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ACL再建後の慢性的不安定性をもつ患者に対する膝サポーターによる効果と長期的影響
スポーツ
装具
使用サポーター: ゲニュTrain (バウアーファインド)
パシフィックサプライ株式会社 新規事業開発推進部
2023-12-01
はじめに
ゲニュTrainは 膝蓋骨周辺にあるビスコエラスティック製インサートと膝関節への理想的なアナトミカル適合を特徴とする軟性膝サポーターです。
ACL再建後の慢性的不安定性をもつ患者に対し、ゲニュTrainを用いたその効果と長期的な影響に関する研究レポートを紹介します。
背景
断裂した十字靭帯の外科的再建と、その後のリハビリテーションは、若く、高活動の患者に最も一般的に使用される治療方法である[1]。 米国における年ごとの100,000件あたりの前十字靭帯(ACL)再建の発生率は、68.6件であり[2]、ニュージーランドにおいては、58.2件であり[3]、オーストラリアにおいては、52.0件であり[4]、そしてスウェーデンにおいては、32.0件である[5] 。発生率は、運動をしない人々よりも、チームスポーツをする人でより高い[6]。
術後の状況においては、報告によると、中期から長期の機能障害や膝関節機能の制限、それに加えて再断裂のリスク[7]や、膝関節の関節症の発症が示されている[8]。
臨床研究では、十字靭帯再建後に可能性のある帰結として、持続的な大腿筋力の不足[9,10]、異常歩行[11]や身体活動の低下[12]が含まれる。また、長期的には活動レベルも低下するようであり[13]、それには、過体重も一部となる[14]。
長期的な生活の質の低下は、膝関節の機能、十字靭帯の損傷の再発への怖れや自信の喪失に関連があり、それが、患者に観察されるその後の十字靭帯の断裂の可能性を高める[10,15-17]。
研究により、個々の患者に対し、ACL再建後のリハビリテーション中や運動に復帰する際に弾性サポーターを使用することが報告されている[18]。 サポーターが体性感覚や固有受容制御を向上させることにより、歩行を向上/正常化することが議論されてきた[19,20] 。それによって、膝関節機能と患者自身の膝に対する自信を増すことができるのである[21,22]。
この研究の目的は、ACL断裂と靭帯再建後の(術後最低5か月の)慢性的な不安定性をもつ患者に対する、ベースラインと6週間の製品装着後のゲニュTrain膝サポーターの安定化効果を検証することにある。
研究デザイン
即時効果についての交差研究:2アーム、ランダム化、対照臨床研究、6週間の長期フォローアップ付(エビデンスレベル 1b)
方法
被験者 | n =34人の患者 パート1:即時効果:n=34 (交差、ランダム化) パート2:6週間の製品の装着: n = 17人サポーター群 = BG = 介入群 n = 17人サポーターなし群 = KG =対照群 介入群: 年齢: 27 ± 7歳 身長: 173.0 ± 10 cm 体重: 72.9 ± 10.7 kg BMI: 24.4 ± 3.2 性別: 男性:女性 10 : 7 術後時期; 15ヶ月(7-44) 1日あたりのサポーター装着:最低1時間*受傷前Tegner Activity Scale:7(3-10) *受傷、術後Tegner Activity Scale:4(2-9) 対照群: 年齢: 26 ± 7歳 身長: 173.0 ± 1 cm 体重: 80.4 ± 11.1 kg BMI: 26.7 ± 2.4 性別: 男性:女性 8 : 9 術後時期; 16ヶ月(6-53) *受傷前Tegner Activity Scale:9(6-10) *受傷、術後Tegner Activity Scale:5(3-9) |
0 – 膝関節の問題からスポーツ/活動に参加できない
5 – 余暇の運動は可能、不整地のジョギングを週に2回
10 – 国内、国際の競技スポーツ、チームスポーツ(サッカー、ラグビー)
使用サポーター | ゲニュTrain® (Bauerfeind AG) |
計測システムと テスト方法 | 水平ジャンプ: 単脚立位 からの単脚ジャンプを行い 単脚で着地、 3 試行の平均、 健側および受傷側、サポーターあり、なし LSI 外側対称指数(受傷側 健側 *100) IKDC SKF 国際膝記録分類 主観的膝フォーム=機能、最大値:100 |
調査期間 | 第1次計測: 即時的効果、サポーターを渡した当日に計測、その後BG群は6週間装着 BG群n = 17人、 KG群n = 17人は サポーターなし 第2次計測: 第1次計測の6週間後 |
算入基準 | 最低でも過去5ヶ月から5年の間に ACL断裂をし、ACL再建を行った患者 機能的欠乏はIKDC-SKFを使用し計測 (国際膝記録委員会主観的膝フォーム)100点中の40~80点 |
除外基準 | 変更手続きあるいは逆側の脚に過去ACL断裂を経験した患者 骨盤または腰部、また下肢に関連する問題のある患者 過去の6ヶ月間に医療的な治療を要する問題のあった者、あるいは神経、血管の状態により、日常生活活動に制限を来たした者 30を超えるBMI、または、IKDC-SKFの値が40を下回る、もしくは80を超える者 |
結果
単脚水平ジャンプ、即時効果
受傷側にサポーターを装着した状態のジャンプ中には、受傷側にサポーターを装着していない状態でのジャンプと比較して、距離が顕著に、3.6%(95% Cl 0.4-6.8%, p = 0.025)まで増加した。健側と受傷側の間のジャンプ能力の差の減少も観察され、サポーターなしでは -9.3%(-12.4%, -6.1%)であったものが、サポーターありでは -6.0%(-9.2%, -2.8%)となった。急性期においては、健側と比較した受傷側の不足は、ゲニュTrainを装着した際には、3分の1に減少した。このことは、サポーターを装着した際に、受傷側のジャンプ能力が5cm増加したことに対応している。
(図1)
単脚水平ジャンプ[cm]/n=34
図1:単脚水平ジャンプ:Y軸 = ジャンプ長[cm]、(α<0.05; power,β=80%;one-way ANOVA)
単脚水平ジャンプ、長期効果:
6週間の介入後、サポーター「なし」と「あり」の比較において、受傷側を使用した単脚ジャンプ中のジャンプ能力については、顕著な増加は計測されなかった。しかしながら、介入群の対称性指標(ジャンプ能力;健側と比較した受傷側のジャンプ距離)には傾向が観察され、92.0%から95.2%に増加した。(図2)
LSC(対称性指標)[%]
図2: LSI(外側対称性指標)、急性期中(ベースライン)と6週間サポーターを装着した後(フォローアップ)の健側と受傷側の比較;
n = 12 KG; n = 12 BG
IKDCスコア、膝関節機能自己評価質問票:
対照群と介入群の間で、IKDC評価全体の顕著な違いはみられなかった。膝関節固着[%]
の膝関節機能の比較
(α<0.05; power,β=80%;McNamar’s test)
n = 16 KG; n = 15 BG
考察
単脚水平ジャンプは、十字靭帯再建後の患者の回復を評価するために、しばしば用いられる。これらはまた、スポーツ活動への安全な復帰のタイミングを決定するために、その他のテストと組み合わせて使用される[23,24]。
この研究の患者らは、ジャンプ距離との関連において、外側対称性(LSI)で、LSI≥90%を示した。これはしばしば、運動に復帰できることを示すベンチマークとして利用される。しかしながら、サポーターを装着せずに、受傷側を使用してジャンプした場合の患者のジャンプの距離は、比較可能な外傷や年齢幅の他の研究で報告されている平均距離、187cmよりも、著しく低い[25]。
一方では、膝サポーターを装着することによって、急性期においても、3.6%までパフォーマンスを向上させることができる。この点は、「受傷した」膝の機能的ステータスの向上といえる。
他方では、個々人のデータには、極めて大きな幅(標準偏差;SME3%)が記録されている。加えて、患者が報告した6週間の間のサポーターの装着時間は、それぞれに大きく異なる。装着時間の幅は、1日あたり、1時間~8時間の範囲にあった。
10中の2~9という、Tegner Activity Scoreの大きな幅も、検査したグループが確実に均質ではないことを示している。数人の被験者は、競技スポーツに復帰したが(9/10)、中には、単に不整地を歩くことができるようになっただけの者もいる(2/10)。
これらが2つのグループ間の比較に影響を及ぼした可能性はある。その結果として、介入群の全ての患者に全6週間にわたって、顕著なパフォーマンスの向上は観察されなかった可能性はある。
6週間にわたり、確実に継続した効果の一つは、健側と比較した場合の受傷側の対称性が向上したことにある。また、6週間の膝サポーターの装着後には、膝関節機能障害の率が低下したことも記録されている。
膝サポーターは、リハビリテーション中の治療方法に加えるものとして、あるいはその後の身体活動の継続的な向上のために、有用である可能性がある。
膝サポーターの効果について検証した、この研究データと、現状存在している研究[18-22]のエビデンスをもとにすると、これらの使用は、個々人の評価と患者の回復の進行状況をベースとして決定されるべきものである。
まとめ
ゲニュTrain はパフォーマンスと膝の協調性を向上させる
ゲニュTrain を6週間装着しても、即時効果は減少しない
ゲニュTrain を装着すると、6週間後の膝関節機能障害(膝関節固着)の率が減少する
参考文献
※脚注[1]~[25]は下記リンクよりご確認ください。
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