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パシフィックニュース

理学療法士から見たコネクトTF導入の利点

義肢

リハビリテーション

理学療法士から見たコネクトTF導入の利点

即時装着可能な大腿義足ソケットによる義足リハビリテーションへの効果

パシフィックサプライ株式会社
新規事業開発推進部
義肢装具士 奥野麻弥

2024-01-05

はじめに

コネクトTFはオズール社が提供する、活動度の低い大腿切断者向けの調整可能な既製品ソケットです。断端形状に合わせてソケット高さ、周径、角度を調整でき、即時に装着することが可能です。
 
2023年10月2日のパシフィックニュースでは、川村義肢株式会社 義肢装具士の町井利春氏より、義肢装具士から見たコネクトTFの利点、可能性についてご報告いただきました。
>>「パシフィックニュース-コネクトTFの事例紹介-」はこちら
 
今回はコネクトTFを義足適応の評価用義足として取り入れられた、社会医療法人 生長会 ベルピアノ病院 理学療法士 増山奈津芽先生と、公益財団法人 浅香山病院 理学療法士 三ツ石一智先生に、導入による義足リハビリテーションや、患者様への影響についてお話を伺いました。

【義足適応症例】コネクトTFで早期荷重練習による断端へのメリット


社会医療法人 生長会 ベルピアノ病院 理学療法士 増山奈津芽 先生
https://www.seichokai.or.jp/bellpiano/
 
ベルピアノ病院は、①回復期リハビリテーション病棟②地域包括ケア病棟③医療療養病棟と3種類の病床機能を有しています。本院への下肢切断後の義足作製患者の紹介は、年間5件程度とそれほど多くはありません。
私自身は理学療法士2年目で、下肢切断後に義足を使用したリハビリは、これまで先輩の担当患者様に行う機会はありましたが、主担当としては初めての経験でした。


 

●対象患者様
患者様は70代女性、右下肢壊死性筋膜炎により大腿切断となり、リハビリ目的で当院へ転院された方です。様々な要因で急性期病院での入院経過が長くなり、転院時には断端に対するリハビリに加え、廃用に対する配慮が必要と考えていました。ベッドでの練習だけでなく、より早期から立位・歩行練習などを行いたい旨、担当義肢装具士へ相談したところ、コネクトTFの提案をいただきました。医師・本人にも同意を得た後、コネクトTFの導入となりました。
コネクトTFを使用したことで、その場で立位・歩行の評価ができました。その結果、義足歩行の実用性があると早期に判断し、練習を進めていく中で3週目には坐骨支持型のチェックソケットへ移行できました。ご本人の努力もあり、退院時には自宅内での歩行が獲得できました。

 
●コネクトTFを導入したメリット
やはりその場でソケットを調整し、すぐに練習を開始できたということです。調整から装着まで1時間もかからないため、リハビリ時間内にでき、非常にメリットを感じました。ギプスソケットでは、採型から調整まで2時間近くかかり、調整も当日中の完了が難しいこともあります。コネクトTFは短時間で装着でき、義足リハビリにつなげられることは大きなメリットです。
 
また、早期に立位による荷重が可能になり、断端形成や断端での荷重感覚の向上にも役立つように思います。他にも、シリコンライナーのピンの向きを合わせて装着する練習が早期からできたこともよかったです。これまでここに時間がかかる方がおられたのですが、コネクトTFで練習できていたこともあり、チェックソケットではスムーズに義足を装着することができました。

 
●チェックソケットへ移行した際の問題点
コネクトTFを使用しての歩行練習状況や断端ボリュームの変化などを考慮し、担当義肢装具士と相談の上、チェックソケットは坐骨支持型としましたが、これまでの歩行で坐骨支持の経験がないため、チェックソケットでの歩行時、坐骨部に痛みや違和感を訴え、はじめはうまく荷重することができませんでした。ただ坐骨部に柔らかいクッションを使うなど、さまざまな調整を続けたことと、ご本人の慣れもあり、最終的には痛みや発赤などもなく、ソケットを適合させることができました。
もしコネクトTFに坐骨支持キットのようなものがあれば、坐骨支持での問題点を早期に確認でき、スムーズに移行できるかもしれませんね。
 
●コネクトTFの問題点
それほど思いつきませんが、患者様は全身の廃用が進み、筋力も落ちていたため、最初はご自身の力では装着のハンドルを下ろすことができなかったことと、コネクトTF自体の重量でしょうか。ただし慣れてくるとスムーズになり両方とも問題になりませんでしたので、使用される方の状態によるかと思います。本症例においてはコネクトTF使用のデメリットは少なく、メリットの方が大きかったと思います。
 
●患者様の感想
ご本人はコネクトTFでのリハビリを楽しみにしておられました。ベッドでのリハビリからコネクトTFへ移行して、「やっと両足で立っている感覚」と、ワクワクしておられたのが印象的です。やはり早期から立位・歩行練習が行えることは長い入院期間におけるリハビリのモチベーションになっていたように思います。
 
●増山先生の感想
今まで担当としての義足作製・リハビリの経験がなかった私にとっては、「ソケットの適合までに時間がかかる義足は“難しい”」というイメージを抱いていました。ですが、コネクトTFを導入して練習を進めていく中で、ほかの整形疾患のリハビリと変わらないと思い始めました。断端に合わせてソケットサイズを変更できるため、毎日動作練習が可能になり、しっかり時間をかけ評価・練習ができるようになったためです。ソケットが合わずに訓練ができないと、患者様の身体・心の反応が分かりかねますが、コネクトTFであれば、早期から荷重訓練を行え、患者様自身の「歩きたい」というモチベーションも高まることが分かりました。もし次の機会があれば、またコネクトTFを取り入れてリハビリをしたいと個人的に思っています。

【義足リハビリの中止症例】患者様のモチベーション維持に有用なコネクトTF


公益財団法人 浅香山病院 理学療法士 三ツ石一智 先生
https://www.asakayama.or.jp/
 
浅香山病院は創立100年を越える歴史ある精神科病院のパイオニアであり、また地域医療を支える総合病院でもあります。以前は義足の扱いもありましたが、ここ最近は義足作製から関わることが少なくなってきています。今回は患者様が本院で手術・リハビリを希望されたという背景があり、切断とリハビリを担当しました。


 

●対象患者様
患者様は70代男性、糖尿病性腎症、週3回の透析患者様で骨髄炎により左大腿切断されました。もともと右下肢骨折で入院され、術後のリハビリを行っていましたが、嘔吐発熱が続き、約1ヶ月間の床上動作訓練のみで切断されました。この間で全身の廃用が進行し、起き上がり・端坐位・立位には介助が必要となりました。しかし、本人の「立ちたい」「歩きたい」という希望があり、義肢装具士に相談し、コネクトTFを導入することを決定しました。
 
装着後、介助での立位訓練を約3週間行いましたが、右下肢骨折・臥床期間の影響もあり右下肢優位での立位保持も難しく、また、断端の痛み・腫れを呈したこともあり、装着訓練は一旦中止しました。
 
●歩行困難な患者様へコネクトTFを使用した目的
何よりも本人の「立ちたい」「歩きたい」という意欲があったことが挙げられます。また、移乗動作の獲得や、身体の動かし方を忘れないようにしてもらうためには、義足を装着して行う方が有効だと思ったからです。義足をつけることで、切断前の身体の動かし方をイメージでき、より早くご自身の感覚を取り戻していただけます。
 
●コネクトTFのメリット
ギプスソケットやチェックソケットであれば、断端が変化してしまうと合わなくなりますが、コネクトTFは、ソケットを断端に合わせられるため、何度も調整しなおすことができる点がいいと思いました。ソケットはサイズ、高さ、角度など細かく調整できてありがたかったです。
 
また、介助が必要だったとはいえ立位が取れたことで、ご本人の「歩きたい」というモチベーションにつながったこともメリットに挙げられると思います。将来的に歩けるようになることは患者様にとっての生きがいですし、たとえすぐに歩けなかったとしても、車椅子への移乗など、自分の力で動ける見通しをもっていただけたことも、モチベーションの維持向上に大きな影響があったと思います。患者様もコネクトTFを装着する目的を理解してリハビリに参加しておられました。
 
●いったん訓練を中止された時の様子
立位での荷重訓練を行っていましたが、断端部の痛みと腫れが強くなったことで中止しました。糖尿病の患者様のため、傷を作らないよう、ひとまず断端の状態を良くすることを最優先にしました。なお、コネクトTFが原因での腫れや痛みではないと思います。
 
患者様には、義足適応を諦めるのではなく、いったん訓練を中止し、断端が落ち着いたらもう一度チャレンジしようと声掛けをしました。もし、ギプスソケットなどであれば、中止期間を挟むと断端形状が変化し、訓練再開時には適合せず、作り直しなどが必要な時もあるでしょう。ですが、コネクトTFであれば、ソケットを調整できるので、すぐに挑戦できます。そのことをお伝えすると、ご本人も前向きに訓練中止を受け入れられました。
 
●コネクトTFの問題点
問題点はそれほど感じませんでした。感想を挙げるとすれば、コネクトTFを使用して、まだ一症例目であったこともあり、どの程度の断端成熟で訓練に入るのが最も効果的なのか、本当に早期の訓練は効果的なのか、という点において今後検証が必要かと思っています。また、ソケットの調整をセラピストができるといいなとも思いました。コネクトTFを扱える義肢装具士が週に1度の来院であったため、「今、調整したい」という時に対応できなかったことがありました。セラピスト対象の研修などがあればと思います。
 
●三ツ石先生の感想
今回、コネクトTFを初めて導入しましたが、また使いたいと思いました。これまで述べたようにリハビリで利用することのメリットもありますし、切断前の方への精神的なサポートにもつながるのではと思います。新規切断者は精神的な負担も大きく、義足の知識もあまりないことから、不安を抱えておられることが普通です。長下肢装具などは病院備品があり患者様にお見せして説明することができますが、一般的に義足の備品はありません。ですがコネクトTFがあれば、義足のイメージをもちやすく、理学療法士は今後のリハビリなどの説明がしやすくなりますし、患者様も今後の見通しがもてるので、わずかでも安心していただけるようになるのではと思います。

まとめ

コネクトTFを義足適応の評価用義足として導入された2名の理学療法士の先生にお話を伺いました。
お一人は義足適応となり仮義足を製作されて退院、お一人は義足訓練をいったん中止された事例でした。何よりも印象的だったのは、両先生ともに「早期に義足で立位が取れたことで、患者様の歩くことへのモチベーションが高まった」と仰っておられたことです。コネクトTFが患者様の義足リハビリテーションへの意欲向上に寄与できたのであれば、これ以上に嬉しいことはないと思いました。
またコネクトTFの使用で、早期から断端荷重が可能となり断端の成熟が進んだり、平行棒内での義足リハビリテーションも早期に実施可能になることで、患者様が歩行のイメージを取り戻しやすくなったりするなど、コネクトTFのメリットをあらためて確認することができました。
 
コネクトTFは義肢装具士による調整が必要です。導入をご希望される方はご担当の義肢装具士にご相談いただきますよう、お願いいたします。またコネクトTFの詳細は、製品サイトおよび弊社の教育サービス「Kawamuraアカデミー」でも説明しております。ぜひご確認ください。

・コネクトTF製品ページ
https://www.p-supply.co.jp/ossur/catalog/conecttf

・Kawamuraアカデミー オズールカレッジ
https://www.p-supply.co.jp/seminars/index.php?act=detail&sid=275&place_id=342&cat_id=11

 

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