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義足リハビリテーションの革新 ~江東リハビリテーション病院のダイレクトソケット導入~
義肢
リハビリテーション
医療法人社団 巨樹の会
江東リハビリテーション病院 リハビリテーション科 副主任
理学療法士 上海隆志
2023-09-15
ダイレクトソケットは採型とソケット製作が一つのプロセスになっており、極めて短時間で義足の装着・歩行が可能となる下腿義足用TSBソケットです。
今回は、江東リハビリテーション病院の理学療法士、上海隆志さまに、ダイレクトソケット導入による義足リハビリテーションへの効果についてお話を伺いました。江東リハビリテーション病院では株式会社日本義肢製作所の義肢装具士と連携し、採型の翌日には仮義足を装着して義足リハビリテーション開始が実現しています。
医療法人社団 巨樹の会
江東リハビリテーション病院 リハビリテーション科 副主任
理学療法士 上海隆志(わみ たかし)さま
【略歴】
2014年 八千代リハビリテーション学院 理学療法学科卒
2014年 赤羽リハビリテーション病院
2017年 江東リハビリテーション病院
【資格・所属協会】
日本理学療法士協会 介護予防推進リーダー
東京都理学療法士協会 江東区支部部員
【社会活動】
江東区・墨田区介護予防事業
【江東リハビリテーション病院ホームページ】
https://koto-reha.com
義足リハビリテーションの概要について
江東リハビリテーション病院では、義足の症例は年間2~5件、2023年は現時点で3件の症例があり、うち2件はこれからダイレクトソケットを製作する予定です。ここ数年のうち、ほとんどの方が50代以上で、糖尿病性循環障害による切断が多くを占めます。
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年(7月時点) |
2件 | 4件 | 3件 | 5件 | 3件 |
ダイレクトソケットは、2022年8月に製作した下腿の仮義足から導入しました。導入して以降、仮義足は全てダイレクトソケットで製作をしています。現時点でダイレクトソケットが適応外になった方はいません。ただし、断端が球根状の場合はソケット着脱が困難になることから、ダイレクトソケットは使用しないと思います。とはいえ、それはほかのソケットでも当てはまりますし、私たちPTとしては切断後の断端形成に重点を置いています。
ダイレクトソケット導入の決め手は短納期。品質は問題なし
ダイレクトソケット導入の決め手はやはり製作スピードの速さです。従来の方法では、採型をしてチェックソケットから仮義足納品までに、2~3週間はかかっており、その間に断端に傷や状態の変化が起こり、仮義足の適合に難渋することがありました。そうなると仮義足を装着してリハビリ開始までに、採型から1ヶ月以上かかる人もおり、リハプログラムが立てにくく、過去にはそれで仮義足に移行できないケースもありました。
しかし、ダイレクトソケットでは最速で採型の翌日には仮義足が完成します。数日では断端形状は大きく変化しないため、適合がよく、傷もできにくくなっています。
導入当初、日本義肢製作所の義肢装具士さんに「3日でできる」と言われ、「ずいぶん早いな、本当にできるのだろうか」と思っていました。またこれまでの仮義足と比較して、強度や適合などの品質面についても懸念していましたが、何も問題ありませんでした。むしろ早くできる分、適合がよく、チェックソケットでは傷や痛みを訴えられる患者さんをよく見ていましたが、それが軽減されたことはとても驚きでした。
病院やPTだけでなく、患者さんにとってもメリットが多いダイレクトソケット
病院のメリット
従来の仮義足では完成までの期間が曖昧であったこともあり、リハビリの計画が立てにくかったり、せっかく装着してもすぐに退院になってしまうケースがあったりしましたが、ダイレクトソケットは義足の納品日が見通せるため、退院支援のコントロールがしやすいというメリットがあります。
PTのメリット
私たちPTにとってダイレクトソケットを導入するメリットは、適合性の高さからソケットの中での動揺が少なく、荷重訓練や歩行訓練がしやすくなったことが挙げられます。また切断に伴う周辺症状への効果もあります。例えば、入院から仮義足納品までの期間が短いので、廃用症候群を起こしにくくなっています。そして断端に荷重した方が、幻肢痛が減少すると言われているのですが、ダイレクトソケットにより早期荷重が可能になり、患者さんの負担が減っているのではないかと考えています。患者さんのメリット
患者さんへのメリットはほかにもあります。従来のソケットと比べて傷や痛みが少ないため、義足を使用するモチベーション維持にもなります。痛みに関しては全くないわけではないのですが、従来よりも軽減しているように思います。また、費用面もこれまでのソケットよりも安価となります。リハビリが早期にうまくいくと入院費用も少なくなり、金銭的な負担が軽減することは患者さんにとって大きなメリットです。とはいえ、当院では今のところ入院期間が短縮したケースはありません。というのも、入院でしっかりとリハビリをしたいという患者さんが多く、早期退院を希望されなかったからです。ただし従来のソケットでは患者さんの状態によってはリハビリにあまり時間が取れないまま退院となることもあったため、入院期間中のリハビリの成果は大きく異なっていると言えます。早期に仮義足を装着しての立位訓練や歩行訓練が実施できることで、義足装着下でのADL、IADL訓練(床からの立ち上がり、入浴、調理、掃除、洗濯動作など)や復職に向けてのリハビリを実施する期間を長くとることが可能になります。そのため、入院期間は変わらなくても提供できるリハビリの質は高まっていると感じています。
ダイレクトソケットの課題
課題としてはあまり思い浮かびません。強いて挙げるとすれば、ダイレクトソケットは製作時に専用治具を使って断端に圧をかけて形をとるため、圧迫されることによる痛みを訴えられる方がおられる点です。痛みの感じ方は患者さんによって異なるところですが、ここで義足に対してネガティブなイメージがつくと、本義足製作も乗り気ではなくなる可能性があるため、この点の考慮は必要かと思います。
また、納品後に断端が痩せて脛骨末端に痛みが出る方もおられます。骨端にパッドを当てるなどして対応してもらいますが、これについては通常のソケットでも同様のため、ダイレクトソケットならではの課題というと、先述した製作時の圧迫くらいになります。
ダイレクトソケットの導入を検討している 理学療法士、義肢装具士へのメッセージ
ダイレクトソケットを導入するためには、義肢装具士には特別な研修が必要だと聞いています。それに躊躇される方もおられるかもしれませんが、従来よりも納品までの短さ、リハビリのしやすさなどから、義肢装具士にとっても、PTにとっても、必ずメリットを感じられると思います。そして何より、患者さんの負担を少しでも軽減できる、これが私たち義足リハビリテーションに関わる人間にとって、最も大切だと思います。まずは1症例からでもやってみていただければと思います。
製品担当者より
チェックソケットを不要とし、短納期を実現するダイレクトソケット。断端上で直接採型すること、そして短期間でソケットが完成することで、高い適合性を誇ります。
初めて義足を装着される患者さまにとって、ソケット不適合による傷や痛みの発生は、義足歩行への拒絶にもつながりかねません。これを防ぎ、早期リハビリに移行できるダイレクトソケットの良さを、改めて確認することができました。
ダイレクトソケットを製作するには専用ツールであるダイレクトソケットツールキットへの理解や技術の習得が必要ですが、技術が定着するまでパシフィックサプライにて全面的にバックアップいたします。専用ツールはサブスクリプション対象となっており、安心してご利用いただけます。
・【パシフィックでサブスク】ダイレクトソケットツールキット/義肢製作所さま向け
https://www.p-supply.co.jp/products/index.php?act=detail&pid=772
パシフィックサプライ専任義肢装具士によるパシフィックニュース「ダイレクトソケット 特徴と利点」および弊社の教育サービス「Kawamuraアカデミー」でもダイレクトソケットについて説明しております。ぜひご確認ください。
・パシフィックニュース「ダイレクトソケット 特徴と利点」
https://www.p-supply.co.jp/topics/index.php?act=detail&id=814
・Kawamuraアカデミー オズールカレッジ
https://www.p-supply.co.jp/seminars/index.php?act=detail&sid=275&place_id=342&cat_id=11
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