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パシフィックニュース

モジュラーソケットシステムの臨床例紹介

義肢

モジュラーソケットシステムの臨床例紹介

川村義肢株式会社 技術推進部 橋本 寛

2011-10-01

はじめに

当社では、オズール社の「モジュラーソケットシステム」(以下MSS)を訓練用義足に応用し良好な結果を得ている。MSSは、アイスロスを用いたTSBソケットを直接断端上で製作でき、良好な適合と製作時間の大幅な短縮が得られる。その反面、ウレタン樹脂を使用するために大きな修正ができないという点もある。

そのため、われわれは事前にアイスロスのみの試着を行い、その適応を確認したのちに、プラスチックキャストを用いた訓練用仮義足(以下、簡易ソケット)を製作し訓練を行い、ソケットの適応を評価し、MSSを施行し、退院へとつなげるプログラムを採用している。以下に症例を示す。

症例1 63歳 男性 身長172cm 体重50kg

糖尿病性壊死による右下腿切断(画像1)。創の治癒後に義肢製作を検討し、顕著な問題がないことを確認した。

2週目にアイスロスを貸し出しし、試着を開始した。

3週目に試着の結果を評価し、適応に問題のないことを確認したのちに、簡易ソケットの仮義肢を製作し、訓練を開始した(画像2)。

訓練中は問題なく3週間程度で歩行可能となり、7週目にMSSによる訓練用義足を製作し、装着、退院へ至った(画像3,4)。ロックアダプターはL-621ラチェットロック、足部はフレックスフットアシュアを用いた。

その後は杖なしで実用歩行を獲得し、日常生活を送っていた。退院後14ヶ月で脛骨骨端、腓骨頭の擦過傷の訴えあり、点検の結果、断端の萎縮によりソケットが不適合となっていることが判明したため、再採型の上ソケット及び外装交換を行った。MSSソケットは1年以上使用されていたが、破損等は見られなかった(画像5,6)。

画像1,2

画像3,4

画像5,6

症例2 60歳 男性 身長172cm 体重70kg

3年前より糖尿病性壊死による左下腿切断にてPTB式下腿義足を使用していたが、今回右も同原因にて下腿切断となった。

断端はやや球根状を呈していたが、義肢検討後2週目よりアイスロスを試着し問題なく、3週目に簡易ソケットを製作し訓練を開始した(画像7)。

途中転院され、また訓練用義足の給付申請手続きもあり、そのままで訓練継続したが、顕著な断端の萎縮はなかった。11週目に公費給付が決定し、3日後にMSSを用いた訓練用義足を製作、即日装着し、2日後に退院された。

やや球根状の断端であったため、ロックアダプターは引き込み装着が可能なL-2141クラッチロックを使用し、足部は低活動用のフレックスフットバランスとした。歩行器を使用し歩行可能であった。(画像8,9)。

画像7

画像8

画像9

考察

2症例ともMSSの適合に問題なく、即日完成・装着の上退院することができた。事前にアイスロスおよび簡易ソケットで適合を確認する限り、MSSは良好な適合を得られた。

また極めて製作時間が短い(最短で半日で完成)ため、急な転院・退院にも十分対応できた。さらに耐久性においても、1年以上の使用で破損なく、訓練用義足として十分と考えられる。

通常の義足では2~3週の製作期間が必要で、その間は義足待ちの時間として装着歩行訓練ができない。簡易ソケットであれば訓練はできるが退院時に完成した義足を供給する必要がある。

MSSという即時で高品質のソケット製作技術を活用することで、同じ入院期間でもより長い時間訓練が可能で、また早期退院にも対応できることが確認できた。