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座位保持装置「ツイスト イージーズ」の使用経験

車椅子/姿勢保持

座位保持装置「ツイスト イージーズ」の使用経験

北九州市立総合療育センター リハビリ工学技師 中村 詩子 理学療法士   進 貴臣

2011-10-01

近年、様々なメーカーからモジュラー型の座位保持装置が発売されています。各社とも独自の機能を持たせた設計となっていますが、今回の報告で使用している ドイツ トーマスヒルフェン社の「ツイスト イージーズ」は、従来の座位保持装置の概念とは違う視点から設計された座位保持装置です。バックサポート内部が「バネ」で構成され、乗っている方の動きを押さえつけない特徴的なバックサポートとなっています。「ツイスト イージーズ」に試乗された方の中には、非常にリラックス出来たり、嚥下動作がスムーズになったりする方がいらっしゃいます。今回、福岡県にある、北九州市立総合療育センターのご協力を頂き、「ツイスト イージーズ」の使用感についてご執筆をいただきましたのでご紹介いたします。

この20年間で座位保持具は平面的なパッドを組み合わせた構造から、より快適性、適合性の高い構造へと大きく進化しました。当センターでも重度の変形を持つ障害児のために、張り調整やスポンジ削り出しのモールドなど、接触面が3次元化し、ティルトとリクライニングを両方備えた細かい肢位の調整が可能な座位保持装置が処方されるようになりました。その間、メーカーによる座位保持装置も生まれましたが、当センターではほとんどオーダーメイドの座位保持装置でした。これは、補装具業者が週4日駐在していることや、通院アクセスが比較的良いために座位保持装置利用者に何度か来院してもらって適合修正を行いやすいという環境的な理由が大きいと思われます。

このたび、オーダーメイドの座位保持装置を使用していた利用者がツイスト イージーズ座位保持装置に試乗する機会を得ましたので、感想等を報告します。

対象児は脳性麻痺(11歳、粗大運動能力分類システムGMFCSレベルⅤ、アテトーゼ+痙性の四肢麻痺)で頸定不全、座位不能です。幼児期からのリハビリテーションの介入の他、8歳時に麻痺性両股関節亜脱臼に対する股関節周囲筋解離、11歳時、膝屈曲拘縮に対して両側内側ハムストリングス腱延長を受けています。下肢に関しては通常の座位姿勢を制限する可動制限はありませんが、第10胸椎~第3腰椎に右凸25°の脊柱側弯があります。緊張亢進時は骨盤と体幹が左方向へ回旋する傾向にあります。頸部も左回旋し、かつ伸展する非対称性姿勢をよくとります。

ツイスト イージーズ

バネ

従来使用していた座位保持装置は、平成20年に作製しました。当時は非対称性姿勢が今ほど強くありませんでしたが、最近前述の緊張のため、姿勢の崩れが大きくなってきました。

ヘッドサポートを深い形状に変えると若干正中保持の時間が長くなっていました。今回このヘッドサポートをツイスト イージーズに装着して両装置の比較をしました。

工房バギーの姿勢と、ツイスト イージーズの安静時の姿勢の計測では、体幹の回旋は顕著な差はありませんでした。いずれの装置でも骨盤(上前腸骨棘で測定)は10°前後の左回旋位、体幹(肩峰で測定)も12°前後の同方向に回旋していました。

緊張時は、頸部は体幹より非対称が強く、かつ不随意による動揺も大きいため計測が困難でしたが、ツイスト イージーズの方が頸部非対称の程度も軽く、正中保持も長い時間可能でした。また食事や遊びなどの生活場面でも、姿勢が崩れることが少なくリラックスしているように感じました。

両装置で座面とバックサポートの圧測定を行いました(図4)。従来使用していた座位保持装置は座面と背もたれともウレタンフォーム削り出しのモールドタイプです。

一方ツイスト イージーズはバックサポートが特徴的で、背骨の位置に沿ったプラスチックの軸を中心に、4本の横方向の細いグラスファイバー板に、複数のプラスチックバネで身体を支え、体幹のねじれなどの動きに沿って細かく左右回旋および前後傾などに可動するサスペンションシステムとなっています。
手で触るとツイスト イージーズは固く感じますが、工房バギーとの圧測定の比較では、圧分散は同等程度、接触面積はツイスト イージーズが座面と体幹ともに広く接触部位も異なっていました(骨盤ベルト・胸ベルトの圧も含む)。圧の高い部位が体のどの部位かを特定するのが難しいために明言はできませんが、接触部位の差が体幹(特に上半身)の安定性、ひいては頸部の安定性につながっているのかもしれません。

この症例以外にも数名、短時間の試乗を行いました。期間も症例も限られていますが、この装置は固定性の変形がないアテトーゼの症例には良い適応がある印象を受けました。

対象の方は、ツイスト イージーズに座ると、嚥下もスムーズになる等の効果も出ている様子です。今後も機会がありましたら、ツイスト イージーズの使用感をご報告いただきたいと考えております。

図4

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