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 明日を創る一歩

セラピストは “リハビリの先生”ではなく、「ベストパートナー」「nice buddy」 (信頼できる相棒)

清塚 顕 KiyoリハビリPROS代表・理学療法士

2017-06-05

『誠実であったか、言動に恥じる事はなかったか、気力は充ちていたか、セラピストとしての能力はそれに乗りかかる自分の生き方があっての事であると思いました。』(文中抜粋)

退院後のリハビリの重要性


皆さまこんにちは、私は奈良市にあります「KiyoリハビリPROS」というリハビリ特化型デイサービスの代表清塚顕と申します。

 

私は以前一般病院で10年ほど勤務しておりました。その病院では急性期や亜急性期の患者さまたちのリハビリを経験させていたきました。退院されて回復期病院に移られる方やご自宅に戻られる方を見るにつれ、私は患者様方がその後どのような生活をされているのか、自宅に戻れられてからのリハビリはどうなっているのか、回復は続いていくのか・・、「この目で確かめたい。」そう思うようになりました。リハビリ開始初期の頃は病院でのリハビリが主だと思います、患者さまのその後の人生を考えると自宅に戻られてからもリハビリの重要性は変わらないと思いました、どういった生活を構築するのかでその先の人生が大きく変わるのではないかと思ったからです。

 

当施設のリハビリと私たちが提携しているクリニックの訪問リハビリ両方を利用されている利用者さんから、急性期・回復期病院でのリハビリ、退院した後のリハビリについてインタビューをさせていただく機会を得ました。リハビリに対しての思いやセラピストに対しての気持ちなど貴重なお話を聞かせていただいております。よろしければ一度読んでいただければ幸いです。(http://kiyo-pros.com/interview/)
その中で特に印象深かった言葉をとりあげて私が感じたことをお話ししたいと思います。


 

 

最強のリハビリチーム

「最強のリハビリチームを作っていただきました」(ご家族様)
 

野田様の退院が決まった時にご家族は「どうすれば退院後も効果的なリハビリが継続できるか?」を考え即座に行動に移されています。リハビリを中心とした生活設計をケアマネージャーに相談し、その思いに応えられる訪問リハビリ、デイケア、デイサービス、訪問介護のスタッフが集結しました。


入院中から何度か集まり方向性を確認し、役割分担を話し合うことができたので退院後に活動量の低下を起こすことなく、リハビリ中心の新生活の構築にエネルギーを注ぐことができました。介護保険下のリハビリは多くの場合様々な事業所のサービスが組み合わさります。属する組織は違えど、利用者様のためにそれぞれの役割に全力を尽くしチームにならなければなりません。


リハビリとはセラピストも介護も看護も全員で行う総力戦なのだと、最強チームを作って欲しいという言葉に改めて気付かされました。


 

入院中のリハビリの様子

訪問リハビリにて

長いトンネル

「あなたに任せますから頼みますよ」(野田様)
 
「まかせてください!」
(担当セラピスト)


これは当施設と訪問リハビリでの担当セラピストに野田様が初めて対面した時おっしゃった言葉と、それに対するセラピストの言葉です。当時の気持ちを担当のセラピストに聞いたところ、「野田さんにとってすぐには結果の出ない長い挑戦になることが予想されました。とにかく自分の仕事にベストを尽くすことに集中しようと思いました。」と語っています。


その予想通り、野田様のリハビリには目に見える結果がなかなか出ない日々もありました。担当セラピストは言います、「リハビリは時として暗闇の中のトンネル掘りの様な瞬間があると思います。掘っている最中は今どこまで掘っているか分かりにくい。もうすぐ外に繋がるのか、それともまだまだなのか。前進しているか後退しているのかわからなくなる時、安定感を失いそうな時こそセラピストは俯瞰して現状を見て達成度を伝え理解してもらう事が大切だと思います。もう少しで何らかの結果が出そうなのに、そこであきらめてしまうのは残念ですから。」

訪問リハビリの様子

旦那様自作の起立台

Be a Buddy

 
「理学療法士はベストパートナー、信頼して好きになることが大切です」
(野田様)
 
「母はnice buddy (信頼できる相棒)になれるかどうかが大切と考えているんです」(ご家族様)
 

「セラピストとはどういった存在ですか?」という質問に対していただいた言葉です。“リハビリの先生”ではなく、「ベストパートナー」「nice buddy」とおっしゃっています。


この言葉を聞いた時、胸にズンと響きました。何が響いたのか?自分はこの言葉にふさわしい姿勢で仕事ができているか、改めて考えたくなる言葉だったからです。—信頼して好きになりたいー、困難な挑戦を一緒にするのです、利用者様や患者様からすれば当然の気持ちだと思います。


ただリハビリのテクニックを駆使すれば良いというものではありません。誠実であったか、言動に恥じる事はなかったか、気力は充ちていたか、自分自身の態度で相手の反応は大きく変わります。セラピストとしての能力はそれに乗りかかる自分の生き方があっての事であると思いました。なんだか抽象的になってしまいましたが、そういった事に気付かせていただいた言葉でした。


 
 
 
 
 

訪問リハビリにて

Try & Error


患者さんにとって安全で効果が期待できそうな器具や考え方は、業界内で前例がなくても積極的に取り入れるようにしています。(担当セラピスト)
 

KiyoリハビリPROSや訪問リハビリの根幹を成す考え方の一つに「Try&Error」というものがあります。スタッフには「前例がないから」「教科書にかいてないから」そういった事は忘れて欲しいと言っています。


安全で可能性がありそうな事はとにかくやってみる。利用者様の貴重な時間を使ってリハビリをするので、期待したような効果が出なかった時は大変申し訳ない気持ちになります。しかしただでは転ばずその失敗から次に繋がるアイディアの種を拾うことを心がけています、実を結ばなかったアイディアも違う場面で生きてくる事が多いのです。後から振り返ると大したことないアイディアでも、それを形にするのに相当のエネルギーを使っています、その度にアイディアを形にする筋力みたいなものが鍛えられていると思います。


普段セラピストは考えに考えてリハビリを行います、でも現場では結果がでるか50:50の場面もあります。そんな時少しでも可能性を高めるための方法があるなら、患者様や利用者様の了解を得たうえでチャレンジする必要があると思います。


  
   

 

 

 

 

 

 



  屋外にて歩行トレーニング


 
 

KiyoリハビリPROSで使用していたHAL

リハビリの可能性を信じる

我が子は困難を乗り越えたんです。「私だって乗り越えられる」と思っていました(野田様)
 


実は野田様は40年ほど前に障害を抱えられた息子様のために九州大学や多くの方の協力の元、養護学校教員のためのリハビリ教育プログラムを整えられたご経験があります。40年前はリハビリという言葉や考え方は世の中に広がっておらず、リハビリを受けられる場所がとても少なかったそうです。制度や場所が無いなら自分たちで作る、その思いに多くの方が賛同し活動が広がっていきました。


当時その活動を形作った方々の開拓者精神に心から敬意を表します。リハビリを行い息子様が自らの足で歩けるようになった事が、野田様にとってリハビリの可能性を信じる大きな柱になっています。野田様のリハビリに対していつも前向きな姿勢の根底には、このような出来事があったのです。



患者様や利用者様を目の前にした時、病気や障害をかかえられた後のことだけでなく「今までどのような人生を送ってこられたのか」に目を向けたいと思います。それがリハビリのプロセスのどの部分に影響するか分かりませんが、私たちセラピストは必ず知っておかなければならないような気がします。
 

今回利用者様とご家族様へのインタビューを通じて、リハビリに対しての思いをお聞きすることができました。新しい視点で見るきっかけを頂いたことや、もしくは普段無意識のうちに大切にしていたことに改めて気づかせていただけたことなどとても貴重な機会となりました。

 

相手の思いを受け取りそれに応えられる自分でありたい、成長していくためには自分の生き方と技術や知識が試されている、良い仕事に就いたと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました、皆様にとってのリハビリを様々な立場で振り返る一助になれば幸いです。
 

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KiyoリハビリPROS

奈良市内にあるリハビリ特化型デイサービスです。「Try&error」を信条とした理学療法士や作業療法士が行う個別療法や、最新のリハビリの知識をいかにわかりやすく楽しい形にできるかにこだわったエクササイズなど、良いものは徹底的に取り入れ新しいリハビリの形を発信しています。

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KiyoリハビリPROSにて、左手にはミューロソリュージョン使用

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