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パシフィックニュース

VOCA「リンゴ」の事例報告(1)

AAC(コミュニケーション)

VOCA「リンゴ」の事例報告(1)

マーケティング課AAC推進係 藤井 聡

2011-01-01

● パシフィックサプライの取り組み

今まで、パシフィックサプライは、VOCAの販売先として、主に肢体不自由児施設と関わって参りました。スイッチ部分が大きい「ビッグマック」や、外部スイッチを使い、スキャンにあわせて使うことができる「メッセージメイト20」などは、スイッチ操作が難しいお子様にも使っていただきやすい商品でした。今回「リンゴ」の取り扱いを始めるにあたって、今まであまり関わることのなかった、発達障害の方や、知的障害の方に、新しい価値を提供できるのではないかと考えました。今回、その取り組みのひとつとして、「リンゴ」のデモ機を無料でお貸し出しし、ご家族や学校の先生に、どのようにお子さん達に使っていただけるかを試していただきました。今回は、皆様からいただきました、「リンゴ」を使った事例をご紹介させていただきます。

● リンゴとは

まず、携帯用会話補助装置のVOCAである「リンゴ」(エーブルネット)の紹介をさせていただきます。「リンゴ」は、8つのメッセージを録音することができる、コミュニケーションエイドです。同じように、複数メッセージを録音することができるVOCAとしては、今まで「スーパートーカー」や「VOCAフレックス2」などがありましたが、それらの機器に比べ「リンゴ」は、携帯性や操作性の高さで優れています。

● 事例① Aさん

都内の特別支援学校に通っていらっしゃるダウン症の方のケースです。機器の利用当時は、中学部の3年生でした。それから、他の学校の高等部に転校されたため、リンゴを使った期間は約半年間でした。使い始めると、すぐになれて楽しむことができたと、当時の担任の先生がおっしゃっていました。
そちらの学校では、別のコミュニケーションエイドを用意されていましたが、リンゴの扱いやすさに着目されて、Aさんには「リンゴ」を使ってもらうことになりました。
主な利用場面は、朝礼でのあいさつです。「リンゴ」のボタンに、クラスメイトのそれぞれの名前を録音しておき、出席をとります。まわりの生徒が、メッセージにしっかり返事をしてくれるので、「リンゴ」を使っているAさんもその反応が面白く、非常によろこんで積極的に活動を行っていました。
また、朝礼の時間、今度はAさんが名前を呼ばれた際に返事をする練習としても、「リンゴ」を使っていました。
Aさんは発声がほとんどできないので、元々、同様の練習をしていたのですが、「リンゴ」からは、録音されたメッセージが出力されるので、他の人が呼びかけて練習するよりも、返事をする確率が高かったと、担当の先生からコメントをいただきました。人の声で直接練習をすると、毎回発声に微妙な違いがあるため、その差が気になってしまい、答えるのが難しかったのではと、その先生は考えられていました。
写真のように、「リンゴ」の中に好きな音楽を入れておいて、やり過ごさなければならない時間(電車を待つ時間など)を過ごすという使い方もされていました。好きな時に、好きな音楽を、簡単な操作で聞くことができるため、今まで、そういった時間にすることが多かった指につばをつけてしまうなどの行為が少なくなったとおっしゃられていました。
また、音楽の授業でも使われていました。ご本人には、「あー」や「はー」という発声があったため、その言葉を「リンゴ」の中に録音しておき、発声の促しとして使っていたとのことです。自分の声が、リンゴから出てくると、一緒に声を出して、喜んでいたとのことです。
その他、自発的に活動に参加するようになったり、自信をもって他の人と関わるようになったりといった効果があったと、担当の先生からお言葉をいただきました。今まであまり参加することの出来なかった、朝礼の挨拶係や音楽の時間に、自分の「言葉」をもって、臨めるようになったことが理由ではないでしょうか。

事例①-1

事例①-2

● 事例② Bさん

こちらの養護学校では、食後歯磨きの際の事例です。右の写真は、教室の一角で、歯磨きをするコーナーを写したものです。このようなコーナーは、他の学校でも見かけることがあります。こちらでは、写真のように、シンボルを使って歯磨きの手順を示しています。
今回は、Bさんに、この歯磨きの場面で「リンゴ」を使っていただきました。写真のシンボルには、1から10まで数字が書かれています。この数字は、このシンボルのとおりのやり方で、10秒間歯を磨いてくださいということを示しています。この教室の生徒の多くは、自分で10秒を数えることが出来ませんでしたので、先生が代わりに10秒を数えていました。
今回、「リンゴ」を使ったBさんは、給食を食べるのが非常に速く、一人で先に歯磨きをしにいくことがありました。そこで、リンゴのメッセージに、先生の声で、10秒数えるメッセージを入れておき、その言葉を聴いて、Bさんが一人で歯磨きができるようにされたのです。
はじめは、「なぜ先生の声がこの箱の中から聞こえるのだろうとか?」、「出張にいっていないはずの先生の声が聞こえてくる」と、びっくりされていたようですが、2週間ぐらいこの活動をすることで、最後はBさん一人で、歯を磨くことができるようになったということです。

事例②-1

事例②-2

事例②-3

● まとめ

今回、さまざまな方に、「リンゴ」を使っていただき、非常に興味深い事例をいただくことができました。パシフィックサプライでは、今後も現場でVOCAを便利に使い続けていただける情報の発信に努めて参ります。現在、「リンゴ」の無料貸し出しキャンペーンを行っております。
これから、新しいVOCAの導入を検討されている方がおられましたらキャンペーンをご利用いただき、「リンゴ」の価値を見出していただければと存じます。

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