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パシフィックニュース

コネクトTF ―即時装着可能な大腿義足用既製品ソケット―

義肢

リハビリテーション

コネクトTF ―即時装着可能な大腿義足用既製品ソケット―

これまでの臨床例からその特徴・利点についてのまとめ

パシフィックサプライ株式会社
新規事業開発推進部
義肢装具士 奥野 麻弥

2024-08-01

コネクトTFはオズール社が提供する、低活動の大腿切断者向けの調整可能な既製品ソケットです。断端に合わせてソケット深さ、周径、断端形状に沿うように支柱の角度を調整でき、即時に装着することが可能です。
 
パシフィックニュースではこれまで、義肢装具士と理学療法士、医師とそれぞれの立場から、コネクトTFの利点や課題、今後の可能性についてご報告いただきました。
 
>>2023年10月2日号 コネクトTFの事例紹介
>>2024年 1月5日号 理学療法士からみたコネクトTF導入の利点
>>2024年4月1日号 医師からみたコネクトTF導入の利点-生活期義足ユーザーへのコネクトTFの試用経験-
 
今回あらためてコネクトTFの製品概要について整理するとともに、使用例から見た利点と課題について報告します。

1.はじめに

高齢で低活動の切断者は、認知・聴力・視力・体力・バランス・手指の巧緻性の衰えや、自己装着の難しさなどから義足が適応しないとみなされることがあります。また、浮腫のある新規切断者は、ソケットの製作時期が定まらず、義足リハビリテーションへの移行が難しかったり、ソケット適合に時間がかかったりすることで、十分なリハビリテーションができないこともあります。義足が適応した切断者でも、断端ボリュームの変化により在来型のソケットでは痛みが生じ装着困難になり、日常生活で義足を使いこなせないケースもあります。
コネクトTFはハンドルのon/offによりソケット周径が変えられるため着脱しやすいという利点があります。また、ソケット容積が調整可能なため断端成熟を待つことなく装着でき、ソケット製作・適合に時間を要しません。そのため、義足の適応評価や、早期リハビリテーションが可能となります。これまで義足を諦めていた・苦労をしていた大腿切断者に自信をもって使っていただける製品です。


2.コネクトTF製品概要

<対象者>

  • 立位の状態で在来型のソケットを自己装着できない切断者
  • 浮腫のある新規切断者
  • 快適性の問題や装着方法の問題により在来型のソケットを使用できない切断者
切断レベル 大腿用
活動レベル K1または低いK2
K1の可能性があるK0
義足に加わる衝撃
体重制限 125kg

<ソケット情報>
重量 1.5kg
ライナー Iceross®大腿用ロッキングライナー
※コネクトTFにクラッチロック内蔵
調整可能 ①高さ(深さ)
②周径(テンション)
③断端形状に合わせた角度
サイズ選択 コネクトTFは以下、4種類があります。
①Mサイズ-ショート ②Mサイズ-スタンダード
③Lサイズ-ショート ④Lサイズ-スタンダード
Iceross®大腿用ロッキングライナーと断端長から適するサイズをお選びいただきます。
【Iceross®大腿用ロッキングライナー】
・サイズ32まで:Mサイズ
・サイズ34から:Lサイズ
【断端長】
・20~24cm:ショート
・24~28cm:スタンダード
※エレベーションキットの使用で断端長18cmより使用可能
例)ライナーサイズ34、断端長23cmの場合、「Lサイズ-ショート」

3.コネクトTFの利点 ~ユーザー、回復期病院(医師、理学療法士)、義肢装具士にとって~

コネクトTFが有するさまざまな特徴の中から、ユーザー、回復期病院、義肢装具士それぞれの利点を紹介します。
 

<ユーザーにとっての利点>
1)座位が取りやすい
低活動の方は特に座位時間が長くなるため、座位時の快適性は非常に重要です。コネクトTFは坐骨周りにかからず、柔らかい近位部ブリムを備えたソケットにより、座位が取りやすく、快適性が向上します。
 
2)着脱がしやすい
ハンドルのon/offでソケットの周径が約2.5cm拡大します。クラッチロックの使用により座位のまま着脱することができ、安全かつスムーズな着脱が可能です。


3)適合に関わる愁訴が少ない
ソケット容積が調整可能なことにより、ソケット内に断端が落ち込むことでできる傷を防止することが可能です。在来型のソケットで難渋されていたユーザーの課題解決につながります。
 
<回復期病院(医師、理学療法士)にとっての利点>
1)確実な義足の適応評価が可能
コネクトTFは患者の断端に合わせてソケットを調整可能なため、浮腫がある状態でもソケット装着が可能です。そのため、早期に義足が適応するかの評価を行うことができます。


2)義足のリハビリテーション計画の立案・実行がスムーズ
義足の適応評価後、適応した切断者にはすぐにリハビリテーションが開始できます。また、断端成熟に伴う周径変化もソケットが対応可能なため、ソケットの調整で義足リハビリテーションを止めることなく、リハビリテーションの計画・実行が容易になります。
 
<義肢装具士にとっての利点>
1)2度の訪問でソケット適合と納品が可能
調整可能な既製品ソケットにより、採型・製作・適合後の修正が不要となります。
1度目の訪問では断端の状態や義足長などの情報を確認し、ライナーやコネクトTFのサイズを決定します。膝継手、足部を選定し、最短で2度目の訪問で義足の装着が可能となります。
 
2)浮腫がある状態でも装着可能
在来型のソケットではソケット容積の調整は難しいため、断端に浮腫がある時にはソケット装着ができず、義足リハビリテーションへの移行が難しい場合があります。コネクトTFはユーザーの断端の状態に合わせてソケット容積の調整ができるため、浮腫がある状態でも装着ができ、早期リハビリテーションへの移行と義肢装具士の調整時間の短縮が可能です。
 
3)ソケット適合の客観的な数値記録ができるので、ソケット適合の標準化が可能
ソケット深さや支柱の調整の際、数値で確認し、記録することが可能です。また、コネクトTFは適合の開始時に1Nmのトルク値でテンションをかけ、患者の状態により義肢装具士の判断で最終トルク値を決め、それを記録します。コネクトTFから別のソケットに移行したあと、修理のためソケットを引き上げることになっても、コネクトTFを使うことで適合再現が可能となり、ソケット適合を標準化することが可能です。

4.コネクトTF使用例

2023年8月~2024年6月にかけてコネクトTFを使用された10事例をもとに、コネクトTFの使用方法についてまとめました。

<ユーザー情報>

  使用期間 年代 性別 切断原因 使用時期 使用結果
1 2023年8月~9月 70代 女性 右下肢壊死筋膜炎 回復期 義足の適応あり
2 2023年10月~11月 70代 男性 糖尿病 回復期 義足不適応
3 2023年10月~12月 50代 男性 糖尿病 回復期 義足の適応あり
4 2023年10月~11月 60代 女性 糖尿病 急性期 義足の適応あり
5 2023年10月~12月 50代 男性 糖尿病 回復期 義足の適応あり
6 2023年11月~12月 30代 女性 骨肉腫 生活期 使用せず
7 2024年2月~3月 70代 男性 糖尿病 回復期 義足の適応あり
8 2024年2月 40代 男性 糖尿病 回復期 義足の適応あり
9 2024年3月~4月 20代 男性 交通事故 回復期 義足の適応あり
10 2024年5月~6月 50代 男性 糖尿病 回復期 義足の適応あり
 
<コネクトTF使用目的>
10事例中8事例あった回復期での使用目的としては、主に以下の内容が挙げられました。
①義足適応の評価
②早期の義足装着・立位荷重練習による断端成熟の促進
③早期の義足装着・立位荷重練習による筋力強化・屈曲拘縮予防

回復期では、すべての事例で義足適応評価のためにコネクトTFが使用されました。断端に浮腫があっても装着できるため、早期に義足適応評価が可能になります。ちなみに8事例中、義足適応となったのは7事例、不適応となったのは1事例でした。不適応の1事例については健側優位での立位保持が難しく、また断端の痛み・腫れを呈したこともあり、義足リハビリテーションが一旦中止となったケースです。詳しくは2024年1月5日号のパシフィックニュースで紹介していますのでご参照ください。
 
急性期の1事例は回復期リハビリテーション病院へ転院するまでに仮義足の完成を希望しておられ、ソケット製作期間中にコネクトTFを使用しての立位荷重練習や断端形成を目的に活用されました。
 
生活期の1事例は断端ボリューム変動が激しく、在来型のソケットで難渋しておられた方です。ソケット容積を変えられることで常に適合がよく、試用期間中のユーザー満足度は非常に高かったのですが、事情によりコネクトTFへの作り替えは見送りになりました。
 
<回復期でのコネクトTF使用経過>
回復期での事例において、最も多い使用経過は以下の通りでした。
①準備期間(1~2週間)
・ライナー採寸・試着
・コネクトTF、膝継手、足部手配 など
②義足の適応判断(即日)
③コネクトTFを使用しての立位・歩行練習/断端形成(3~4週間)
④チェックソケットへ移行(1~2週間)
⑤治療用義足へ移行(1~2週間)
⑥退院
早期の立位・歩行練習とライナーによる断端形成が同時進行できることから、チェックソケットでは不適合による作り替えがありませんでした。後述の問題点でも記載しますが、コネクトTFから坐骨収納型のチェックソケットに変更したことで、坐骨周りの違和感・痛みを訴える方がおられました。ただし、チェックソケットを1週間使用することで、多くの場合は違和感が軽減し、チェックソケット装着の翌週には治療用ソケットの製作に移行できました。なお、ソケット製作期間中は、チェックソケットを引き上げることになりますが、再度コネクトTFを使用することで、義足リハビリテーションを止めることなくスムーズに治療用義足へと移行することができていました。

約2か月間コネクトTFを使用したケースもありました。断端末の状態が悪く、刺激で激しい疼痛があり荷重困難とみなされましたが、コネクトTFは適切なコンプレッションにより立位荷重が可能でした。また、断端の状態に合わせて定期的にソケットを調整したことで、コネクトTF使用中は常に立位荷重ができ、義足リハビリテーションを行うことができました。断端形成も進み、2か月後には坐骨収納型のチェックソケットに移行でき、屈曲拘縮などの二次障がいもなく、治療用仮義足の製作にも進めました。
 
<理学療法士の感想(一部)>
  • コネクトTFを使用したことですぐに立位・歩行の評価ができた。
  • 周径変化に対応し、装着後の修正がほぼない(あっても短時間でできる)ので、リハビリ時間を有効に活用できることにメリットを感じる。
  • 何度も調整し直すことができる点がよい。
  • 早期に立位が取れることで、患者の「歩きたい」というモチベーションにつながる。
  • ソケット調整時に義肢装具士が持ち帰ってしまうと義足でのリハビリができなくなるが、それがないことに安心感がある。 
 
<義肢装具士の感想(一部)>
  • これまではソケットを製作しなければ歩行動作の獲得が可能かどうか確認できなかったが、評価用ソケットとしても、早期リハビリテーション用義足ソケットとしても非常に有効。
  • 義肢装具士の経験値に依存しない大腿義足の提案が可能になった。
  • ドクターにすぐに義足適応を判断してもらえることに価値がある。
  • ソケット高さが低く坐骨にかからないため、股関節の伸展運動がしやすく筋力トレーニングにもつながるのではないかと感じる。 
 
<今回の事例から抽出した問題点>
多くの義肢装具士が課題として、「チェックソケットが坐骨収納型だった場合、コネクトTFから移行した際に坐骨部での違和感・圧痛がある」ことを挙げられました。今回、回復期で義足適応となった7事例中4事例でその訴えがありました。慣れることで違和感が軽減する方もおられましたが、ソケット後面を可能な限り下げる形状で仕上げたケースもありました。
チェックソケットが坐骨収納型の場合、事前に違和感についての説明を患者に行うことや、坐骨荷重のイメージをもってもらう体験を行うなど、スムーズな移行へのしかけが必要だと思われます。また、違和感が軽減しない場合などは、坐骨で支持しないタイプのソケットの使用も考えられます。

5.まとめ

今回、コネクトTFの製品概要について整理するとともに、使用例から見た利点と課題を報告しました。コネクトTFは座位のまま容易に装着ができるため、高齢の低活動者に対して日常生活で使用していただける義足です。また、ソケット容積を変更できることで、浮腫があり断端ボリュームが変化する新規切断者が早期に義足装着することも実現します。これらにより義足適応評価や、早期リハビリテーションを可能とし、これまでであれば義足歩行を諦めざるを得なかった切断者の義足使用の可能性にもつながります。
義肢装具士にとっても簡易ソケットなどに比べて作業時間の短縮と、経験値に依存しない大腿義足の提案が可能となり、義足適応を確実に評価できるという大きな利点があります。
コネクトTFは現在完成用部品ではありません。ご購入検討に向けて事前にお試しいただけるよう、パシフィックサプライではレンタル品(有償)をご用意しています。新たな大腿義足の一つとして、ぜひ一度ご確認ください。

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