パシフィックニュース
児童生徒一人一人の活動と姿勢作りについて
車椅子/姿勢保持
リハビリテーション
―校内の体制作りと外部専門家の活用―
沖縄県立泡瀬特別支援学校
自立活動部 教諭 澤岻 圭祐
2020-02-17
本校の概要
本校は、沖縄本島の中部に位置し、昭和54年に沖縄整肢療護園中部分園(現沖縄中部療育医療センター)内に、県立那覇養護学校の分教室として開設され、昭和60年に県立泡瀬養護学校として本校化された肢体不自由特別支援学校である。
児童生徒の実態と姿勢について(これまでの経緯と課題)
現在では、小学部から高等部まで100名余りの児童生徒が在籍し、準ずる教育課程から自立活動を主とする教育課程まで幅広い実態の児童生徒に教育を行っている。また、その中には医療的ケアを必要とする生徒(医療的ケア周辺児、センター入所ケア児を含む)が約半数と、年々児童生徒の障害の重度重複化が進み、それに伴う教員の専門的知識の向上や、安心安全な校内支援体制づくりが求められている。特に、「姿勢作り」については身体に障がいを有している児童生徒にとってはとても重要である。
しかし変形や拘縮等が強い児童生徒、気管切開や胃ろうの留置等で管理が必要な医療的ケア児については、体を動かすことに対し不安と困難さが生じ、同一の姿勢で過ごすことが多く、腹臥位等の排痰姿勢をとることが出来なかったり、SPO2や心拍などのモニターの数値へ注意をはらうあまり主体的に授業に参加することが出来ない等の問題が生じていた。
さらに、本県における医療的ケア研修会の反省等でも、職員に対して体調の変化にいち早く気づき対応できる視点やポジショニングスキル等の習得をしてほしいと医療者側からの意見もあがったが、体を扱うことは医療の領域に踏み込んでいる気がして怖い、専門ではないからわからないなどの声も聞かれた。
そこで、本校では一昨年度から毎年、専門の外部講師を招き研修会を実施し課題解決に取り組んでいる。また、本校の教職員だけでなく保護者やデイサービス等の事業所、近隣の肢体不自由特別支援学校とも連携を図りながら取り組んでいる。
本校が開催した研修会の内容
【講師】 杉本 昌子 氏(パシフィックサプライ株式会社)
【概要】
・肢体不自由児の困難さと姿勢
2017研修会1
2017研修会2
【講師】 下元 佳子 氏(ナチュラルハートフルケアネットワーク代表理事)
【概要】
・活き活きと過ごすための姿勢作り
2018研修会1
2018研修会2
どの研修についても参加者からは「すごく勉強になった」「姿勢作りについて考える必要性を感じた」などの意見があがっていた。特に、実際に児童生徒を見ていただきながらアドバイスをいただいたことで担当する職員からは好意的な意見が多くあげられていた。
しかしながら、毎年同じ児童生徒の姿勢作りについてのインテークを要望するなど「引き継ぎ」や「継続性」という課題が浮かび上がっている。これらの要因は職員の転勤等による入れ替わりや初めて肢体不自由校に勤務する職員の増加等により、経験値や専門性に差が生じていることはもちろんのこと、自立活動部など校内体制についての課題も大きいと感じている。
今年度の取り組み(課題解決に向けて)
これまでの2年間の研修では「(姿勢についての)担任の困りをそのまま外部の専門家へ」という形が多く、校内で検討したり改善するような体制をとることができなかった。そうなってしまうと毎年同じ児童生徒を対象に、同じことを質問するような形になることも多く前述のような状態になってしまい、学校としての組織力の向上に結びつきにくい状況に陥りやすいと考えられる。
また、そのような体制では、「相談することができた児童生徒」については適切な情報やアドバイスを得ることができるが、その他の児童生徒についての情報を渡していくことが難しい。
そこで、今年度より養護教諭と連携し、「姿勢等について気になる児童生徒」の日頃の姿勢等について担任の困りを探りながら「担任・自立活動部・養護教諭」の3者で児童生徒の姿勢について取り組んでいくことにした。その後、その取り組みについてパシフィックサプライ株式会社の杉本昌子氏にご助言をいただくように計画した。
そのような取り組みを行うことで下記の体制ができると考えた。
①研修の場だけでなく、日頃から取り組むことで教職員の資質向上を図る
②職員間で日頃から相談,情報共有できる体制を作る
③自立活動部や養護教諭が入ることで特定の児童生徒だけではなく、多くの児童生徒の姿勢作りに活かしていく
医療的ケア(吸入)時の伏臥位
排痰時のポジション
助言を受けながら支持面を調整
側臥位も取り入れながら調整
今回の研修では、これまで職員が実践していることや取り組んでいる内容を質問しながら進めたことで職員の理解や取り組みの定着も進んでいると感じた。また、排痰がスムーズにできるようになったことで教師も積極的に伏臥位や他の姿勢を積極的に取り入れるようになっている。
現在は午前、昼食前、午後と活動の合間に1回ずつ伏臥位姿勢を取り入れるようになっており、児童の健康状態にも変化が現れ始めている。
終わりに
今回は排痰等を目的にした姿勢作りについての紹介を行った。それ以外にも、体圧の分布を実際に生徒に見せながら除圧等の方法の指導を行うことで卒業後のセルフケアの意識作りにも取り組んでいる。
ただ、これらの取り組みはあくまでスタート段階である。もちろん姿勢とは24時間365日及び中・長期的なスパンで考えていくべきものであり、学習等の「活動」と切り離して考えることはできず、その点についての取り組みはまだまだ不十分で今後取り組んでいく必要がある。ただ、校内で児童生徒,教師の困りを拾い上げ取り組むことができたことは本校にとって大きなことだったと感じている。
今後は姿勢作りだけでなくVOCA等の支援機器等の活用も含め組織としてこれからも継続、発展させながら今後も取り組んでいきたい。
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