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パシフィックニュース

PHP認定講習が伝えるシーティングの在り方

車椅子/姿勢保持

PHP認定講習が伝えるシーティングの在り方

?安楽な姿勢を求めて?

生き活きサポートセンターうぇるぱ高知代表 下元 佳子

2010-10-01

はじめに

シーティングの目的は、良い姿勢で座ることではなく、生活の場面にあった苦痛のない安楽な時間を過ごせることです。「安楽な姿勢」よく使われる言葉ですが、車いすユーザーは、まだまだ楽しく座位で時間を過ごしている方ばかりではありません。この安楽な姿勢はどうやって作るのかを考えてみたいと思います。

安楽な姿勢

活動やリラックスして過ごすなど、座位には、様々な目的があり、それぞれどのように過ごすかで、姿勢は変わります。つまり、食事や作業など活動を目的とする座位姿勢では、上肢が使用しやすいように若干前方へ体重をかけます。リラックスするときには前方でテーブルなどに大きく体を預けるか、後方で背もたれに大きく体を預けるなど、体重がかかる場所が変わります。しかし、いずれにおいても、大切なことは「安心」です。安心できない姿勢では良い活動もリラックスもできません。安楽な姿勢とは、安心できて楽な姿勢、つまり、傾きや崩れがなく安定性があること、苦痛や疲労のない楽な姿勢であることです。

安心できる安定性を得るためには、骨格がきちんと積み上がり、バランスがとれていることが必要です。座位で考えると、骨盤の上に脊椎、その上に頭、これがきちんと積み重なるとバランスを取ることも容易で、最上部の頭や、肩甲帯や上肢などの動きもスムーズになります。逆を考えると、骨格の積み重なりに不安定な傾きがあると、周りで支持している筋肉は、この崩れを止めるために大きな力を発揮しなければなりません。このような筋肉への負担をかけることで、緊張の高い状態が継続し拘縮もさらに強くなります。

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安定した姿勢の作り方

座位姿勢の評価や姿勢修正において、骨盤から評価修正をと言われることがあります。また、静的な臥位などで、各パーツの動きを確認することもあります。それぞれ必要なことですが、まず、忘れてはいけないのは、私たちの体は、頭部・体幹・骨盤・下肢それぞれがつながっており、それぞれが影響し合っているということです。骨盤の崩れですべての不良姿勢が起こるのではなく、下肢の不安定さや、体幹の崩れが骨盤の崩れを誘発したりと原因は様々です。パーツの評価情報を考慮に入れて、必ず座位姿勢において、それぞれがどのように影響して姿勢の崩れを引き起こしているのか全体を確認し修正していくことが大切です。

姿勢を作るときに考えていきたいのは、体を支える基底面と重心の関係です。この重心の落ちる位置で安定不安定が決まります。

まず、体を支える基底面を考えてみます。支える面積、臀部・大腿部・足部、時に上肢も支える面になります。この支える場所をきちんと接地させることはすでにシーティングでは当たり前に言われていますが、まだまだ多くのユーザーは、安定した基底面を提供されていないことが多いと感じています。この支える場所においては、苦痛や褥瘡を予防する観点からも局所圧が高すぎないようにすることも大切です。しかし、安定性を出すためには、単に体の表面が、接地している状態をつくることだけでなく、適度な体重がかかり支えている状態を作り出すことが重要です。とくに、大腿部の近位部から中枢部までは重要で、ここに体重がかかることで足部へも体重がかかりやすくなります。さらに、この姿勢がとれるようになると、座位姿勢だけなく、移乗時などに臀部から足部への体重移動がスムーズになることをよく経験します。逆に大腿部への体重負荷が不十分であると、後方、背面に体重がかかるようになり、背に大きく寄り掛かった姿勢になり、骨盤を後方へ倒し、滑り座位を助長させます。さらに後方へ体重のかかる座位姿勢ばかりを日常的に継続すると、咀嚼や嚥下に関する筋の働きが悪くなり、機能を悪化させやすくなります。

座面の角度を考え、形状を体にフィットさせることは重要ですが、それだけでは、体重はしっかり座面にかかってきません。座面に体重をかけるためには背の角度、形状が重要になります。この両者のよりよい関係で安定した支える土台ができます。背の形状は脊椎が弯曲しているため通常でも平面的な背バックでは、よりよい支持面にはならず、疲労しやすくなります。ユーザーによっては支える力が無いために、前後、側方など弱い部分が弯曲します。脊椎が弯曲すると、単に一方向に崩れが起きるわけではなく、体の左右上下で側方や前後方向で、凹凸は3次元に起こってきます。この弯曲を起こさないためには、基底面の中に重心が落ち安定することを考慮しながら、体幹のどの部位をどの方向にサポートするかを考えて、背のアライメントを整えます。一枚張りの背バックや単に前後方向に凹凸をつけられるだけでなく、細かく調整ができることが理想です。安定した姿勢を作ることによって安楽な姿勢が出来上がります。

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車いすシーティングセミナーご紹介

姿勢保持を目的とした、車いす用バックサポートシステム「V-trak」(PHP社)を取り扱う上で必要となる知識と技術を獲得していただくための、車いすシーティングセミナーを全国で開催しています。受講対象者を「セラピスト」・「座位保持装置販売に携わられる方」などとさせていただいております。内容は、前半に外部講師をお招きして、車いすシーティングの基礎知識講習とし、後半にV-trakの基本的な取り付け方法から実際の調整方法までの講習を行っております。

プログラム
9:30~10:00 受付
10:00~12:00 車いすシーティングの基礎
12:00~13:00 昼 食
13:00~16:15 V-trak基本的取り付け方法・V-trak調整方法
16:15~16:30 質疑応答

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