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パシフィックニュース

人と環境をつなぐドミノクッション

車椅子/姿勢保持

環境整備

人と環境をつなぐドミノクッション

川崎医療生活協同組合 介護福祉事業部 介護老人保健施設 樹の丘 地域リハビリ拠点事業科
川崎市地域リハビリテーション支援拠点事業  コーディネーター 村越 妙美

2022-07-15

最初の出会い

私がみっくんにお会いしたのは生後4か月の時でした。6300gのまるがおの赤ちゃんでした。
風邪の症状で小児科外来を受診され吸入などの処置をしましたが、哺乳力(おっぱいを飲む力)が弱く、入院で治療することとなりました。病院のリハビリテーション科に勤務していた私は、発達の評価で関わらせてもらいました。4か月の赤ちゃんにしては首のすわりが弱いかな、首の筋肉の弱さと比較して股関節やひざの筋肉の動きが硬いように感じました。入院時の血液検査にて、経過観察が必要ということになり、小児科外来に通院していただくことになりました。小児科に通院されている時に発達の評価とお母さんに抱き方やあそび方の指導をさせてもらいました。
7か月の乳児健診にて発達の遅れを伝え、こども専門病院での精密検査を経て、福山型筋ジストロフィーの確定診断に至りました。
9か月の時から本格的にリハビリテーションに関わらさせていただくことになりました。
 
 

リハビリ室場面

10か月の時に、初めて座位保持装置を製作しました。この時からすわる事への援助が始まり、私自身みっくんの身体の成長と活動の広がりや様々な社会参加に伴ってすわる事への援助を経験させてもらっています。
 

採型場面

この病気のこどもは将来、体幹の筋力の低下と下肢(脚・あし)の筋肉の萎縮によって身体がおなか側に倒れてしまうことが予測されたので早期からバックサポートにもたれて安定するすわり方の経験を持ってもらうように製作しました。
 

床と椅子の間の楔形(くさびがた)のマットの位置を変えることにより、安楽に過ごすこと、食事や机上でのあそびがしやすいことなど、安静と活動の、その場に応じた姿勢調整をしています。

自宅と保育園での座位保持装置の製作

食事や机上での活動とキャスター付きの椅子で引いてもらったり押してもらったりしての移動の楽しさを経験してもらうようにしました。
 

家族とのお出かけの時の椅子

車に乗る時は、市販のチャイルドシートの中に納まるように座位保持椅子を製作しました。
 

 

就学1年前に自走用車椅子を製作

就学前より学校内の移動手段の獲得を目指して自走用車椅子を製作しています。
腕の力が弱くても漕ぎやすく、室内でも小回りが利くように製作しています。
操作しやすいようにバックサポートの高さやアームサポートの仕組み、車軸の位置などを工夫しています。
 

入浴用いすの導入

身体の成長に伴って抱っこで入浴援助をしてもらう時の親御さんの負担を軽減することと、兄弟と一緒にお風呂に入れてもらう時に順番を待つための椅子を製作しました。
 


元々お風呂用ですが、海岸でのあそびの時などにも有効活用できて、親族との旅行やお友達とのあそびに参加できています。

昇降式座位保持装置の選択

成長に伴って学習や自宅でのお手伝いなど色々な場面に参加することを想定して、座面高を簡単に変えられるタイプの椅子を製作しました。
 

電動車椅子での活動

今回、久しぶりに車椅子の援助に関わることとなりました。
電動車椅子を導入したが、座っている身体が安定しないこと、車椅子のフレームなどに身体が当たってしまうことに対してご家族が色々工夫し対応していること、学校で使用するには、車椅子から落ちないように胸ベルトをつけてほしいと学校から申し入れがあったこと等、お母さんより相談があり援助することになりました。
車椅子の大きさが身体の幅より大きいこと、足がフットサポートに載っていないこと、体幹の筋力の低下によって安定して座っていられない状態であり、身体が横に倒れ、頭も傾いてしまう状態が見受けられました。

ドミノクッションの導入

しっかり骨盤を支えてあげることが座位姿勢を安定させる基本であることから、座クッションに、ドミノクッションを選びました。
骨盤をしっかり立たせて支持できることと大腿部(太もも)の外側への広がりを防止しながら大腿部後面でしっかり体重を支持できることがポイントです。少し脊柱の側弯があるので、左右の骨盤の支える位置や、大腿部の位置、太さの違いによってパーツを微調整して本人の安楽な位置を探りながら調整できたので非常に利用しやすかったです。
ドミノクッションを使って姿勢調整したところ誰が見ても良い姿勢となり、親御さんが導入を即、決断されました。
ドミノクッションは大腿部と坐骨結節の境目あたりで臀部のズレを抑えられる座面形状(アンカーサポート形状)になっており、電動車椅子で動いたり止まったりの操作を繰り返しても臀部がズレずに良い姿勢で座っていられます。
 
 
幼いころから後ろにもたれる姿勢を経験していることで、骨盤を後方から支える姿勢保持は、みっくんが受け入れてくれている一つの要素かもしれないと思っています。 屋内での電動車椅子操作は自走していた時に培った車幅感覚や操作方法が身についており十分実用性のあるものです。

学校との調整

学校から申し入れのあった胸ベルトは呼吸機能を抑制することにつながること、圧迫された時に皮膚のトラブルを招きやすいことを理解してもらい中止しました。
スクールバスに乗車中の安全性を考え、ヘッドサポートとハーネス(ベストのようなバンド)を取り付け、必要時に装着することとしました。
小学校高学年になり、身体の成長に留意しましたが、病状の進行を助長することの無いようにすることと、学校生活での自立の促進と活動の広がりを意識して援助しました。
 



みっくんの今

 

通学路登校の練習中の様子
 


装着について説明の様子


スクールバスの運転手さんたちにも、ヘッドサポートやハーネスの装着について説明しています。

最後に

こどもの支援に関わるにあたっては、将来を見据えることがとても大切です。病気の進行、病態の変容、成長、発達と多岐に渡ります。また、関わる人にも影響されます。家庭、病院、学校、デイサービス等、一日の中でも多くの場面で、多くの人と関わります。
すべての人が同じ関わり方ができるのか、というと難しいですが、共通の意識や課題の共有など、地域リハビリテーション支援拠点のコーディネーターとして、人と人とのつながり、人とモノとのつながり、モノと環境とのつながりの「つなぎ役」になっていければと思っています。

執筆者プロフィール



村越 妙美


1993(平成5)年 3月 国立療養所犀潟病院附属リハビリテーション学院卒業
1993(平成5)年 4月 川崎医療生活協同組合入職 川崎協同病院勤務
2000(平成12)年 6月 川崎医療生活協同組合 川崎協同病院リハビリテーション科科長就任
2021(令和3)年 4月~ 樹の丘に地域リハビリ拠点事業科新設就任

川崎市新規事業・川崎市地域リハビリテーション支援拠点事業 コーディネーターに就任
 
【資格・免許】
1993(平成5)年 6月 作業療法士免許取得(第16054号)
2002(平成14)年11月 公益財団法人テクノエイド協会 福祉用具プランナー(第14-2038号)取得
2015(平成27)年 8月 一般社団法人日本作業療法士協会 生活行為向上マネージメント履修
2018(平成30)年9月 特定非営利活動法人日本シーティング・コンサルタント協会 シーティング・コンサルタント取得
 
【社会活動】
2012(平成24)年~現在 一般社団法人日本作業療法士協会 福祉用具相談支援システム運用事業 相談アドバイザー
 

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