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ダイレクトソケット -オズールの下腿義足ソケット製作技術と臨床例-

義肢

ダイレクトソケット -オズールの下腿義足ソケット製作技術と臨床例-

パシフィックサプライ株式会社 事業開発本部 事業推進部 橋本 寛(義肢装具士)

2021-03-01

革新的な下腿義足ソケット

適切に製作されたソケット、適切に選択された義足足部を、適切なアライメントにて組み立てた下腿義足が、義足使用者の歩行の再建、日常生活のサポート、生活・人生の質の向上に寄与します。

特にソケットは重要で、義肢装具士が苦心・工夫をこめるところです。
現在主流となっているソケットは、シリコーンライナーを使用するもので、確実な懸垂、断端の支持性向上、快適性の維持などの利点があります。

通常のソケットとダイレクトソケットとの違い
通常のソケットは、石膏ギプス包帯にて採型し、義肢装具士が工場でモデル修正し、プラスチックを成型し製作します。採型から仮合わせまで1週間程度の時間がかかり、廃棄物が出るため専用の設備が必要でした。

ダイレクトソケットとは、オズール社の下腿義足製作技術で、アイスロスシリコーンライナーを使用したTSB(Total Surface Bearing全面接触)ソケットがわずか3時間で製作できるものです。技術を習得し、機材を持ち込めば、病院のなかですべての作業が可能で、午前中に採型し午後試歩行することさえ可能となります。

 

ダイレクトソケットの利点

1.石膏モデルが不要で、環境にやさしい。
 採型で汚れることも、廃液の処分に特別な設備も必要なく、また大量の廃棄物とも無縁です。

 
2.迅速な製作が可能で歩行練習に有利
 わずか3時間で立位・歩行が可能となります。製作の待ち時間が不要でその分早期リハビリテーション、早期退院を強力にサポートします。
 


3.優れた適合が得られる
 アイスロスシリコーンライナーと加圧採型治具を使用したHydrostatics理論によるTSBソケットは、シリコーンライナーの考案者O.クリスティンソンによるコンセプトに基づいています。スウェーデンでは標準的な下腿切断リハビリテーションのアイテムとして多くの切断者をサポートしています。

 
 
4.あらゆる懸垂方法に対応している
シリコーンライナーでおなじみのピン懸垂-ラチェット、クラッチ、スムース-が使用できます。クッションライナーと膝スリーブを使用した吸着式も問題なく、シールインも使用可能です。さらにユニティにも対応できます。最新のシールインXロッキング(ピン+シールイン)まで!対応しているのです。しかもほとんどの懸垂方法は互換性があり、ねじを緩め付け替えるだけで容易に交換・変更できます。ソケットひとつでありとあらゆる懸垂方法を試すことができます。これは現時点ではダイレクトソケットだけの大きな利点です。

ダイレクトソケットに必要な3つのもの

ダイレクトソケットの製作には、ダイレクトソケット材料キット、キャスティングライナー、加圧採型治具(アイスキャスト)が必要です。



製作手順動画(早回し)
まず断端の評価を行い、適切なサイズのキャスティングライナーを装着します。
必要があれば、骨突起部に除圧パッドを装着します(完成時にとりはずします)。
シリコーンインサレーションシートにて断端を被覆し、ソケットアダプタ付き積層材を断端上に固定し、2枚目のシリコーンインサレーションシートをかぶせます。
遠位アダプタから2液混合のポリウレタン樹脂を注入し、アイスキャストを装着し、所定の圧力で加圧して12分待つと硬化します。
あとは取り外してカットし、縁を磨いて組み立てるだけ。
わずか2~3時間で装着・歩行が可能です。
極めて短時間で迅速に適合させることが可能ですので、製作の待ち時間を大幅に短縮することができます。

ダイレクトソケットの製作ポイント

1.アイスロスシリコーンライナーの使用
ライナーを装着することで、断端の軟部組織に適切な圧力が加わり、硬度を増し、支持性を高めます。ピンや吸着式など、多彩な懸垂方法を可能とし、ピストニングを最小限度に抑えます。またシリコーンの硬度を選択することで、断端の保護や快適性を優先したり、逆に支持性や力の伝達を最大限に発揮したり、最適なものを選択することができます。
 
2.加圧採型治具の使用
空気圧を利用した加圧採型法を用います。断端の軟部組織が圧縮されたり、また移動したり、適切な形状に形作られていきます。それによって断端全体での支持性を増したソケットが製作できます。このプロセスは断端の上で行われ、直接ソケットが製作できます。考案者はあのオズールクリスティンソン。シリコーンライナーのグローバルスタンダードとなったアイスロスの考案者でもあります。彼はこの技術を“Hydrostatics”(静止水力学)の応用としています。断端全体で支持する理想的なTSBソケットを製作することができます。
 
3.三種類のマテリアル
ポリウレタン樹脂を使用し、補強材としてカーボン、グラスファイバー、バサルトファイバーの三種類から選択することができます。切削性がよく、ハンドジグソーなど手持ちの工具でソケットの製作・可能が可能です。耐久性はISO(国際標準化機構)の規定をクリアしており、体重166㎏の方までご使用いただけます。

ダイレクトソケットシステムはこちら>>

臨床例

ダイレクトソケットは、スウェーデンの下腿義足リハビリテーションプログラム(SMARTプログラム)に採用されています。国内では、広島大学病院をはじめとして様々な医療機関にて実際に使用されており、たくさんの方々がダイレクトソケットの義足を装着し、自宅へ戻っていらっしゃいます。

よくある質問

適合に問題ありませんか?
国内の臨床例でも、多数の方がダイレクトソケットの義足を使用して歩行練習をされ、退院後も引き続き使用されていらっしゃいます。アイスロスとTSBソケットの適応の方であれば、問題なく使用できます。
 
製作後の修正はできますか?
ポリウレタン樹脂は熱硬化性であり、製作後に加熱して大きく形状を変えることは困難です。ラミネーション時に除圧パッドを使用することと、トリムラインで対応することが基本となります。ただし、訓練用義足の場合は、ほとんど断端が細くなることで不適合になりますので、その場合は断端袋の使用や、本義足を製作することで対応できます。
 
断端に痛みがある場合でも使用できますか?
切断術後に断端の痛みを訴えるケースは珍しくありません。どのソケットデザインであっても少しずつ荷重していくことで徐々に適応していくことがほとんどです。基本的にはTSBソケットですので、部分的に大きな除圧を必要とするケースでは使用は困難です。
 
ソケットに耐久性はありますか?
体重166㎏までの方であれば使用できます。最長で1年使用されたかたがいらっしゃいましたが、破損などはみられませんでした。

 

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