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パシフィックニュース

モーリフト導入から7年後の現在

リフト・移乗用具

モーリフト導入から7年後の現在

社会福祉法人 敬長福祉会
特別養護老人ホーム チアフル遠見塚(理学療法士 小関佳子)

2021-09-15

はじめに

当施設は平成9年(1997年)に開所した長期入所50名・短期入所20名の従来型施設です。
モーリフトを使うことが通常となっている環境で今回のテーマをいただき、改めて振り返って考えてみたいと思います。

現在のリフト状況

導入時と現在のリフト所有数は以下の通りです。

所有数導入時(7年前)現在
モーリフト2台2台
ベーシックシート型スリング6枚14枚
イージースリング頭部あり2枚

導入時は、各階1台での使用でしたが、今年6月下旬から1つの階で2台を使用中(1つの階にリフト使用者が集中するため、移乗動作を効率化)。使用シートはベーシックシートのみです。

リフト使用者は長期入所者11名(うち経管栄養者5名)、短期入所者1名。使用場面は食事時間、体重測定時、レクリエーション(現在は未実施)などの移乗動作時となっています。

リフトの画像です

「モーリフト ムーバー180」 製品情報はこちら

スリングシート保管箱の画像です

スリングシート保管箱

実際の使用場面

昼食時の離床の画像です

昼食時の離床

移乗動作全介助者(経管栄養者、ティルトリクライニング車椅子使用)の移乗、特に昼食時は経管栄養者も離床されるのでスリングシートもフル活用の状態となります。一度夜間の介護職員が少ない時間帯の転倒時にも使用しています。導入時からの希望として浴室での使用がありますが、リフト使用のためのスペース、脱衣室が確保できず現在も使用できていません。

スムーズに導入するために今も行っている取り組み

新入職員への指導の様子です

新入職員への指導

① 新入職員に対し、入職日の午後かできるだけ早いタイミングでのリフト操作指導の実施

指導は新入職員と指導役2名(理学療法士・ケアマネジャーか介護主任)の3名で実施。新入職員のリフト利用者体験後、3回のリフト操作で移乗を実践(約2時間程度)。指導終了後から実際の使用場面を見学し、先輩職員とペアで平均10回程度実践し現場での使用法に問題がなければ1人でのリフト移乗へ移行。この方法は現場からの「早く使えるようになって現場で動いてほしい。」という希望で定着しました。新入職員に役割を持ってもらい1人で取り組める業務として、リフト移乗を習得してもらっています。役割を持つことで業務への意欲向上にもつながっているようです。

離床前のスリングシート装着の画像です

離床前のスリングシート装着

② リフト使用のルーチン化

リフト使用場面、対象者を決める。導入時は理学療法士やケアマネジャー、介護主任等による対象者の選定が主でしたが、現在は現場からの提案が多い状態です。リフト導入初期は移乗が二人介助の方、体重のある方の利用が多かったのですが、最近は小柄でも拘縮のある方、皮膚の弱い方などにも使用しています。食事時間前の離床のためのケアと同時にスリングシートをベッド上で装着するスタッフとリフト操作で移乗を行うスタッフを分けての対応も行っています。

③ 定期的な使用方法・疑問点の確認や聞き取り
研修会(パシフィックサプライからの研修も含む)や職員が日々の業務の中で獲得している使用上のコツや疑問点などを聞き取り、情報収集と伝達を行っています。

7年間を振り返って

第一目標は、負担軽減

リフト導入時は移乗動作の利用者、職員の負担軽減が第一目標でした。そのために職員全員が使いこなさなければならず普及に約1年の期間を要しました。職員の中には「時間がかかる。」「面倒だ。」と言う方や思う方がいたようです。今もゼロではありません。特に導入後のアンケート結果からも、腰痛のない職員や体の大きい職員からは「リフトの有効性をあまり感じない。」との返答が聞かれました。今回振り返るにあたり改めて質問してみましたが、同じ気持ちはまだあるようでした。しかし、「チアフル遠見塚では利用者の移乗の安全性、負担の軽減、職員の腰痛予防を目的としてリフトを使用していこう。」とまとめ役(理学療法士、ケアマネジャー、相談員、介護主任)が同じ気持ちで協力できたことが今に続いていると思われます。そして職員が入れ替わる中でも新しい職員はリフトを使うことが標準的な業務として取り入れられています。

目的から1つの手段に

リフト導入時は使うことが目的でした。そして現在はリフトのある環境の中でどのように生活していただくかを考えるようになり、リフトは手段となっています。当施設ではリフト導入以前にも安定した車椅子座位姿勢をテーマに一人ひとりの身体に適合した車椅子の選定や作製など座位姿勢についての勉強会や取り組みを行っていました。その中で移乗介助量の多い方は車椅子移乗後に職員2人での座り直しが必要でした。しかし、リフトは職員1人で安定した座位姿勢を得ることができるのです。利用者も安定し楽に座ることができるので座位時間が長くなり、楽しみを持つことができるようにもなりました。安定した座位姿勢がとれることで食事摂取も安全に行えるようになりました。現場からも「車椅子座位のほうが食事を安定してとれるのでリフトで起こします。」との報告も多くあります。

使えない大変さを実感

リフト導入直後は機器の不具合も多くあり、パシフィックサプライの方に頻回に来ていただきました。導入したのにリフトが動かない期間のほうが長い時もあり、その対応で時間と労力を取られてしまうことが多くありました。その原因はバッテリー、充電器、コントローラーなどでした。少し調子が良くなったかと思うと止まる、の繰り返し。その中で使える時は何も感じないのですが、使えない時間が生じると職員たちは「リフトがないとこんなに大変です。」と実感するようになっていました。

研修や日々のアドバイスは、職員の自信に

リフト導入後の5年間は、こちらからお願いして年1回のペースでリフトインストラクターによる研修会も実施していただきました。また、日々の業務で生じた疑問や不安な点はメールや電話で相談し返答をいただきました。インストラクターによる実際の使用場面を見てのアドバイスでは職員の動きや取り組みをほめて下さり、さらに改良するための指導もいただきました。職員も外部の方に見ていただくことで、自信を持ち取り組めるようになっていきました。
現在も不具合や相談などはメールや訪問で迅速に対応いただいています。

目的や取り組みの再確認

リフト使用が少なくなった時期もありました。ベーシックシートは使用するのですが二人介助で移乗という方法でした。その理由は「リフト機器を持ってくるのが面倒。」「二人介助が速い。」という現場の声でした。追われる業務の中で行ってしまう気持ちも理解できました。しかし、そのまま経過したのでは今までのリフト導入の目的や取り組みが不明確になる危機感があり、介護現場で主任、副主任、職員が話し合いの時間を持ちました。目的、取り組みを再確認後は、リフトを使用する方向へ動き出すことができました。

業務効率化を実現

今回、リフト導入時との職員数を比較してみました。現在は導入時より10人少なくなっており、この状態には職員みんながかなり驚いています。現場からは「リフトがあるから業務が行える。」との声も聞かれます。特に昼食後はリフトがフル稼働しています。

昼食後の臥床

新職員の感想

最近入職した職員に、リフト使用について聞いてみました。「初めてリフトを使用しました。」「リフトによって離床機会が増えることは良いと思います。」「二人介助にも限界があるので、リフトは利用者と職員の双方に有効だと思います。」「1人で移乗介助を自己のペースで行えることは肉体的にも精神的にも楽です。」など肯定的な言葉が聞かれました。

これからも使い続けるために

試行錯誤しながら、職員の協力により標準的な業務としてリフトの使用が取り入れられてきました。それを維持するための業務の確認、職員間の意識の確認がこれからも常に必要であると感じています。また、パシフィックサプライの方に定期的にフォローしていただくことで、トラブル等がなくても機器の確認を行うタイミングを持つことができるように思います。そして同じようにリフトを導入されている他施設の方々との情報や意見交換などを行う機会が増えていくことを願いながらこれからも業務に取り組んでいきたいと思います。

担当営業より

今回寄稿いただきましたチアフル遠見塚さんは、私の前任者がリフトの導入をしていました。それを引き継いだのですが、定期的に点検でお伺いさせていただく中で職員の入れ替わり時などに教育に関わらせていただいたり、課題解決方法を一緒に考えたりと会社としてしっかりサポートさせていただいています。
あらためて記事を読んで職員の方々の環境改善のお役に立てていることを嬉しく思います。

(パシフィックサプライ 仙台営業所・営業担当者)

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