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HANDS(ハンズ)療法の取組み
装具
2012-07-01
脳卒中など脳血管障害による片麻痺上肢患者に対する新しい治療法として随意運動介助型電気刺激装置(IVES=アイビス)と手関節装具とを使った「HANDS(ハンズ)療法」により上肢機能の改善が大きく認められ注目を集めている。
同療法に取り組んでいる慶応義塾大学医学部リハビリテーション医学教室専任講師の藤原俊之先生に「HANDS(ハンズ)療法」の取り組みについて聞いた。
(取材 石田康二)
外観写真
片麻痺上肢の機能改善に向けて
片麻痺による歩行障害については、杖の補助や装具装着によりかなり実用性の獲得が得られているが、片麻痺上肢では、実用性の獲得にはかなりな手の巧緻性が要求されることと、健側の手だけで日常生活がこなせることにより、麻痺した手はますます動かさなくなる傾向となり、上肢機能の改善は困難なのが現状であった。
両手が使えれば日常生活の場は広がり、より快適な生活が可能なことから、藤原先生は以前より装具を使った片麻痺上肢の機能改善を実践。当時慶応義塾大学理工学部(現・早稲田大学人間科学学術院)の村岡慶裕先生が開発した随意運動介助型電気刺激装置に強い関心を持ち、ハンズ療法を考え出し実践を重ねてきた。
ハンズ療法について
ハンズ療法は、通常のリハビリ訓練では回復が厳しい中程度から重度の患者に対して麻痺した上肢に携帯型の随意運動介助型電気刺激装置と手関節固定装具を1日8時間、3週間つけ、リハビリの訓練時だけでなく日常生活でも麻痺した手を使う頻度を上げることで上肢機能の改善を目指す治療法。
片麻痺患者の多くは指や手を曲げることは出来ても伸ばせなかったり、つまむことが出来ない場合が多く、握る、つまむ、開くという動作ができれば日常の生活での使用が可能になる。
麻痺した手を自ら動かそうとすると脳から神経を通り微弱な電気信号が筋肉に伝わる。通常の電気刺激装置とは違い、随意運動介助型電気刺激装置(アイビス)は、この微弱な電気信号を感知し、随意筋電量に比例した電気刺激を神経を通してマヒした筋肉に送り返し筋肉の随意収縮を促すシステム。これを繰り返すことで障害を受けた神経回路も徐々に電気信号が伝わりやすくなり、改善が見込まれる。
一方、手関節装具は、手首を固定し筋肉の緊張をコントロールして指を伸ばしやすくし、さらにつまみやすいよう機能的な手の形に整えるためのもの。装具を使うだけでも手の機能を改善することができる。
日常生活における麻痺手使用の大切さ
これまで200名以上の患者さんに日中(朝9時~午後5時)の8時間、3週間装着してもらった。この結果、日常生活の上肢実用度の改善のほか、手指運動機能、肩・肘運動機能とも有意な改善がみられた。
また、治療前、「湯のみを口へ持っていく」「本のページをめくる」ことがほとんど出来なかった中程度から重度の人でも治療3カ月後には半分以上の人がこれらの動作が可能となった。さらに治療後3カ月たっても改善は維持できていた。
補助的にでも麻痺した手が使えると生活の幅が広がる。ハンズ療法は患者さんの持っている能力を引き出しやすくする手段で、機械を使えばよくなるのではなく、麻痺している手を使うことを3週間のハンズ療法で覚えていただくことが大切。患者さんに適切な指導をすることで機械を外しても生活の中で麻痺した手を補助的に使えるようになる。そうすることで手の可動域が広がり機能改善が期待できるのです、と藤原先生は、日常生活での麻痺手の使用の大切さを強調されている。
近年、随意運動介助型電気刺激装置は小型で携帯可能なサイズに進化しており、装具も通気性のいい一体型に改良され使いやすくなっている。ハンズ療法が患者さんの生活に喜びや楽しさをもたらす一つのきっかけになればと、藤原先生は話している。
HANDS therapy
随意運動介助型電気刺激装置(IVES) と手関節装具を1日8時間装着し、日常での麻痺肢の使用を促す(3週間)
IVES
筋電導出電極と電気刺激電極は同一
→促通したい筋に正確に電気刺激を与えることが可能
随意筋電量に比例した電気刺激が可能
+
手関節装具(手関節中間位・対立位の保持)
/ Long
/ Short opponens
藤原 俊之先生について
慶応義塾大学医学部リハビリテーション医学教室専任講師
平成5年3月福井医科大学卒、同年5月慶応義塾大学医学部研修医、平成14年4月ロンドン大学付属国立神経研究所リサーチ・フェロー、同15年4月国立東埼玉病院リハビリテーション科医長、平成17年9月慶応義塾大学医学部リハビリテーション医学教室専任講師。医学博士、日本リハビリテーション医学学会専門医、同学会指導医、義肢装具等適合判定医ほか。日本リハビリテーション医学会(評議員、脳卒中治療ガイドライン策定委員会委員長)、日本脊髄障害医学会、会員ほか。著書=上肢リハビリテーション評価マニュアル(医歯薬出版)ほか多数。
藤原 俊之先生
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