パシフィックニュース
orfit社 スプリント材インターナショナルトレーニング
装具
海外情報
パシフィックサプライ株式会社 工藤 ゆかり
2011-07-01
1.研修報告
2月23日・24日の2日間に渡り、オルフィット社で行われたオルフィット社スプリント材料インターナショナルトレーニングに参加しました。
オルフィット社はヨーロッパ・ベルギー王国の観光地として有名なアントワープ駅があるアントウェルペン州にあります。管理職と営業マンは20名、工場内のスタッフは30名程と、本社としては小規模の会社です。しかしその事業範囲はヨーロッパ、アジア、北・南アメリカ、アフリカ、オーストラリアと世界中へ拡大しており、代理店はおよそ70社にもなります。オルフィット社は、スプリント専用のシート材料・義足ソケット材料の製造・開発・販売を行い販売先は病院・クリニック、義肢装具製作所、医療機器取扱企業等、多岐に渡ります。その活動範囲も広く、本社でのセミナー活動だけではなく、スプリント製作トレーナーが世界各国の代理店を訪問して、トレーニングセミナーを開催しています。
?本社正面:アントウェルペン州郊外
オルフィット本社工場
工場は本社オフィスの奥にあり、大きく工場、材料保管倉庫、製品保管倉庫、開発ルーム、試験ルームに分けられています。工場では、オルフィットの製品が、何台もの大型の機械によって製造されていました。工場でまず目にしたのが、材料の混合機械です。製品の種類にもよりますが、オルフィットの製品はポリエステル・イソプレン等の80種類もの材質を組み合わせることで製造されます。この材料を熱気が通った配管チューブに入れ加熱軟化させ、2m幅程のシート状に成型します。穴開きタイプのものは穴が開けられ、コーティングシールが貼られます。その後、製品ごとの規定の大きさにカットされ、製品が出来上がります。
シート製造用の機械の他には、あらかじめ製作するスプリント用にカットされているプレカット用の製造機械があります。プレカットとなるシートはそのまま運ばれ、各プレカットの型番によって切り取られ、製品となります。
開発ルームでは、お客様からのフィードバックを基にして新製品の開発が行われています。新製品オルフィキャストもここから生まれました。オルフィキャストはDIP・PIP関節などの小関節に適用のスプリント材料です。以前まではプラストフィットと呼ばれるオルフィットの特性を生かした小型のプラスチックシートが一般的でしたが、通気性の良いものを希望されたお客様がいらしたことから、開発が行われました。
オルフィトランスの材料の一部。これを軟化させ、シート状にする
オルフィキャスト
オルフィット社スプリント材料
オルフィット社スプリント材料は60度から65度の温度で完全に軟化し、モールディングが出来るようになります。60度から65度と低温で軟化することで、火傷の心配も少なく装着者の患部に直接モールディングが可能となり、形状の部分的な修正も、ヒートガンで容易にできるようになります。
また、シート自体に粘着性がありますので、伸ばしても破れにくいといった特徴もあります。モールディングの際にシートを伸張させることで、手や指の関節の形状が正確に取れるようになります。シート自体の厚みは薄くても適合性が高まるため、支持性の高いスプリントの製作が可能になります。また、全シート材料は土の中に埋めると分解される材質のため、環境に優しい特徴も持ち合わせています。
インターナショナルトレーニング
セミナー参加者はオルフィット社代理店のトレーナーが多く、アメリカやオーストラリアなど遠方から来られる方も数多くいらっしゃるそうです。また、トレーナーはハンドセラピスト、作業療法士、整形外科医等、医療関係の資格を持つ方が参加されています。私が参加した時には、バルト三国のラトビアから、それぞれ作業療法士と整形外科医の資格を持つ2名の方が参加されていました。
セミナーは2日に渡って開かれ、1日目のセミナーでは、製品全体の特性・製品ごとの特性・各スプリントの特徴と、スタティックスプリントを中心とした、正しい製作方法等を、2日目ではダイナミックスプリントのモールディング・製作方法を学びました。義肢装具士のMarc Blijさんと医師のDirk Pattynさんがセミナーを進行してくださり、質問にも丁寧に答えて下さいました。
セミナーを通して、フライ返しを使ってシートを取り出す方法や、プレカットや型紙がなくても簡単にシートを切り出せる方法など、現場や日本でのセミナーで生かせる知識やノウハウを学ぶことができました。それだけでなく、私が日本で学んだ独自のオルフィットシートの取扱方法なども伝えることができ、本社のトレーナーの方と様々な情報交換を行うことができました。
また、セミナーを進めていく中で、「手指や手関節等の、上肢の形状を正確にモールディングすることがスプリントを製作する中で一番大事」ということを何回か聞きました。シートの厚みや素材に頼るのではなく、形状が正確なスプリントを作ること、そのためのモールディングの方法に重点を置いているように感じました。医師のDirk Pattynさんは「シートについては形が取りやすい、厚すぎない(薄い)タイプのものを使い、正確なモールディングが行われたスプリントが理想」とおっしゃっていました。日本のセミナーを行う中で、私も同じことを参加者の方にお伝えしたい、と思いました。
手関節固定型スプリントのモールディングの写真
2.国内オルフィットスプリント製作セミナーのご紹介
パシフィックサプライでは、今回ご報告させていただきましたオルフィット社の製品を用いて、オルフィットスプリントの製作セミナーを定期的に開催しております。
プログラムは、オルフィットの材料の特性について、資料と実技を交えながら主に3つの特性について説明していきます。
- 低 温 軟 化…シートは60℃の低温で軟化する。
- 自 着 性… ヒートガンで熱を加えることによりベルト等の付属品が接着する。
- 形状記憶特性… モールディングに失敗しても、お湯に浸せばシート状に戻るため何度でもやり直しが出来る。
その後専門トレーナーによる製作・モールドのデモに移っていきます。
オルフィット製品を初めて使用される医療従事者の方を対象としたベーシックセミナーとなっておりますが、過去に様々なスプリント製品を使用した経験をお持ちの作業療法士や理学療法士、義肢装具士の方にもご参加いただいています。
実習するスプリントは、背側カックアップスプリントやサムポストスプリントを中心に、ご希望に応じて指関節用スプリントや掌側カックアップスプリント、ダイナミックスプリント等の実習も行っています。使用する材料は、新製品オルフィットカラーズやオルフィライトを中心としております。
また、集客型セミナーの他に、病院やリハビリ施設へ訪問し、適時製作セミナーを開催しております。
是非お気軽にご参加ください。
セミナーの様子1
セミナーの様子2
~インストラクター紹介~
工藤 ゆかり 義肢装具士
2010年3月 北海道工業大学医療工学部医療福祉工学科義肢装具学専攻卒業。
2010年4月 パシフィックサプライ株式会社入社。
事業開発本部技術教育事業部所属。
バウアーファインド製品・オルフィット製品担当。
2011年2月 オルフィット本社開催
インターナショナルトレーニングセミナー受講。
インストラクター工藤
3.製品紹介
オルフィットカラーズNS
オルフィットカラーズNSは従来のスプリント材料と違い、赤やシルバー等の、色のバリエーションを幅広く持ち合わせています。新しい選択肢として、是非お試しください。
<特徴>
- NSコーティングによる非粘着性→作業中の誤った接着を防止
- 優れた伸縮性(100%)→美しいモールディングが可能
- 優れた形状記憶性→繰り返しモールディングが可能
- 豊富な厚み・穴の種類→個々のユーザーに適応したスプリントを提供
- 高い引き裂き強度→作業中の破損を防止
- ユニークなメタリックカラー→新しい選択肢として提供
- 低い収縮性→収縮によるサイズの変化防止
- 色落ち防止表面加工→美しい状態で長期の使用可能
- 低い作業温度→熱を加えることで容易に調節可能
<効果>
- 外観が美しいスプリント
- 顧客ニーズに応えられる豊富な種類
- 様々な大きさのスプリントに対応可能
- 全てのアタッチメントとアウトリガーが容易に取付可能(永続的な接着にはNSコーティングを取り外す必要があります)
- 低い収縮性による快適な装着
- エッジのトリミングが容易
関連情報
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