検索

Close

検索したいキーワードを入力してサイト内検索をする

パシフィックニュース

トランクソリューションの実感と手順

装具

リハビリテーション

トランクソリューションの実感と手順

トランクソリューション株式会社
理学療法士 赤羽秀徳

2023-01-05

はじめに

2018年3月に発売された「トランクソリューションCORE」
体幹を伸展し、骨盤を前傾させ、かつコアマッスルの活動を促す体幹訓練機器です。
主にリハビリテーション病院や障害・高齢施設を中心に備品装具として活用されております。 
パシフィックサプライでは、納品後のアフターフォロー活動の一環として、トランクソリューション専任アドバイザーで理学療法士の赤羽秀徳先生と一緒に、オンラインにてフォローアップさせていただいております。その内容は、初めて装着いただく患者さまにとっても、療法士の先生にとっても、トランクソリューションの効果を実感するためのとても大切なポイントです。
今回このパシフィックニュースで、赤羽先生にそのポイントをわかりやすくご解説いただきました。
臨床ケースの前に一度ご覧いただき、その手順を実践いただければ幸いです。


 

 


突然ですが、トランクソリューションの使い方に不安はありませんか?
トランクソリューションは装着することにより、胸骨部を押して体幹を伸ばすこと、そして、骨盤後方を押して骨盤を前に傾けることを促す訓練機器です。
その効果を筋活動という面からみると、下腹部前面の奥にある、腹横筋というコアマッスルの働きを活性化し、背中の浅い部分にある脊柱起立筋などの筋肉の必要以上の緊張を抑える機器です。
今回は、そのトランクソリューションの効果を実感していただく手順の一例と、使用する際に是非知っておいていただきたい特徴、そして、活用例として、椅子での起立着座や座位・四つ這い姿勢での使用法をお伝えしていきます。

1.トランクソリューションが身体に及ぼす影響の疑似体験

はじめに、トランクソリューションを装着することで、身体にどのような影響がでるのかをご自身の手、あるいは、他者の手の力で疑似的に体験してみましょう。

その1:筋力向上
はじめに、その腹横筋が、適切に働いていない状態と働いている状態を疑似的に体験してみます。まずは、椅子に浅く座って、足を持ち上げる動きで確認してみます。

はじめは、コアマッスルが働いていない状態、いわゆる骨盤が緩んだ状態です。両手で、鼠蹊部(ももの付け根)からおよそ指2本分上にある骨盤の突起(上前腸骨棘)を、内側から外に向かって左右同時に軽く外に開きます(図)。
この状態で、足を片方ずつ20センチほど上げてみます(図)。 このときは、足が上がりづらいかと思います。
次に、コアマッスルが適切に働いている状態です。今度は、先ほどと同じ骨盤の突起(上前腸骨棘)の両端を左右同時に軽く中に押します(図)。この状態で足を20センチほど上げてみます。これで足が軽く上がると思います。

以上のように、コアマッスルが働き骨盤が締まった状態になると、足が軽く上がるのが確認できます。

その2:柔軟性向上

今度は、柔軟性を見ていきましょう。先ほどと同様に、骨盤の両端を軽く外に開いた状態を作ります(図)。
この状態で前屈を行うと窮屈な感じがすると思います(図)。
続けて、骨盤の両端を軽く中に押します(図)。
この状態では先ほどよりも柔らかくなったことが実感できるかと思います(図)。

以上のように、コアマッスルの働きが活性化し、骨盤が締まると、筋力が発揮しやすくなるとともに、柔軟性も向上することがお分かりいただけたかと思います。
このような効果が、足踏みや歩行、あるいは、座った状態や立ち上がりなどの運動療法を実施することで期待できるのがトランクソリューションです。

2.効果実感の手順例

トランクソリューションを用いた運動療法を行い、その効果を実感していただく手順の一例として、足踏み、前屈、後屈、椅子で足上げを活用した方法を紹介します。
 

手順1:装着前の身体状況確認

①足踏み(図)
その場で足踏みをします。できれば太ももが水平になるくらいまで上げます。この時、脚の重さの左右差を感じます。もし、左右差を感じないときには、上げるときの重さを感じてください。感じられたら終了です。その感覚を覚えておいていただきます。
②前屈(図)
足を肩幅程度に開き、ゆっくりと前屈します。手がどこまで届くのか、床からの距離をみておきます。また、この時の、背中や下肢後面の張り感なども感じていただきます。
③後屈(図)
前屈同様に足を肩幅程度に開き、臀部に手をおきゆっくり後屈します。膝はなるべく伸ばしたまま行います。この時のからだのしなやかさを感じていただきます。
④椅子での足上げ(図)
椅子などに浅く腰掛け、胸の前で手を組んだ状態で骨盤を起こし、膝を伸ばしたまま右足を20センチ程度持ち上げます。この時の足の重さを確認します。同様に左側も行います。どちらが重かったか覚えておいていただきます。左右差が無い場合は、その重さを覚えておいていただきます。

以上が、トランクソリューション装着前の身体状況の確認の例です。

 

手順2:トランクソリューションの装着
次にトランクソリューションを装着します。装着方法に不安がある方は、こちらをご参照ください
装着の際、可能であれば上着をズボンの中に入れていただくと、トランクソリューションが上にずれにくくなります。

 

手順3:トランクソリューションを装着して足踏み(図)
トランクソリューションを装着して足踏みをします。可能であれば太ももが水平近くになるまでしっかり足を上げていただきます。最適な足踏みの時間には個人差がありますが、1分から2分程度で効果が出ております。ご本人の疲労具合に応じて、時間を調整してください。

足踏みの際には、主に以下の点を確認しましょう。

ポイント1:足踏みの最中に、下腹部に軽く力が入っているのを感じるのは、腹横筋の働きが活性化されている理想の状態だと思います。しかし、太ももやお尻に不快な筋肉の緊張を感じる場合は、無理に足踏みは続けず、その時点で終了していただいて結構です。
 
ポイント2:前ベルトが太ももの付け根に食い込み、違和感がある場合には、一度外して、腰パッドを少し上げ、再度取り付けてください。
 
ポイント3:装着の強度が強すぎて違和感がないか?あるいは、弱すぎて頼りない感じではないか?を確認します。もし適切な強度ではないと判断したら一度、足踏みを止め、「押し力レバー」を下げて、後ろベルトの閉め具合を調整しましょう。
 
ポイント4:トランクソリューションが上にずれてきた際には、ご自身で下に押していただいて結構です。

 

手順4:効果の実感
足踏みを行ったら、トランクソリューションの「押し力レバー」を下げ、「右ベルト」をはがし、「バックル」を上にスライドさせ外します。ここで、はじめとの変化を感じていただきます。
足踏み、前屈、後屈、椅子で足上げを、再度同様の方法で行います。

3.腰椎過前弯のケースの使用法

トランクソリューションは体幹を伸ばすこと、そして、骨盤を前に傾けることを促す機器ですが、中には、すでに骨盤が大きく前に傾いている方もいらっしゃいます(図)。
その際には、使い方が異なり、ご本人に骨盤を後ろに傾けること、つまり骨盤後傾を意識していただく必要があります(図)。
この骨盤の動きが正しくできると、胸パッドの圧を感じます(図)。
この状態をご本人が作ることで、コアマッスルの働きがより活性化されます(図)。
是非、この特性を知っておいていただきたいと思います。

4.トランクソリューションの活用例

その1:サポートベルトの使用による起立着座・座位での活用

サポートベルトを使用することで椅子から立ち上がったり、座ったりする動作や、座った状態(図)などでも、トランクソリューションが上にずれることなく使用できます。
立ち上がりで使用する場合は、可能であれば、ももの付け根に置いた手を挟み込むようなイメージで、立ち上がっていただくとよりコアマッスルの働きが活性化されます(図)。
座った状態で使う場合は、トランクソリューションを装着したまま、深呼吸をしたり(図)、
肩を回したり(図)、
片方のお尻を上げたり(図)、
膝を伸ばしたり(図)、
太ももを持ち上げたり(図)、
体を傾けて手を上げたり(図)など、さまざまな運動療法に使用することができます。

その2:四つ這い姿勢での活用

四つ這い姿勢の運動療法にも活用していただくことができます(図)。
先ほどの過前弯の説明と同様ですが、この姿勢で、骨盤が前に傾き前弯が強くなると胸バッドの圧が減り(図)、
骨盤を後ろに傾けること(骨盤後傾)を意識していただくと、胸パッドに圧を感じます(図)。この特性を生かし、骨盤後傾のフィードバックとしてもご活用いただけます。

5.使用時間と使用頻度の目安と注意点

その1:使用時間の目安
足踏みの場合は1分程度から、歩行の場合は3分~5分程度から、ご本人の疲れ具合や使い心地を確認しながら徐々に増やしていってください。
 
その2:使用頻度の目安
週2回程度でも効果は確認できておりますが、こちらも、ご本人の疲れ具合や使い心地を確認しながら決めていっていただければと思います。
 
その3:注意点
使用している際に痛みなどの異常を感じた場合は、すぐに使用を中止し担当者にご相談ください。その他の注意点は、トランクソリューションの説明書、またはHPの使い方のページに詳しく載っていますのでそちらをご参照ください。
 

HP(トランクソリューション®について 使い方・装着方法)のURL :
https://trunk-sol.co.jp/trunk-solution/howto/

さいごに

いかがでしたでしょうか。
同じ装具でも、症例により作用はさまざまです。
トランクソリューションを着けての評価の確認(before、after)を臨床的に行うことで、おひとりおひとりに合ったトランクソリューションの効果が発揮されます。その効果を、セラピストさまにもご本人さまにも感じていただくことができれば幸いです。

執筆者プロフィール

赤羽 秀徳 (あかは ひでのり)
一般社団法人 赤羽総合腰痛研究所 代表理事
https://akahalabo.com/


対話的腰痛アプローチ・ILPT(Interactive Low back Pain Technology)セミナー 主宰
博士(工学)
理学療法士
選択理論心理士
国際マッケンジー協会認定療法士
国際統合リハビリテーション協会認定講師

関連情報