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パシフィックニュース

脳卒中片麻痺者への装具を用いた歩行リハビリテーションとその課題①

装具

脳卒中片麻痺者への装具を用いた歩行リハビリテーションとその課題①

公益財団法人 磐城済世会 松村総合病院 
リハビリテーション課  佐藤知明  佐藤勇太

2022-08-16

弊社オンライン特別プログラムにて、公益財団法人 磐城済世会 松村総合病院 リハビリテーション課  佐藤知明先生  佐藤勇太先生にご講演頂いた内容を2回にわけてお伝えいたします。 
 
第1回目は備品用長下肢装具導入から普及までの道のりと、課題についてです。

病院紹介

松村総合病院は福島県のいわき市にあります。
当院は回復期病床110床を有し、いわき市で回復期病床が1番多い病院となっております。
病院の建物は古いのですが、2025年に建直しの予定となっております。
入院疾患は6割が脳卒中、整形疾患が3割、その他の疾患が1割と、治療対象者は脳卒中分野が中心となっている病院です。

備品用装具導入と課題

当院では、重度片麻痺患者の入院数が増加していることを考慮し、早期から立位、歩行練習を行える備品用装具を2016年から導入しました。
導入したのはいいのですが、実際の使用率は低く、導入後2年でオーダー装具製作件数は2017年の1本のみという結果でした。

 


図1

図1は2014年から2017年のオーダー装具作製件数です。
当院は、脳外科、脳神経内科があり、回復期地域包括病棟があるにもかかわらず、訓練の中で本当に長下肢装具が必要だった人、もしくは作製が必要だった人はこれだけだったのかな、とは思います。
本当は必要であったにもかかわらず、担当セラピストの知識の不足、経験不足により、訓練使用や作製に至らなかった症例も、もしかすると多かったのではないかと考えました。
 

図2
 
図2は、少し前のものになるのですが、2017年に実施した当院の理学療法士14名のアンケートの調査結果です。
このアンケート結果から、「①装具作製時期はどの時が妥当と考えるか」に対して、発症早期が2割、発症中期が約7割、発症後期が1割。
また、「長下肢装具の適応、使用方法に理解はある」と回答したセラピストは、全体の3割しかいなく、残りの7割はあまり理解していないという結果でした。
この結果からも、セラピストごとの長下肢装具への認識には差があることが判明しました。
長下肢装具の使用率、作製件数が少ない要因としては、アンケート結果からも上記のことが要因と考え、当院では長下肢装具の知識の向上、共通認識が必要だと考えました。

院内装具チームの発足、活動と治療用装具の重要性

そこで、個人個人ではなく、当院全体へ、装具の普及活動を行うべく、装具チームというものを結成いたしました。
 


図3

図3は新しいホームページ用に撮った写真です。
メンバーは、装具の必要性を強く感じているセラピストを中心に構成しました。4人全員が、認定脳卒中理学療法士を取得しておりまして、現在は各階に配属し、装具関係の窓口となっております。活動内容は、スライドにある通り、勉強会、学会発表を通しての知識向上、勉強会、学会で学んだことの伝達講習、新人指導、作製アドバイス、装具ノート作製、装具カンファレンスの開催を実施しました。
発足後様々な活動を行いました。
2019年の東北理学療法学術集会では、自院の装具関連の発表を行いました。
発表だけで終わるのではなく、市外や他県の発表者に積極的に声をかけさせていただき、多くの貴重なアドバイスをいただきました。
また、院内だけではなく、地域装具連携として、介護分野主催の勉強会に参加させていただき、当院で装具を活用した治療内容、作製装具を説明させていただきました。
次に、他の病院を参考にさせていただいた「装具ノート」というものを配布させていただき、介護分野との連携強化に努めています。
伝達講習は、基本的に理学療法士が全員参加しており、内容によっては、図4のようにPOS全体で集まることもあります。
 
図4

続いて、「装具カンファレンス」について説明致します。主治医から装具作製の処方があった場合や、理学療法士より「装具適応」と判断された場合に、全症例で実施しています。装具カンファレンスでは、新人でも簡便に実施できるよう、カンファレンス用紙を作成しまして、脳画像、歩行動画を参考に装具適応の有無、作製目的、装具種類などを話し合っています。(写真:装具カンファレンスの様子)

活動開始1年後の2018年から、備品の使用率も向上し、全体的な装具作製件数が向上しました(図5)。
 

図5


装具件数や備品の使用率が向上した作製時期に関しては、1年後の2018年、装具が増えた時にアンケートを再調査しました。
「装具作製時期はどの時期が妥当と考えるか」では、2017年は67%でしたが、装具チームの活動後は93%のセラピストが「発症早期」と回答しました。(図6)

図6


また、長下肢装具の理解度も、以前調査した時は30%だったものに対して、活動が開始された後は70%と、長下肢装具への理解も深まりました。

長下肢装具を使ったリハビリテーションにおける新たな課題

備品の使用率、装具の作製件数は伸びましたが、下記のような新たな問題も起きてきました。
・備品の使用率が高く、介入時間の調整が難しい。
・装具の過剰使用による装具の摩耗
・オーダー装具作製までの期間が最短でも4週間かかる
・生活用装具の作製を行わずに退院される
例として、機能が回復し、軽量なオルトップ、タマラックの装具も適用になったかもしれない症例
も、金属支柱付油圧制動装具で退院となりました。

次回は、新たな課題を解決すべく、参院された義肢製作所の協力のもと実施されたセントラルKAFOサービス(画像トレース)によるオーダー装具製作に関するご講演内容をお伝えします。

執筆者プロフィール

松村総合病院 理学療法士 佐藤勇太
出身 仙台医健・スポーツ専門学校
取得資格 認定脳卒中理学療法士

 
松村総合病院 理学療法士 佐藤知明
出身 仙台医健・スポーツ専門学校
取得資格 認定脳卒中理学療法士

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