器遊びをしたいか、選ぶようになるでしょう。ステップバイステップに録音した音楽(小節毎に20秒間録音したもの)を流し、2つめのスイッチで接続した楽器を鳴らして楽しむことができるのです。

シェリル:
これまでの介入アプローチの結果、マシューは現在どのようなことをしていますか?

ジュディ:
マシューはすべての場面で積極的にスイッチを使おうと高いモチベーションを持っています。彼はセンサーで反射道路を進むSmartという車いす(Smile Rehab社)を使用していますが、頭のスイッチで車いすを操作して、彼の部屋から非常に長い廊下を移動して毎日教室へ通っています。

マシューは今も教室、家、電話などの様々な場面でビッグマック、ステップバイステップを使い、FL4SHでは選択しながらコミュニケーションしています。また、「はい」と「いいえ」を再生させて明確に「はい/いいえ」の返答をすることも練習しています。

彼は学校の職員から非常に大きなサポートを受けています。職員の方々はモチベーションが高く、機器(ビッグマック、ステップバイステップ、FL4SH)の活用についてこちらからの提案やアイディアを実践し、それだけでなく、新しいアイディアも生み出す、情熱に溢れた方々です。学校の職員が定期的にマシューのためにステップバイステップにいろいろな言葉を録音しています。最近では、校庭にいたクロウタドリの鳴き声が録音されていました。また、マシューは定期的に携帯電話で家とコミュニケーションを取っています。時々、携帯電話の留守番電話に録音されている家からのメッセージをマシュー自身が聞けるよう、職員がステップバイステップに録音しています。学校では、マシューはSmart車いすに乗って、職員室から他の教室までステップバイステップでメッセージを届けることもしています。

シェリル:
このような目覚ましい変化を起こすために大切な考え方や哲学は何でしょうか。

ジュディ:
どんな子どもでも最初に評価する際に重要なのはその子どもの良い面や出来ることをすべて観察することです。

  • 何を楽しむのか
  • 既に動かすことができていて、さらに促せるであろう動作は何か(しかし促しは最小限に)
  • 何がその子どものモチベーションを上げるか
  • 現在どのようにコミュニケーションを取っているのか(喜びや不快の表現を観察する)


取り組みの中で、子どもがアクティビティに関心を持っていない、または集中していない様子が見られた場合、子どもの意欲をどのように引き出せるか、それを見つけることは取り組みを行っているリーダーの責任です。子どもが反応を示さないのは反応を示すに足るほど動機づけされていないからと言えます。その場合は他のアクティビティを試す必要があります。子どものモチベーションを一旦見つけられれば、そこから他の学ぶべきことを組み立てていくことができます

最終的に子どもの自主性を高め、コミュニケーションから移動、学習から環境制御まで、自分の生活をコントロールすることに繋がるのです。

シェリル:
他の支援者の方々(教育者、当事者家族など)に最も伝えたいことは何ですか?

ジュディ:
自信を持って下さい!とお伝えしたいです。子どもがスイッチを使うことに対してモチベーションを持てば、支援者の方々は他にも多くの楽しいアクティビティを見つけ、子ども達が自分で周りの環境や様々な活動をコントロールしやすいようにサポートする必要があります。

また、今後子どもがどのような段階を踏んでコミュニケーションを発達させていくか、体系的な計画を立て、それに従ってコミュニケーションの成長を確実にしていく必要があります。自分のしたいことや行きたいところを選ぶこと、周りの人々を含め、環境を自分でコントロールすることはコミュニケーションそのものです。良いコミュニケーションはQOL(Quality of Life: 生活の質)に直接結び付くのです

引用原文

エーブルネット社ホームページ内 ABLENET RESEARCH CONSORTIUM
Case studies/ Judy King, Hertfordshire, England/ May 2009
http://www.ablenetinc.com/Home/Research/
AbleNetResearchConsortium/EvidenceLibrary/
ImplementationEvidence/tabid/346/Default.aspx

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