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パシフィックニュース

第3回地域包括ケアを考える講演会・シンポジウム2017

環境整備

リハビリテーション

第3回地域包括ケアを考える講演会・シンポジウム2017

健康寿命を延ばす町 ~地域住民主体の絆づくり・まちづくり~

パシフィックサプライ㈱ 事業開発本部

2017-08-01

≪笑顔いきいきフェスタ≫  自分たちの住むまちが、安心して住みたいまちであって欲しい!そんな願いが会場のあちらこちらから飛び交うイベントになりました。

はじめに

2017年7月1日(土)大東市立文化ホールサーティホールにて、地域包括ケアを考える講演会・シンポジウム2017を開催いたしました。
 

3回目となる今年は、講演会、シンポジウムに加えて住民イベントを同時開催。
専門職や当事者に限らず、より多くの市民の方々に、自分たちで考える、地域の特色に合わせまちづくりをともに考えるイベントとして気軽に参加いただきたいという思いで企画いたしました。
 

おかげさまで、地元大東市より多くの市民団体や企業の皆さまに出展いただき、ともにイベントを盛り上げてくださったことに感謝いたします。

1.特別講演  進化学とロボットから見たリハビリテーションと介護の話 ~今まで聞いたことがない大きなヒント~

北海道上川地方の北部に位置する士別市から、北海道士別市立病院 療養診療科 診療部長の澤口裕二先生をお招きいたしました。

キネステティクとは人間の自然な動きを考える学問
澤口先生は体の動きについての学問である「キネステティク」を日本に紹介し、生理学、進化論など様々な角度から人間の体の不思議を研究しておられる医師です。脳梗塞などの治療を受け、退院後にも麻痺が残り身体の機能改善を求める人や、日常的な動作に衰えがある人などが士別市立病院でのリハビリテーションを受けて歩行できるようになった症例、ヒトの動きを観察して作られたロボットの動作などの動画も多く用いて、とても親しみやすい軽妙な語り口でヒトが楽に動くこととはどういうことなのかをお話しいただきました。

脊椎動物の動きの進化。その理論をロボットで実証
ヒトは脊椎動物であり複雑な動きをしますが、35億年前に誕生した単細胞生物のDNAを受け継いでいます。澤口先生は療養病棟で患者さんと一緒に動き、観察する中で気づいた動きの理論を、ロボットに移植し実証しました。そして、脊椎動物は単純な機構と機能で複雑な動きをしていること、その進化をロボットで実際に見せていただき、会場は驚きに包まれました。

麻痺や痴呆症状のある方も自分で動く感覚を思い出す
今回の講演で、リハビリテーションの常識にとらわれず、介助は接触と動きによるコミュニケーションであり、観察と丁寧なフィードバックを傍らで行うことで、患者さんは自分の感覚に気づき(あるいは思い出し)、それを使えるようになるということを学ぶことができました。

驚かないと新たな発見は生まれない
澤口先生は、「え~っ!?」と驚く体験が学習のきっかけであり、そこから面白いことが見つかるとおっしゃいます。常識にとらわれず、子どものように新鮮に驚くことができ、専門家こそ無知であると飽くなき探求を続けてこられた結果が、患者さんへの新たなアプローチ方法と劇的な変化を生んでいます。

患者さんの残存能力を引き出す介助のヒント
介助する側が、当たり前だと思い込んでいる常識の枠から自由になり、患者さん本人に寄り添ってきめ細かく観察し、言葉を付けて小さな具体的な動きを感じてもらうことで、その可能性を引き出すことができます。そんな新たな介助を行うためのヒントを今回の講演で教えてくださいました。新しい視点をもつためのヒントがちらばった、まさに目から鱗の講義でした。

 

<もっと詳しく知りたい方への参考文献>
澤口裕二(2011年)「アウェアネス介助論―気づくことから始める介助論 【上巻】解剖学・生理学と基礎的理解(DVD2枚付) 」シーニュ
澤口裕二(2011年)「アウェアネス介助論―気づくことから始める介助論 【下巻】接触と動きと介助の実際(DVD2枚付) 」シーニュ

<参考サイト>
澤口先生のホームページ 「さあさんの秘密の小窓」 http://awarenesscare.secret.jp
一般社団法人 日本キネステティク普及協会 http://www.nka.link

北海道士別市立病院 療養診療科診療部長 澤口裕二先生

特別講演:進化学とロボットから見たリハビリテーションと介護の話

2.基調講演  住民・行政・医療が協働でつくる「健康のまちづくり」

医師不足、住民の無関心に悩んでいた町に9年前に赴任した一人の医師
福井大学医学部・高浜町和田診療所の井階友貴先生をお招きいたしました。福井県高浜町は、福井県の最西端に位置する人口約1万人、72?、 アジア(日本)初となる「Blue Flag:ブルーフラッグ」(ビーチの環境認証)を取得した美しい海が自慢のアットホームな町です。しかし、町は医師不足や住民の無関心に悩み、井階先生が赴任された2008年には町内常勤医師数は5名まで減ってしまっていました。

行政や専門職の上から目線では住民の心に響かない
そこで、井階先生は地域医療の主人公は地域住民であるとまず訴えかけられましたが、行政や医療など上からの啓発活動、発信は住民の心に響かず、自分事として活動は広がらなかったそうです。それが、協働による働きかけを行うことで、地域医療教育「夏だ!海と地域医療体験ツアーin高浜」や地域住民有志が主体的に動く「たかはま地域☆医療サポーターの会」が展開されるようになり、住民の健康意識の高まりなどの変化がみられるようになりました。

住民主体のまちづくり活動。切り口を医療から健康へ
ところが、住民主体の「医療づくり」は効果はあるものの、取り組みに限界が感じられるようになり、平成27年度より「健康のまちづくり」という切り口にシフトして取り組まれるようになりました。その背景には、2025年問題や、日本創生会議が2014年に発表した「消滅可能性都市」(少子化や人口移動に歯止めがかからず、将来に消滅する可能性がある自治体。全国の市区町村の半分にあたる896自治体を指定して、早急な人口対策を促した)に高浜町が指定されたこともありました。

なかまとつながると健康になれる
社会とのつながり、人との交流が健康に影響を与え、つながり・絆から支援の力が生まれることがデータで示されました。例えばスポーツ組織への参加についてのデータ検証により、運動することそのものよりもコミュニティに参加して人と交流することが健康にとって有意であるという結果が示されると会場内には「え~っ」と驚きの声が上がりました。大東市内80か所以上の市民グループで定期的に実施されている「大東元気でまっせ体操」も、仲間との横のつながり、参加すること自体が健康に良い影響を与えていると言えます。

「けっこう健康!高浜☆わいわいカフェ」という、住民が主役の活動が、ソーシャルキャピタル事例として紹介されました。医療や健康といったキーワードでけん引するのではなく、対等でゆるやか、自由なつながり方をした団体の活動に参加することが住民を健康にし、なかまづくりの輪を広げ、知らない間に健康になれるまちづくり活動であるということです。

住民ひとりひとりが身近なところから健康まちづくりの架け橋に
住民自身が活動をすることで、住民から住民、専門職から専門職、さらには行政を巻き込んだ活動へとつながり広がっていく、そんな架け橋に住民ひとりひとりがなれるというメッセージを受け取りました。井階先生自身が、ご当地キャラの「赤ふん坊や」をこよなく愛し、医師らしからぬ親しみやすいキャラクターで住民や専門職、行政といった垣根を取っ払って町全体のよい関係性づくりを実践されています。今回のお話では健康まちづくりに対する熱いエネルギーを強く受け取ることができ、健康について町の在り方を考え直すきっかけをいただくことができました。

また、講義の合間合間に挟まれる「赤ふん坊や」推しに、高浜町に遊びに行きたいと思った参加者も少なくないのではないでしょうか。町のファンを増やすことも、高浜町のまちづくりの盛り上がりに一役買っていると感じました。

 

<参考サイト>
けっこう健康!たかはまわいわいカフェ  https://www.facebook.com/kenkocafe.takahama/
高浜町健康マイスター養成塾  https://www.facebook.com/kenkomeister/
たかはまコミュニティケアコンソーシアム  https://www.facebook.com/takahamaccc/
たかはま地域医療サポーターの会  https://www.facebook.com/acahun/
健康のまちづくりアカデミーin福井県高浜町 http://kenko-machizukuri.net/academy/
健康のまちづくり友好都市連盟  http://kenko-machizukuri.net/friendship/
高浜町ホームページ http://www.town.takahama.fukui.jp/

ご当地ゆるきゃら 「赤ふん坊や」&「ダイトン」

福井大学医学部 井階友貴先生

3.シンポジウム  地域住民主体の絆づくり・まちづくりを考える

今回のシンポジウムには行政、企業、住民団体を代表して下記の方々が登壇し、それぞれの活動の現状やこれからの展開についてお話いただきました。

大東市保健医療部地域保健課 課長補佐兼上席主査  看護師 岸田サカエさま
川村義肢ショールーム等市内各地で年3回開催され、気軽に住民が参加できる「健康測定会」や、健診(検診)を受診するごとにポイントシールがもらえてたまると記念品がもらえる「健康マイレージ」、エンジョイウォーク事業、大東シニア総合大学など大東市の健康づくりの取り組みをご紹介いただきました。

 

株式会社OSU Health Support Academy  健康運動指導士 大西拓也さま
大阪産業大学発の企業として学生も運営に参加し、運動事業や栄養事業を行っておられます。本イベントでも多目的ホールにて栄養セミナーや機能改善教室、セーフティーウォーク測定、キッズ体操等のアクティビティを実施してくださいました。

専門指導員と大阪産業大学の学生が、大東市内の各会場を訪れ60歳以上の方々に運動教室を出前する「ごきげん屋プログラム」や吉本興業とコラボした笑いを交えた健康イベントなどの活動をご紹介いただきました。
 

Mother-Earth-Association  副代表 赤井直美さま
少子高齢化、核家族化等を背景に、子どもが生きる力を身につけ、お母さんの心のケアも行うための活動支援をされています。地域のシニア世代の力も活かせる地域ぐるみの子育て活動や、子どもたちだけでお店屋さんをオープンさせるきっずマーケットなど子どもが楽しく力を伸ばせるイベントのご紹介などをいただきました。
 

最後は基調講演をいただいた井階先生から総括をいただき、大東市ならではの住民主体であるまちづくり活動についての賞賛と、本日の聴講者がぜひ絆をつなげる役になって活動をさらに広げられるようにとのエールを頂戴しました。

 

 

        
 

 

大東市保健医療部地域保健課 課長補佐兼上席主査 岸田サカエ様

(㈱)OSU Health Support Academy健康運動指導士大西拓也様

Mother-Earth-Association  副代表 赤井直美様

4.大東市内の市民団体、企業による展示

大東市内の市民団体、企業による展示
今回は、午後からの大ホールでの講演会・シンポジウムに先立ち、午前中より1階、2階、屋外と会場全館に40以上のブースが出展し、ともにイベントを盛り上げてくださいました。大東市内の市民団体や企業による活動紹介展示やグッズ販売、住まいや暮らし、終活などのサービス紹介、役立ちグッズの商品紹介、法律や保険、旅行、福祉などの相談、子ども縁日、バリアフリーカーの展示、地元の野菜・植木市、エンディングシートの配布、大東市むかしの写真展、など多様な内容でお祭りのような活気と笑顔がそこかしこに見られました。気温30度を超える本格的な夏の日差しの中、多くの方に会場に足を運んでいただいたことに感謝いたします。
 

本イベントを地元でつながるきっかけに
来場者に対するアピールだけでなく、ブースを並べた出展者同士の交流や情報交換なども見られました。今回のイベントが、大東における新たな人のつながりや、活動の輪の広がりといった、まさに地域主体のまちづくりのきっかけとなり、大東市での地域包括ケアの盛り上がりに、間接的に貢献できたのであれば幸いです。

 

            

 


 

最後に

このたび、ご来場いただいた皆さま、ご協力くださった関係者すべての方々にお礼申し上げます。誠にありがとうございました。
 

今後も健康寿命を延ばすまちづくりの主役である住民の皆さまに対して、KAWAMURAグループは大東市の一員としてできることを、ともに考え、実践してまいりますのでよろしくお願いを申しあげます。         
                                        
                                                 【取材】 スイッチオン: 平野亜樹

                                                   

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