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パシフィックニュース

当院でのsplint処方の流れと作製後のフォローアップについて

スプリント

リハビリテーション

当院でのsplint処方の流れと作製後のフォローアップについて

医療法人 同信会 福岡整形外科病院
作業療法士 栗木 康介

2023-09-01

当院でのsplint処方の流れ

我々セラピストは徒手療法と目的に応じて行うsplint療法を併用することで、術後の早期運動療法や関節拘縮に対して効果的な治療を行うことができる。前回のパシフィックニュースでは『拘縮予防に対するsplint療法』について述べたように、拘縮の予防や改善に対して受傷部位や病態から予後予測をし、目的に合わせて適切なsplintを作製することが非常に重要である。今回は、我々と繋がりが大きい『splint』がどのような流れで処方され、作製されているのか、その流れを当院の例を交えながら説明していく。なお、前提として、セラピストが作製するsplintは手外科医からの処方箋による指示に基づいて作製を行っている。
当院でのsplint作製は主に2つの流れがある。1つ目は『手外科医からのsplint作製処方箋』であり、2つ目は『セラピストから手外科医にsplint作製を提案する』である。この2つのsplint作製の流れについて、詳しく述べていく。

splint処方の詳細

①『手外科医からのsplint作製処方箋』

手外科医からのsplint作製処方は主に対象者が外来時か入院時かで分けることができる。まずは外来時でのsplint作製処方箋の流れについて説明する。当院の外来splint作製処方箋で多いのは母指CM関節症に対するsplint療法である。母指CM関節症に対するsplint療法の有効性が証明されており、当院では保存療法の第1選択としてsplint療法が選択されている。splint作製までの流れとしては①手外科医からの処方箋がリハビリ室に出される。②担当者と対象者とでsplint作製日の予約をとる。③作製日当日にsplint作製前評価とsplint作製をする。④1週間以内にsplint装着感の再評価と調節を行う。
その他にHeberden結節に対する安静固定用ring splintやスワンネック変形に対する拘縮予防splint、Joint jackなどの拘縮改善用splintの作製依頼が多い。


<母指CM関節症に対するthumb spica splint作製>
  疾患名:右母指CM関節症
  手外科医からのsplint依頼内容:保存療法用のsplint作製をお願いします。
  目的:母指CM関節の安静化。装着下でのADL動作の使用。
  作製splint:thumb spica splint

(オルフィライト2.4mm)


もう1つは、入院し手術を受けた後の対象者に対するsplint作製処方箋の流れである。
術直後はシーネ固定を行っているが、細かな関節の固定や非固定が行いにくいため、手外科医から早期にsplintへの変更を依頼されることが多い。そのため、術後splintは骨接合部や縫合腱部は安静固定を行い、それ以外の関節は安全に早期運動療法が行えることをコンセプトにして作製するように心がけている。手外科医からの処方箋は術後1~2日の間に出ることが多く、拘縮が生じないように早急に作製するようにしている。作製後にも細やかなフォローアップが必要であり、特に術後は腫脹によってsplintの装着感が変化するため、腫脹の軽減や創部の縫合状態に合わせてsplintの調節を行う必要がある。


<左母指基節骨骨折と左第5中手骨骨折に対するsplint作製>
  疾患名:左母指基節骨骨折、左第5中手骨骨折
  術式:母指基節骨は陥没部に人工骨を挿入し、plate固定。第5中手骨に対してはscrewにて固定。
  手外科医からのsplint依頼内容:母指基節骨は固定。第5中手骨は早期運動療法が行えるようにMP関節屈曲位での固定をお願いします。
  目的:骨折部である母指基節骨は安静固定。第5中手骨は骨接合を阻害しないように環指・小指・MP関節は屈曲位にし、PIP・DIP関節の自動運動を可能にすること。
  作製splint:母指CM、MP、IP関節固定、環指・小指MP関節屈曲位固定splint
  (環指・小指用のsplintはthumb spica splintの上から装着する。)



 
②『セラピストから手外科医にsplint作製を提案する』
次にセラピスト側からsplint作製を提案する場合について説明する。
主に拘縮の予防や改善を目的として、セラピストから手外科医にsplint作製を提案することが多い。
セラピィを進める中で、患者さん自身が痛みでうまく指を動かすことができない場合や、仕事や遠方により外来リハビリに通院することが困難な例を経験することがある。そのような状態が続くと、拘縮が改善せず、さらなる拘縮を作ってしまうことが危惧される。上記のような予後予測は実際にセラピィをしているセラピストの方が敏感に感じ取れるため、その場合は手外科医へ連絡をし、splint作製について提案をさせて頂き、splint作製処方箋の指示に従って作製する流れで行っている。
また、splintを作製する必要があると思った瞬間が最も“旬”な状態であり、拘縮の進行を防ぐためにも可能な限り早急に手外科医に提案させて頂き、シームレスにsplintを作製できるように心がけている。


<Dupuytren拘縮に対する術後、屈筋腱の近位滑走制限による腱性拘縮>
  目的:環指・小指屈筋腱の近位滑走制限による腱性拘縮の改善。深指屈筋腱、浅指屈筋腱の腱滑走。
  作製splint:環指・小指MP関節blocking splint


(オルフィライト3.2mm)

おわりに

今回、当院でのsplint処方の流れと作製後のフォローアップを紹介したが、あくまで1つの例であるため、各施設の手外科医や医師、義肢装具士などと話し合ったうえで、splint作製の流れを決めて頂きたい。そして、セラピストが行うsplint作製の発展の一助になれば幸いである。

執筆者プロフィール

作業療法士 栗木康介

 
医療法人同信会 福岡整形外科病院
リハビリテーション科
 
<略歴>
2009年3月  福岡リハビリテーション専門学校卒業
2009年4月 - 2013年3月 医療法人 清恵会病院
2013年4月 - 2019年4月 医療法人 櫛田学整形外科クリニック
2019年5月~ 医療法人同信会 福岡整形外科病院 現在に至る
 
<主な所属/協会/学会>
一般社団法人 日本作業療法士協会
一般社団法人 日本ハンドセラピィ学会
公益社団法人 福岡県作業療法協会
九州ハンドセラピィ研究会 世話人

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