パシフィックニュース
支柱設計アプリの活用による義肢装具士が働きやすい環境づくり
装具

有園義肢株式会社
義肢装具士 江藤真一
2025-03-03
はじめに
近年、脳卒中治療ガイドラインにおいて「早期の立位・歩行訓練」が重要視され、2021年のガイドラインでは歩行機能を訓練するための長下肢装具の使用についても記載されるなど、リハビリテーションにおける「装具療法」が注目を集めています。しかし、長下肢装具の製作は高度な技術や時間を要するため、歩行機能訓練のための仕様要求に応えた装具の迅速な提供には多くの課題がありました。短納期を叶えるための従業員の負担が大きく、人手不足や労務管理、働き方改革の観点からも効率化が求められる状況にあります。
こうした中、弊社が提供している支柱設計アプリシステム「Photo Trace」を、単なる設計効率の向上だけでなく品質向上、顧客満足さらに義肢装具士の労働環境という課題を解決する一助としても現場で活用されている事例を、有園義肢株式会社の江藤様に伺いましたのでご報告します。
支柱設計アプリを導入されたきっかけを教えてください。また、アプリは当初のご期待を超えることはできたでしょうか?
元々、長下肢装具の処方がとても多い病院があって、そこでは業務時間が長くなり帰社が遅くなることもしばしばありました。その医療グループで新たな病院ができることになり、そうなると新たに装具の処方数が増えるのは明らかで、何とか業務効率化を図らないとパンクしてしまうと考えたのがアプリ導入のきっかけです。今は主に3つの病院で支柱設計アプリを導入していて月14、15本ほど注文がありますが、そのすべての設計にアプリを利用しています。
正直に言うと、導入時にはそこまで高い期待はしていませんでした。というのも、設計は私が行うので現在の業務に作業がプラスで発生してしまうと考えていたからです。それが実際に導入してみると、帰社後の設計業務は10~15分ほどかかりますが、長下肢装具1本の計測に対応する時間が減り、装具の仕様によっては、従来の約60分から約10分へと大きく短縮することができました。これにより病院の滞在時間も少なくなりました。
現場での作業時間が予想以上に短縮されてよかったです。その他にもアプリ導入の成果として感じられたことはありましたか?
患者様のご負担が軽減されたことと適合がよくなったことですね。現場対応時間が約60分から約10分に短縮したと先ほどお話しましたが、以前はセラピストの方に計測する場所まで患者様を連れてきていただいて、対応が終わった後に迎えに来てもらうため、またセラピストの方を呼んだりすることを含むと、お1人あたりトータル60分ほどかかっていました。それが、支柱設計アプリだと、患者様の下肢の写真を元にデジタルトレースを作製するためベッド上でも対応できますので、計測のための拘束時間を10分にすることも可能です。患者様にとってのご負担が軽減されるだけでなく、拘束時間が減った分をリハビリテーションに充てられるというメリットもあります。また、アプリ導入後は適合もよくなり、ほとんど持ち帰ることなく装具を納品して、リハビリテーション訓練に利用いただけるようになりました。特に以前は結構多かった膝回りのクリアランスの修正を行うことはなくなりました。
長下肢装具の処方が多い病院ではさらに効率化に役立ちそうですね。
1日に何人もの患者様の長下肢装具を計測する場合は、支柱設計アプリを使わないと回らないような状態です。同じことの繰り返しになりますが、以前は計測に時間がかかっていましたが、今はベッド上での写真撮影対応で済むこともあるので、本当に効率的で助かっています。長下肢装具が日常的に多く処方される病院だと、特に支柱設計アプリの活用効果が高いと思います。もちろん処方数が少なくても支柱設計アプリを使用する価値は十分にあると思います。
長下肢装具の計測現場での効率化と患者様の負担軽減の他にも、アプリ導入で得られた成果はありますか?
支柱設計アプリを使用することによる業務時間短縮や患者様の負担軽減は、結果として義肢装具士の働き方改革にもつながっています。病院から帰る時間が2時間ほど早まるなど労働環境の改善が実現できたことに加えて、適合精度が高まり売上も向上しました。
また、支柱設計アプリの導入は製造現場にも変化をもたらしました。従来の陽性モデルを用いた製作では、製造担当者に高い技術力が求められ、作業に時間がかかることや適合がうまくいかずに持ち帰り修正することがありました。支柱設計アプリを使用すると、デジタルトレースを作製することにより正確な設計図が提供されるため、製造作業が効率化されます。今後は支柱設計アプリを使って設計ができる社員を増やし、他の病院でも導入して社内での活用を増やすことで、より効率的な製造作業が可能になればと思っています。実際に製造担当者からは「設計データがすぐに届くので、陽性モデルを待たずに作業に取り掛かれる。他の病院での導入も検討してほしい」という声が上がるほど、その効果が実感されています。
アプリを単なる支柱設計効率化ツールではなく、義肢装具士と製造担当者のチーム全体の効率化や働き方改革の実現に向けた重要な一歩を支えるツールとして活用いただきありがとうございます。
支柱設計アプリは、患者様、義肢装具士、製造担当者、義肢装具製作所の経営者、そして医療現場全体にメリットをもたらすツールであり、すべての関係者にとってのWin-Winが叶うシステムだと思います。
取材を終えて
義肢装具士の働き方改革に貢献できる業界全体のスタンダードを目指して
今回、有園義肢株式会社様にお話を伺い、支柱設計アプリが特定の業務を改善するためのツールにとどまらず、義肢装具の業界で働く皆さまの負担軽減や離職率の低下、人材の定着にも寄与する可能性を秘めていると感じました。さらに多くの病院や製作現場でこの支柱設計アプリが新しいスタンダードとなり、それぞれの課題を解決する小さな革命をもたらすことを目指して私たちは改良を続けていきます。支柱設計アプリがもたらす可能性に少しでも興味を持たれましたら、お気軽にお問い合わせください。
上記お問合せ以外にも、セントラル営業・推進課:佐々木までご連絡いただけますと幸いです。支柱設計アプリをツールとしたサービスのご説明や、御社のニーズに合ったご提案をさせていただきます。
短納期治療用KAFO問い合わせ先セントラル営業・推進課 佐々木 崇090-8797-4375/sasaki-t@p-supply.co.jp ** お気軽にご連絡下さい ** | ![]() |
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