パシフィックニュース
「Dr Anton Johannesson 来日セミナーに参加して」
義肢
海外情報
熊本総合医療リハビリテーション学院
笹川 友彦 (義肢装具学科主任講師)
2019-07-16
Systematic Procedure in Lower Limb Amputation ~The Scandinavian approach~
5月15日(水)、博多駅前のTKPガーデンシティ博多で開催された「Systematic Procedure in Lower Limb Amputation ~The Scandinavian approach~」(下肢切断に対する系統的手法 北欧的アプローチ)セミナーに参加した。講師はオズールスカンジナビアに所属し、スウェーデンで自らの企業も経営する義肢装具士アントン・ヨハネッセン氏であった。
セミナーは座学と実技で構成され、座学ではスウェーデンの現状と切断に関わる統計データについて、下腿切断の標準的治療(サジタルフラップによる切断術、リジッドドレッシング、ライナーによるコンプレッション療法、ダイレクトソケット製作)の及ぼす効果など、スウェーデンにおける義足事情について報告があり、実技としてダイレクトソケット製作の実演が行われた。
義肢装具士アントン・ヨハネッセン氏
スウェーデンにおける義足事情
セミナーの内容で、印象に残ったことを以下に示す。
チーム医療の更なる連携
今回のセミナーに参加して、医療もガラパゴス化しているのかと不安が湧いてきた。特に教育体系において国立大学で養成される義肢装具士は、医師や看護師と共に基礎科目を受講するため、チーム医療として対等な立場で患者さんに接し、連携がとりやすく横のつながりが密であるというのが特徴的であった。そのため、医療データを共有して蓄積し、チームとして医療費軽減に取り組む環境が整っている。
データ管理については、1998年~2017年(20年間)で平均して2243人/年の切断症例があり、内訳は下腿切断48%、膝離断13%、大腿切断29%。切断から生活復帰までの医療費は平均(ユーロ) €80,000/人、112名の患者を8年間追跡調査では、医療費に占める義足の割合は6%と、すぐにデータを拾うことができ、これら統計から国の医療費削減には6%に着目するよりも早期治療・早期退院が重要な課題であると判断された。そのために標準化されたシステムを構築し、均質な治療が提供されるよう30年かけて国内に浸透させ、国が認めるシステムに成長させたという現状は、日本では成し得ないものだと感じた。
「アウトカムを向上させるには、全てのプロセス・内容を改善することが必要であるが、関わる全ての職種による連携が欠かせない。連携が切断インシデント低下、切断レベルの低下、入院期間の短縮、最適な義足提供、自立した生活の継続など医療にかかわるトータルコストダウンと、これらの文書化した記録によりエビデンス構築へとつながる」との話は印象的であった。患者さんファーストの治療・リハを進めていくためにも、チーム医療の更なる連携が求められるのではないだろうか。
講師のアントン氏は今回の講義内容について、今年10月、神戸コンベンションセンター(日本・神戸)にて開催される第17回国際義肢装具協会(ISPO)世界大会にて発表されるとのことであった。興味のある方は聴講、または直接会場で質問してみてはいかがだろうか。
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