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歩行トレーニングにおける歩行訓練ロボットWel-walk®️と長下肢装具の在り方を考える

装具

歩行トレーニングにおける歩行訓練ロボットWel-walk®️と長下肢装具の在り方を考える

歩行トレーニングにおける歩行訓練ロボットWel-walk®️と長下肢装具の在り方を考える

社会医療法人甲友会 西宮協立リハビリテーション病院
リハビリテーション科 部長 勝谷将史

2019-08-16

はじめに

TOYOTA自動車株式会社製、歩行訓練ロボットWel-walk®️は重度麻痺を呈する片麻痺患者への歩行訓練ロボットとして開発され、臨床現場における歩行トレーニングの新たな選択肢となっている。従来、重度片麻痺患者への歩行訓練は長下肢装具(以下KAFO)を使用した立位、歩行訓練が行われ、脳卒中ガイドライン2015においてもグレードAで推奨されているが、Wel-walk®️(写真1)を使用した歩行トレーニングとKAFO(写真2)を使用した歩行トレーニングの比較に関する学術的な検討は、平野らがWel-walk®️の効果として歩行自立までの期間短縮を報告している。診療報酬にアウトカム指標を導入された回復期リハビリテーションにおいて、短期間でFIMの点数を改善させる可能性を秘めたWel-walk®️による歩行トレーニングは魅力的であり、当院でも適応症例には積極的にWel-walk®️を使用した歩行トレーニングを行なっている。しかしながら、Wel-walk®️での歩行トレーニングのみで理学療法は完結する訳ではなく、2単位をさくWel-walk®️での歩行トレーニング以外の時間、どのようなリハビリテーションを提供することが望ましいのか十分に検討する必要があると考える。
 

”TOYOTA自動車株式会社製、歩行訓練ロボットWel-walk®️脳血管疾患者に対するリハビリ、イメージ図
 写真1


KAFO脳卒中ガイドラインにおいて早期からの装具を使用した立位、歩行訓練が推奨される。イメージ図
写真2

Wel-walk®️の使用における議論

2019年6月12日から16日に神戸で開催された第56回日本リハビリテーション医学会においてもWel-walk®️に関する発表が多く認められた。筆者も「Wel-walk®️使用による長下肢装具の在り方に関する検討」と題し発表を行い、セッションでの座長を務めたが、このセッションにおいてもWel-walk®️の使用に関して様々な議論が交わされた。

議論の内容は

・歩行訓練はWel-walk®️のみで完結できるのか
・KAFOの処方は必要か
・KAFOとの併用はどうあるべきか
・AFOの処方のタイミングはどう考えるのか
・Wel-walk®️使用以外の訓練内容はどう進めるのか
・パラメーターの設定はどう考えるのか


など活発な質疑応答が交わされた。

Wel-walk®️の使用は効果的であり、実際臨床現場においてもその効果は実感できる。しかしながらロボットでの訓練に対して拒否感を示す患者さんや、Wel-walk®️よりもKAFOでの歩行トレーニングの方が良好な筋収縮やパフォーマンスを得られる患者さんも存在する。またWel-walk®️使用におけるパラメーターの設定にも問題がある可能性は否定できず、Wel-walk®️を使用する医師・療法士の技術向上も課題の一つである。

歩行トレーニングにおける効果的なWel-walk®️の併用を考察する

回復期において患者に提供される理学療法の単位のうち、当院は2単位をWel-walk®️での歩行トレーニングに割いているが、歩行トレーニングをWel-walk®️のみで完結することは少ない。実際、Wel-walk®️での2単位以外に1〜2単位を理学療法として提供し、KAFOを使用し平行棒や後方介助下での歩行トレーニングを併用することが多い。さらには基本動作訓練やROM訓練、筋力増強訓練、コンディショニングに必要なストレッチなども行なっている。

重度片麻痺者へのリハビリテーションにおける運動療法に重要となるのは訓練の量、課題特異的な訓練内容、脳の可塑性である。Wel-walk®️は運動学習理論に基づき多くのフィードバックシステムを有し、さらにはKAFOでの歩行トレーニングと比較し短時間で歩行距離を稼ぐことができる。ではWel-walk®️を使用しない時間にどのような運動課題を提供する事が効果的な訓練プログラムとなるのだろうか。

KAFOを使用した平行棒や後方介助での歩行訓練に関して考えてみる。Wel-walk®️での歩行はパラメーターを設定する事で課題の難易度を設定し、達成される歩行は前型歩行となっており、膝は固定されず遊脚期に屈曲している。これに対して多くの場合KAFOの膝継手はリングロックで処方される事が多く平行棒や後方介助下での歩行訓練では膝は伸展位で固定されてしまっている。これは歩行課題としてWel-walk®️とは別の運動課題となっており、類似課題として歩行を提供するのであれば平行棒や介助下での歩行課題を膝が屈曲可能なものにする方が望ましいのではないだろうか。その為にはKAFOの膝継手にSPEX膝継手を使用する方法、または新しいデバイスであるGS KNEEを使用する事でWel-walk®️以外での歩行トレーニングでも遊脚期における膝の屈曲を可能とする歩容を達成する事ができ、より効果的な訓練プログラムとなる可能性がある。

Wel-walk®️使用による長下肢装具の在り方

2018年2月からWel-walk®️を使用した脳卒中片麻痺患者12名を対象とし、重度片麻痺患者へのKAFOの使用がどの様に変化したのかを検討するため、PT、OTにおける装具の使用状況に関して後方視的に検討を行った。(表1)
12名中3名の患者に本人用のKAFOが処方され、7名の患者は備品のKAFOの使用していた。2名の患者はKAFOの使用はなく、AFOの使用のみであった。

重度片麻痺患者へのKAFOの使用がどのように変化したのか、装具の使用状況に関して後方視的に検討した図
表1

理学療法では10名の患者はKAFOでの立位、歩行トレーニングを行い、2名の患者はAFOでの立位・歩行訓練を行なっていた。OTではKAFOの使用は本人用装具を処方された2名のみが装着下でのリーチング(写真2)など上肢、体幹機能訓練を行なっており、他の10名はADL訓練、装具着脱訓練を中心に装具の使用を認めた。

全ての対象患者においてWel-walk®️での歩行訓練以外に装具装着下での立位、歩行訓練が行われていた、しかしながらOTにおけるKAFOの使用は本人用を処方された2名にとどまり、備品のKAFOを使用する患者においては立位・歩行訓練のみの限定的な使用となっていた。KAFOの自由度制約を考えるとPTでの歩行トレーニングのみならず、OTにおいて体幹機能の賦活や意識レベルの改善目的でスタンディングテーブルでの上肢課題にKAFOを活用する事は理にかなっておりPT、OTにおける積極的な本人用装具の活用が望ましいのではないだろうか。 


 
写真2

まとめ

Wel-walk®️の臨床での活用により重度片麻痺患者への歩行トレーニングの在り方は大きくて変化した。より効果的なリハビリテーションを目指す為には前型歩行で遊脚期における膝の屈曲を可能とする歩行課題を設定する為、既存のデバイスをうまく活用する事、PTのみならず  OTでもKAFOの活用を進める事などが必要になるのではないだろうか。

Wel-walk®️はKAFO使用下での歩行トレーニングとの2極論で議論されるものではなく、KAFOの活用の在り方を十分に検討し既存のデバイスとしてWel-walk®️との併用を積極的に考える事が効果的な歩行トレーニングの在り方ではないかと考える。