パシフィックニュース
JICA『世界の笑顔のために』プログラム活動への参加①
車椅子/姿勢保持
海外情報
~始まりは1通のメールだった~
パシフィックサプライ(株)事業開発本部 杉本昌子
2017-07-03
先般、ガーナに駐在する海外青年協力隊(JICA)からの依頼で、パシフィックサプライ㈱が車椅子を寄贈させていただきました。1通のメールが弊社スタッフの心を動かし、発展途上国に住む子どもたちの笑顔につながりました。
すべては子どもたちの笑顔のために
始まりは、弊社お問合せアドレスに入った1通のメールからでした。「不要になった子ども用の車椅子を提供してもらえないか?」という内容でした。今思うと自分でも分からないのですが、その時に何か心が動くものというか、突き動かされる感覚で思わず返信メールを送ったことがきっかけでした。聞いてみると、大人用の車椅子は多数送られてくるけれど、子ども用の車椅子が不足していて、子どもたちが自由に動き回る機会を得られない状況になっているとのこと。それはもうジッとしていられません。課題はたくさんありました。
1.弊社は車椅子のメーカーではなく、海外メーカーからの輸入品であってもよいのか
2.新品での提供は出来ないが、問題ないか
3.海外メーカーの理解が得られるか
4.社内の理解が得られるか
考えると色々ありました。やっぱり無理かな・・・と諦めかけたこともありました。ですが、そんな時に気持ちを動かしてくれたのが、遠い海外で頑張っておられる派遣スタッフの活躍する姿でした。インターネットの環境も日本ほど整っておらず、メールですぐにやり取りできる環境ではありません。そんな中でも強い信念のもと、対応してくださり、懸念していた課題も一つひとつ解決することができました。
約1年のやり取りを通して、無事に車椅子が現地に届いたと一報いただいた時には、安堵と喜びと、満足感に包まれました。しかもそれで終わりではなく、届いた車椅子を子どもたちに適切にフィッティングされた様子を報告していただきました。車椅子に乗っている子どもたちの姿を見て、何物にも代えがたい感動と感謝の気持ちでいっぱいになり、子どもたちの笑顔から私たちも笑顔になることができました。
自分ひとりでできることは限られているかもしれません。そんなの無理って思うことも多くあると思います。ですが、同じ目的を持った仲間と一緒なら、きっと成し遂げることができるはずです。自分が関わった車椅子を使って、遠い世界のどこかで子どもたちが自由に動き回り、周りの環境を動かすことができて、色々な経験をすることができているのだと思うと、心の中のワクワク感や感動は特別なものとして、私の心の中に居続けてくれるように思います。
日本でも、子どもたちの移動手段を変えるだけで、自分の意思で自由に動き回ることができます。それをキッカケにして周りの環境を変えることができて、多くの人と出会い、たくさんの経験をして、素敵な大人になってくれる、そんな社会を作ることができるのではないかと思っています。自分一人では出来ないことも、同じ目的の仲間が集まって課題を共有して、一緒に進むことができたなら、きっと新しい世界がその先には拡がっていることでしょう。私たちもその中でお手伝いできれば、こんなに嬉しいことはありません。
パシフィックサプライ(株)事業開発本部 杉本昌子
GHANAに車いすが届きました!!(JICAからの手紙)
【原文掲載】 青年海外協力隊 理学療法士・柴田沙希さん
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この度は小児用の車椅子を寄付して頂き本当にありがとうございました。初めまして、私は青年海外協力隊 平成27年度2次隊として 西アフリカ、ガーナのイースタン州で理学療法士として活動しています柴田沙希と申します。私の配属先はORTHOPEDIC TRAINING CENTER(義肢装具リハビリセンター)というところでローマンカトリック教会によって建てられたNGO施設です。
創設者はオランダ人、現在の施設長はアメリカ人が管理していることもありガーナ国内の他のセンターと比較すると経営面や寄付等が管理されているほうだと思います。しかしそれでも小児用の車椅子はかなり手に入りづらく、海外NGO等に呼びかけましたが手に入らず今回世界の笑顔プロジェクトに応募させて頂きました。そのような経緯もあり所属長はじめとしたスタッフ、入院の子供たちも大変喜んでおります。簡単ではありますが当センターの取り組みや患者さんの状況、車椅子の使用状況について紹介させて頂きます。
寄付して頂いた車いすと当施設に入院している子供達
ガーナはこんな国
ガーナは西アフリカにある小さな国で10の州からなっています。私はイースタン州のンサワンというところにある義肢装具センターで活動しています。日本では野口英世がガーナで黄熱病の研究をしていたことや、チョコレートの原料であるカカオ豆の原産国等で有名です。人々はとてもフレンドリーでお喋りが大好き、行事では必ず歌って踊る、明るい国民性です。
宗教は、主にキリスト教 70%、イスラム教 16%程度、その他には伝統宗教等があり、信仰熱心な人たちが多いです。食事はヤム芋、キャッサバ、プランテーン(甘くないバナナ)、トウモロコシ等が主食です。代表的な料理としては「フフ」でキャッサバやプランテーンをついて作る餅のようなもので、肉や魚の入った辛いスープと食べます。その他の家庭料理としては「バンクー」が人気です。これは発酵させたトウモロコシの粉とキャッサバの粉を水で練って作ります。すりつぶした唐辛子やトマト、魚と合わせて食べます。基本的にスープ類であっても右手を使って食べます。
ガーナには雨季と乾季があります。インフラは整備されているとは言えず、通常でも2週間に1度程度しか水道が流れません。今年の乾季には我が家の水道が3か月流れなかったという状況です。停電も多い時期では毎日のように停電します。水がない時期は井戸や水を持っているお家から水を買い頭にのせて自宅まで運びます。
ガーナ共和国
「バンクー」
JICAボランティア 柴田沙希さん
活動報告
私の働いている義肢装具リハビリセンターは様々な国のNGOやプログラムから支援や寄付を受けており、それによって義肢装具を安価で売ることができ、患者さんにも手の届きやすいようになっています。
対象は産まれたてから高齢者まで義肢装具を必要とする人であれば誰でも来院します。疾患は日本でも馴染のある脳卒中、骨折、切断、脳性麻痺、水頭症から日本ではあまり見ることのない先天性内反足、ポリオ、アザラシ肢症等の疾患を持った方も来院します。
私の所属しているリハビリテーション部門では外来、入院幼児、入院学童、入院の切断者の部門がありそれぞれにリハビリを提供しています。個別リハビリテーション、集団リハビリテーション、患者さんや母親への教育、水治療法、近くのコミュニティでの巡回診療等を行っています。
訪問診療の巡回先でのリハビリの様子
入院の子供たちとモーニングエクササイズ
治療の一環でギブスを巻いている様子
当施設の子供達と車いすの使用状況
当施設は基本的に装具の作製、調整、完成にかかる一定期間の入院しか認めておりません(たくさんの人を診られるように)。しかしここに長期に渡って入院している子供達がいます。医療が必要だからということではなく障害が理由で育児放棄されたような子供達です。写真の子供達の中には金銭で売買された子、育児放棄された子、親類によって殺されようとしていた子が含まれています。
ギフティ(8歳)もその中の一人です。脳性麻痺からくる強い筋緊張が姿勢の保持や動作を阻害されてしまい、シーティングが難しいケースでした。アメリカ人施設長の計らいによりガーナの個人経営でオーダーメイド車椅子を作っている会社に依頼し特注の車椅子を作ってもらいましたが(写真1)シーティングという概念は浸透しておらず、固い板張りのシートによりいつもお尻が前滑りし、強い痙性によって足がフットレストから滑り落ちている状態でした。当初の車椅子では自走も難しく、誰かに押してもらわないと動けず活動性も低い状態でした。私の方で寄付して頂いた車椅子に痙性を抑制する足部のベルト、前滑り防止クッション、左背面クッションを作製しシーティングしたところ(写真2)自分で車椅子をこいで自由に動き回れるようになりました!!
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※次号は青年海外協力隊理学療法士隊員・柴田沙希さん(Orthopedic Training Center・義肢装具リハビリセンターに勤務)より、ガーナの医療事情や障害者を取り巻く環境・現状についてレポートをいただきます。
写真1 現地オーダーメイドの車椅子
写真2 寄贈した車椅子 シーティングを施し自分でこげるようになった
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