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パシフィックニュース

モーリフト利用事業所からの発信 1

リフト・移乗用具

リハビリテーション

モーリフト利用事業所からの発信 1

社会福祉法人直心会 肢体不自由児施設つくし園 理学療法士 大畑 里美

2012-01-01

大分県北部八面山の麓中津市三光にある『つくし園』は、障がいを持つ子ども達の療育を志し昭和58年に開園しました。入所者の障がいの重度化・高年齢化から『つくし園』の定員40名の一部を用途変更し、平成21年5月に重症心身障がい児・者施設『すぎな園』を開園しました。入所部門の他、外来診療・外来訓練・未就学児の母子通園・在宅重症児者のデイサービス・短期入所を行っています。在宅支援センターも併設し、大分県県北地域だけでなく隣接する福岡県の市町村からの利用もあります。

今回、入所部門の介護作業の問題整理と理学療法士としての役割をふまえ、モーリフトを導入した経緯と導入後の結果・現状の2年間を2号にわたりご紹介します

つくし園外観写真

リフト出会いのきっかけ 平成21年8月

理学療法部門としての立場から
(1)理学療法士が実際に使い確信・自信を持つこと
デモ機借用中の間、理学療法士同士で試乗・操作を行い操作方法が確実になったところで、入所者の訓練終了後の移乗に使用し、入所者の感想を聞くことを始めました。
入所者の内、言葉でのコミュニケーションが取れる方から、“人的移乗介助では性別・体格・経験による差が大きい”ことを指摘されました。重ねて“リフトの安定・安心感”も伝えてくれました。
理学療法士である私たちは、介助する側の健康管理と介助される側の安心・安全を目的に介助法の園内伝達研修を行ってきましたが、人的介助の限界を知ることにもなりました。適正で目的が明確な用具の選択が今後必須との確信を持ちました。

(2)介護現場の実情をデータ化し視覚的に伝えること
外来にて理学療法を受けているYさん(脳性まひ、当時51歳)からの相談でした。在宅にて主な介護者のお父様(当時80歳)が、ベッドから車椅子への移乗が出来なくなってきたことにより、在宅生活を継続するためにリフトの検討を開始しました。
行政・訪問介護・つくし園からなる個別支援会議の中でリフトの件を提案し、公的援助の確認より、工事を伴う天井懸架リフトではなく床走行リフトの購入が可能となりました(重症者の日常生活用具給付利用)

リフトは高価補助用具である為、本当に日常生活の中で使えるかどうかの確認作業が必要になります。業者であるパシフィックサプライ社より、借りたデモ機がモーリフトでした。Yさんに使用する前に、担当者から説明を受け理学療法士のスタッフが試乗しました。スリングシートの形状・取り外し、リフトの操作性・吊り上げられ感等、以前に比べ格段に使用感に違いがあり、日常生活で使いこなせることを確信しました。同時に入所部門でも活用したいとの思いが強くなりました。(写真1 訓練室で使用)

Yさんの場合、
(1)訓練室での操作・使用体験
(2)居室での使用、居室の広さ(ベッドと車椅子とリフトの位置関係)、ベッドの高さ(リフトの脚部分が入るか)(写真2 実際の居室)
(3)モーリフト以外のリフトの使用経験(モーリフトを含め3台試乗)
の段階を経てYさんの使用感を確認後モーリフト購入(平成21年12月)の運びに至りました。

写真1

写真2

入所部門への導入 平成21年10月

理学療法部門としての立場から

  1. 理学療法士が実際に使い確信・自信を持つこと
    デモ機借用中の間、理学療法士同士で試乗・操作を行い操作方法が確実になったところで、入所者の訓練終了後の移乗に使用し、入所者の感想を聞くことを始めました。入所者の内、言葉でのコミュニケーションが取れる方から、“人的移乗介助では性別・体格・経験による差が大きい”ことを指摘されました。

    重ねて“リフトの安定・安心感”も伝えてくれました。理学療法士である私たちは、介助する側の健康管理と介助される側の安心・安全を目的に介助法の園内伝達研修を行ってきましたが、人的介助の限界を知ることにもなりました。適正で目的が明確な用具の選択が今後必須との確信を持ちました。

     
  2. 介護現場の実情をデータ化し視覚的に伝えること
    『つくし園』『すぎな園』入所者の7割が要移乗介助の中、『尊厳のある生活の保障』『細心の注意を払い最大の冒険をする』『目に見える療育効果を出す』理念の下、個々に適した車椅子(身体変形に合わせたモールドタイプ、リクライニングタイプ、ティルトタイプ等)を作成し日常生活・療育参加をしています。入所者の方の生活の質を高めようとすると必然的に移乗介助する頻度は上がります。

    職員の中には腰痛用のベルトを使用し介助業務を行っている人がいる現状がありました。腰痛での休職者はいませんでしたが、いつ出てもおかしくない状況でした。そこで介護作業の問題点を具体的に探り、職員が何に対して負担を感じているかをデータ化し園内学術発表会(平成22年2月)で報告することにしました。((1)個々の腰の危険度チェックの記入(2)介護労働者の腰痛予防対策チェックリスト『中央労働災害防止協会』を使用し調査)

【調査結果】

グラフ1
1~4の作業介助の共通点は、直接的に「抱える」動作が入っていること

グラフ2,3
介護作業職員は4つの作業介助のリスク要因を重量負荷が因子と考えていました。実際に入所者の体重は、要介助の7割が体重30kg以上でした。

小児施設という特殊性から一人で抱きかかえ移乗することも多く、また二人介助で行っても、更衣・食事・排泄・入浴等での頻回な移乗介助の身体的負担は、「腰の危険度チェック」より腰痛発生の危険度が大きい職員の割合43%に表われていました。

グラフ4
BMIとリスク要因(低)との相関関係
少ない人数での調査のため相関関係を明確には出来ないが、職員のBMI指数が高い人ほどリスク要因〔低〕の数が多い傾向があった。


以上のことから重量負担の大きい介助作業について早急に対策を取る必要性を職員に伝え、

  1. 「抱える」動作を補う介護作業の代替としてリフト器具の導入を検討する時期に来ていること
  2. 移乗介助は一人で行わず二人介助で行うこと
  3. 理学療法士として身体に負担が少ない作業方法の提案

をしていくことを発表しました。

質問の中にはリフトに対して「使用してみたい」との意見もあり、最初の提示としては興味が芽生えた事を感じました。園内学術発表を根拠にリフト購入計画をまとめ、予算化の承認を得ました。

グラフ1

グラフ2,3

グラフ4

リフト購入に向けて 平成22年4月

制度利用の公開と協力要請
リフトは高価であるため、法人規定により選定する際にいくつか比較検討する必要がありました。モーリフトを含むデモ機3台を実際に理学療法士が施行し、施設環境での使用しやすさを確認後、床走行式モーリフトに決めました。

購入に際して、リフトの普及推進を進める上で補助金がないかを調べると、厚生労働省・中央労働災害防止協会発行『福祉施設における安全衛生対策、腰痛対策・KY活動』の中に、福祉機器購入費用の一部を助成する「介護労働者設備等整備モデル推奨金」制度を知り『つくし園』『すぎな園』も対象になることが分かり早速申請する準備を始めました。
申請するリフト導入計画には、腰痛予防対策・使用の徹底・導入効果把握が必要であること、計画に沿って研修会を行うことを役職者会議にて報告し、協力をお願いしました。

リフト導入計画の結果については22年度の園内学術発表会で報告することを決め、平成22年7月申請後、8月に認可が下り、9月にモーリフト購入となりました。
(次号では導入後の結果・現状についてご紹介します。)

Yさんの使用体験談

Yさんは毎日4回訪問サービス(二人介助)を利用しています。サービス利用コスト面でも負担が少なくならないか(二人介助→一人介助)も検討して行く予定です。

今回原稿を書くにあたり再度Yさんの自宅を訪問しました。ヘルパーさんから『自宅導入から2年経ちましたが今ではリフトは無くてはならない機器となっていること・どのヘルパーも操作可能なこと』の声を聞くことができました。また導入時ベッドの下にリフトの脚が入らないため何らかの工夫をしたのですが私自身記憶が無くYさんに尋ねたところ、意思伝達装置レッツチャットにて答えてくれました。(写真3,4)

Yさんは『今後生活場所が変わろうともリフトは持って行く』と言っていました。

写真3

写真4

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