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パシフィックニュース

VOCAを用いた就労事例(1)

AAC(コミュニケーション)

就労支援

VOCAを用いた就労事例(1)

グループ事業開発本部 松井 由起子

2011-04-01

Make It Happen!

弊社が2010年4月より開始した障がい者就労支援の取り組みについて、開始の経緯や就労事例を2010年12月12日、ATACカンファレンスにて発表致しました。その内容を2号に渡って紹介させていただきます。

就労支援の取り組みを開始した経緯

弊社では多種多様の支援機器を販売し、ご家庭や学校、療育の現場において多くの方々に活用いただいています。しかし、学校から社会へ移行した後の働く現場では、私たちの支援機器は障がいを持つ方々をどのように「支援」できるのでしょうか。

私たちは就労現場での経験や知識が全くなく、その疑問に答えることができませんでした。

より多くの機器が普及することを通し、「お客様のQOLの向上」という経営理念を実現したい。そのために就労現場での機器活用についてノウハウを蓄積し、「将来、企業が支援機器を導入し、障がいを持つ人々が働きやすくなる社会へ」という長期目標を立て2010年4月に障がい者就労支援の活動を開始しました。まずは、私たち自身が、障がいを持つ人々と共に働き、支援機器の可能性や障がいのある人々が必要とする職場環境について学ぶことを第1段階の取り組みとしました。

業務内容を決定するまで

支援機器の中からVOCAを選択しました。社内にて、重度の障がいを持つ人が取組み可能な、VOCAが活用できる業務のアイディアを募集し、VOCAの活用度、実現性、見込める効果などを判断し、広報部の会社見学説明の業務に決定しました。
従来、会社見学説明は1名体制で行っていましたが、トイレや個別の質問等でツアー全体への説明が滞るという課題がありました。説明専任者と見学ツアー全体をアテンドする者の2名体制で実施すれば会社見学の品質の向上も見込める、と考えました。

アルバイト募集と打診まで

2010年4月に人事採用の社内的な承認を終え、6月から業務を開始することを目標としました。「弊社へ通勤ができ、会話補助装置を使用し、コミュニケーションが可能な方」ということを条件にし、募集要項を作成し、社内の業務要領の改訂、機器の手配など着々と準備を進めました。

しかし、私たちの一番の懸念は「この業務に適した人がどこにいるのだろうか・・」ということでした。支援学校? 作業所? ハローワーク?一体どこに行けば出会えるのか、と悩んでいたところ、5月に開催した「VOCAで遊ぼう」というイベントに近隣の障がい者活動センター職員の方から参加のお申込みをいただきました。

イベント後にVOCAをお見せして業務内容を説明したところ、「1名この人は適任かもしれない!という人がいます」というお返事をいただきました。それがアルバイト採用となったAさんとの出会いの始まりでした。

採用決定とOJT

5月下旬、障がい者活動センターにてAさん・Aさんのお母様・センター職員が同席した中で、改めて業務について説明・打診しました。Aさんは、会話はできますが、発話において聞き取りにくい点があり、また長距離を歩くことは難しい、という身体的な障がいがある男性でした。ご家族は「仕事は難しいのでは・・。会社に迷惑をかけてはいけないし・・」と最初は消極的でした。
しかし、Aさんの「人が好きで、意欲に溢れた、明るい性格」は会社案内の説明員に適任でした。最終的に、ご本人の「やってみたい!」という意欲を確認し、センター職員の方がサポートすることを条件に、ご家族も納得されました。

6月に社内で面接、採用が決まりました。業務の開始前に、社員の家族をお客様にしてOJT(実務トレーニング)の会社見学ツアーを実施しました。そのOJTではお客様には満足いただけましたが、以下3つの課題が挙がりました。
 

  1. 機器を押すタイミングやどの場所で押したらいいのか分かりにくい(本人より)
  2. 車いすで案内するには通路の広さが十分でない(広報部員より)
  3. 介助用車いすに乗り、広報部員がその車いすを押して案内していたため、本人が主体的に会社案内をしている印象がしない(他の社員より)

 

課題の解決 業務を開始する前に、これらの課題の解決を試みました。

課題1)機器を押すタイミングや場所

お客様へ説明する場所を確定し、車いすに座った高さから見やすい位置に表示番号を貼りました。使用するスーパートーカーには説明場所と同じ表示番号を付けました。

説明場所の確定と番号表示

説明場所と同じ表示番号を機器へ貼付

課題2)通路の広さ

車いす販売専門スタッフに実際に車いすと機器を使いながら会社見学ルートを走ってもらい、現場検証を実施しました。
通路幅が狭い箇所や、車いすがUターンする場所は、工場スタッフにスペースを空けてもらい、十分な場所を確保しました。

現場検証1

現場検証2

課題3)本人が主体的に会社案内をしている印象がしない

介助用車いすをやめ、電動車いすを使うことを本人へ提案しました。電動車いすは本人にとって初めてでしたが、少しずつ練習し、非常にスムーズに電動車いすで案内できるようになりました。また使用する電動車いすにスーパートーカーを安定して設置できるように専用テーブルも製作しました。

次号では、会社案内業務の具体的な実施報告に加えて、軽作業の取り組みや私たちの気づきについて紹介させていただきます。

介助用車いすから電動車いすへ

専用テーブルの製作