検索

Close

検索したいキーワードを入力してサイト内検索をする

パシフィックニュース

コミュニケーション障碍の支援⑥ ~操作スイッチの適合技術~

AAC(コミュニケーション)

コミュニケーション障碍の支援⑥ ~操作スイッチの適合技術~

コミュニケーション障碍の支援⑥ ~操作スイッチの適合技術~

日向野和夫(KAWAMURAグループ・元川村義肢株式会社)

2019-10-01

操作スイッチの適合技術の連載3回目となりますが、前号のALSの続きから始めます。
また、筋力低下を伴う筋ジストロフィーなど進行性筋疾患の適合評価について更に話しを進めることにします。

ALS編 その3

頭部
スイッチの操作に適した頭部の動作の場合、左右の回旋動作、側屈動作の運動機能の評価を行う際に、体幹や頭部の姿勢の評価が重要となります。
車いすを使用されている状態では、導入当初は適切な車いすであっても意思伝達装置の導入時の現時点では症状進行伴い、再検討を要する場合があります。
不安定な姿勢の状態では、適切な操作スイッチの適合評価は困難といえます。動作の評価だけでなく、実用性の観点から操作スイッチの機種選定やその設置方法など当事者/家族の生活様式を勘案した総合的な評価が必要となります。

 
回旋動作ではほほ骨の設置が基本
回旋動作の場合、座位や臥位のいずれでも、「ほほ骨」に操作スイッチを設置することが基本となります。
側屈動作の場合も「ほほ骨」に触れる設置が同様に基本となりますが、頸部が側屈の起点となることから、最大運動が見て取れる「ひたい周辺」の側面に設置することもあります。

図1.回旋動作ではほほ骨

図2.コンパクトな固定具の形状

操作スイッチは、優位な運動方向の設置となりますが、従来の生活動作や介護作業に支障を来さぬ状態であることは言うまでもありません。状況によっては優位な動作側でない方の設置が妥当な場合があります。

 
動作は同じであっても姿勢によって設置部位は異なる
回旋動作でのほほ骨の設置が妥当となる条件は、頭部が正中位の状態にある場合となります。
頭部が正中位にない状態で「ほほ骨」に設置すると回転動作はセンサー部に触れることなく円を描く状態となります(図3)。

図3.メッセージメイト(VOCA)を使用

図4.伝の心を使用

非正中位の肢位での回旋動作の場合、耳朶に設置することで運動方向に直交する状態になります(図4)。繰り返しになりますが、操作スイッチの設置は運動方向に直交する配置が基本となります。

図5-1.耳朶

図5-2.耳朶

エアーマットの微少な変化は操作スイッチとの位置関係に影響を与えることから、時間経過による位置変化の影響度を評価する必要があります。意思伝達装置の短時間の試行による機種選定は、危うさを伴う状態にあります。

 
外部固定の限界
スタンダードアームによる固定では4mm以下の微少な動作の場合、微調整が極めて困難な実用性のない状態にあります。
また、エアーマットを使用している場合、セルの変化が操作スイッチと操作部位の位置関係に変化をおこし、触れたままの誤動作状態や接触できない操作不能な状態に陥ることになります。
 

微少な回旋動作

足部

座位・臥位の姿勢を問わず、足関節の底屈動作や足趾の屈曲動作の評価が基本となります。
足部のスイッチ操作では、膝関節の屈伸や体位交換などにより下肢の肢位が大きく変化するため、それに対応する設置や固定方法の工夫が必要となります。

足部の動作では底屈動作と母趾の屈曲動作の評価が一般的となりますが、座位の場合、股関節の外転・外旋動作の評価が必要となります
 

 

図6.股関節の外旋動作
底屈動作と母趾の屈曲動作の評価が一般的となりますが、座位の場合、股関節の外転・外旋動作の評価が必要となります。
車いす使用の場合、股関節の外転・外旋動作が優位な状態は、車いすのサイドガードと大腿部の間にディップスポンジ・センサーを差し込み、軽い動作での操作方法だけでなく設置も簡便な方法となります。

 

 

 

図7.下腿と設置場所の評価

図8.足部の支持

下肢・下腿と操作スイッチの位置関係や操作性などを評価するのが基本となります。
下腿と操作スイッチの位置関係からジェリービンスイッチではなく、薄型の手押しボタンスイッチが妥当なことが多々ある。押し込んだときに操作スイッチが滑り出さないように滑り止めマットを使用している(図7)。

足部の底屈動作によるスイッチの操作では、操作スイッチに下肢の自重が加重されぬよう、踵部にタオルなどで支持をする必要がある(図8)。

比較的筋力を有する身体機能であれば、操作スイッチの位置調整を自身で行えるようにタオルなどの足部の支持を不要な設置とする配置が好ましい。
導入の際に当事者や家族にこれらの使用法について的確な説明が今後の創意工夫の入口となることから必要となる。

図9-1.調整簡便な操作スイッチの固定具

図9-2.調整簡便な操作スイッチの固定具

一般的に操作スイッチの固定を外部から行う場合、スタンダードアームとなるが、ベッドのギャッジアップなどの繰り返しによって操作スイッチと足部の位置関係ずれ、その都度の調整が生じることになる。
弊社工場に2つの楔形の固定具組み合わせによる固定具を作成し煩雑な作業軽減を図ったことがある(図9)。

図10-1.動作の評価と固定台

図10-2. 安定した操作の評価

底屈動作を伴う母趾の屈曲動作が効果的に発揮される詳細な固定具の形状の評価を訪問看護ステーションのPTとスイッチの操作を共同で評価している。
継続的な操作による足関節の動きの変化などの使用に当たっての課題について検証を行った。

図11.完成品

最終的な手押しボタンスイッチの固定具の形状は単純な状態にしている。

 

テレビやエアコンのリモコンボタンを押すだけの力は無いが、動きはある

図12-1.母趾の屈曲動作

図12-2.母趾の屈曲動作

母趾の屈曲動作が効果的に発揮されるように足部をタオルで支持をしている。
ポイントタッチスイッチを固定するスタンダードアームの設置は、意思伝達装置を設置しているオーバーベッドテーブルに固定している。
母趾とセンター部の位置調整はグーズネックではなく、テーブルを動かす方法としている。

足部の底屈動作

図13.足部のクッションの間に設置

図14.足部の肢位に応じた傾斜設置

足部にクッションなど使用した生活では、底屈動作を感知する状態にディップスポンジ・センサーのロゴマークのある面が操作部位で押し付けるように設置します(図13)。
外転位の状態での底屈動作の運動方向に直交する設置が底屈動作を効果的に感知するよう傾斜設置となります(図14)。

図15.踵部に設置 

図16.足部全体に設置

踵部を折り畳んだ空圧容量のエアーバッグ・センサーに乗せた使用法は足部が安定した状態だけでなく、底屈動作の際の余計な部位の変化を感知しない(図15)。

進行に伴い、微弱な底屈動作を踵部だけでなく足部全体の動きを感知する状態が効果的な方法としてエアーバッグ・センサーを折り畳まず広げた状態の高めの空気圧にした形状の使用法に変更している(図16)。

図17.Ⅱ趾と母趾

図18.Ⅱ趾とⅢ趾の間

Ⅱ趾の微弱な屈曲動作が見て取れる状態にあり、母趾との間にピエゾ・センサーを差し込んでいる。
テープで固定しているが微少な動きのため、テープは不要な状態にある(図17)。
同じくⅡ趾の微弱な屈曲動作が見て取れる状態にあるがⅢ趾側にピエゾ・センサーを差し込んでいる(図18)。
このようにより効率的に微弱な屈曲動作を感知するかの目視の観察と試行評価が必要となる。
ピエゾ・センサーの表裏によって反応が異なる特性を持っていることから評価者は関係者に的確に説明をする必要があるのは言うまでもない。

 
痙性麻痺の出現
ALSは症状進行により重篤化した場合、動きが喪失する状態に陥ると捉えていることから、上位運動ニューロンの障害による痙性麻痺を残された動きと勘違いし、操作スイッチの再適合が可能と捉える支援者を見かけることが多くある。
可能性の追求は支援者にとって重要であるが、操作スイッチの使用が可能となる前提条件を忘れては意味がない。
 

筋ジストロフィー編

症状進行の程度によって優位な動作や操作部位が変化しますが、母指の動作が長期にわたり確保されることから変形拘縮の程度に関係なく、母指の運動機能の評価が基本となります。
 

図19.IP関節と中指の間にピエゾ・センサースイッチ
母指IP関節過伸展位の変形拘縮はあるが、母指のIP関節が中指に強く押し当てられる動作は見て取れる身体状況にある。ティッシュペーパーを握り込むことでピエゾ・センサーの接触部分を確実にしている。

 

 

図20-1.左手の評価 

図20-2.右手の評価

両手の母指の評価を行い、左右それぞれの動作の評価を行い、操作性と優位性を比較検討している。
左手は母指がクッションに押し付けられる状態にあり、母指と示指が密着していることからピエゾ・センサーを母指と示指に差し込む方法としている(図20-1)。
右手は手関節部の変形拘縮はあるが回外位の状態にあり、エアーバッグ・センサーによる操作が適切な状態にあった(図20-2)。

図21.母指と示指の間
目視にて母指の動作を観察し、併せて筋力評価のため母指と示指の間に指を差し込み、最大筋力となる部位の触診による評価を行っている。
最大筋力となる母指と示指の間にピエゾ・センサーを差し込む使用法にしている。



 

図22-1.タオルでの支持

図22-2.小さな座布団での支持

母指の動きを効果的に発揮されるよう手部をタオルなどで支持をしている(図22-1)。症状進行やベッドアップの角度などに応じて手部の支持の形態を変更する必要はある(図22-2)。

図22-3.ピエゾ・センサーの設置
ピエゾ・センサーを差し込んだ掌内の状態を視覚的に確認することは出来ないが、変形拘縮によって強く挟み込まれており、脱落や位置ずれが生じることはない。



 

図23-1.母指IP関節の側面

図23-2.母指球筋と中指

母指のMP関節の外転動作に対して関節側面にネット包帯で装着した状態(図23-1)で初めに試行評価し、母指球筋の動きと運動方向を評価し、ピエゾ・センサーの設置法(図23-2)に変更している。
ピエゾ・センサーを母指球筋と中指に差し込む方法にし、母指の動作を効率的に感知するように変更している。また、始めに使用したネット包帯を流用し、母指と中指のわずかな隙間を埋めることで更に感知度を高める状態にしている。

母指の外転(図23-2)

好ましくない装着の仕方

図24-1.母指球筋に貼付け

図24-2.MP関節に貼付け

ピエゾ・センサーを母指球筋の筋腹に貼り付ける方法は的確な設置部位を触診にて確認する方法となるが、ある程度の慣れを要する設置作業となり不適切な使用法である(図24-1)。

母指のMP関節にピエゾ・センサーを紙テープで母指の基節部に巻き付ける使用法は、装着脱着作業が繁雑となるだけでなく、脱着の際にセンサー部のトラブルが生じることが多い不適切な使用法である(図24-2)。

繰り返しになりますが、前号でもセンサー全体を覆う装着は、センサー部の歪みを抑制する好ましくない使用法と記述しています。

SMA編

小児の場合、症状進行に伴う運動機能の再評価が必要となることがある。

図25-1.母指の伸展動作

図25-2.母指の伸展動作

既に機器を活用しており、家族がいろいろと工夫をされていることが見て取れる状態にあったが、念のために評価を家族の依頼により行っている。
運動機能の評価では母指の伸展動作があり、タッチスイッチのセンサー部を感覚のフィードバックが得られやすいRCAケーブルを使用することにしている。
母指の伸展動作が効果的に発揮される手部及び母指の支持面について評価が必要となる。

進行に伴う運動機能の再評価

図26-1.前腕部の支持

図26-2.RCAケーブル

前腕部を中間位にすることで示指の伸展動作が効果的に発揮される状態にあり、試行評価のためにウレタンにて支持をしている(図26-1)。

ピンタッチスイッチの先端部をRCAケーブルに変え、その固定にブックエンドを使用している。準備不足ではあったが、病院にある電動玩具で動作の確認をしている(図26-2)。
 

ニューロパチー

図27-1.母指の内転動作

図27-2.ピンタッチスイッチ

母指のわずかな内転動作を支援者が作成した布製の固定ベルトで装着したピンタッチスイッチ(図29-1)で意思伝達装置を使用している。まだPPSスイッチが存在しない時の対応である。

図27-3.運動方向の評価
正確な母指の内転動作に直交する状態のセンサー部の接触箇所は基節骨であり、ピンタッチスイッチの設置方向は的確な状態にはなく、RCAケーブルに変更するなど必要であった。適切な操作部位と設置箇所は(図23-3)のようになる。



 

少し余談を

PPSスイッチ以前の圧電素子式スイッチ
ピエゾ・センサーのスイッチは米国PRC社の商品名「Pスイッチ」(図30)を以前より取り扱っていましたが、評価用の機器は極めて少ない実情にあって実物を手にしたことのない社員もいたいように記憶しています。
まさに、商品名のPの意味も知らずに取り扱っていた時代です。
 

図28.米国PRC社 Pスイッチ
9V乾電池、大小2つのセンサー、ベルト装着方式、反応音のon/off、出力のdelayなどの仕様であったと記憶しています。携帯性に優れた商品でした。
筆者の退職時に廃棄処分しましたので弊社には現存しませんが、某福祉プラザなどには展示されています。

Pスイッチの事例

それぞれのコメントは付けませんが、かなり前のALSの導入事例です。

図29.紙テープ固定

手関節にセンサーを装着している

図30.ベルト装着
MP関節に装着している

図31.MP関節の中指の伸展
中指の伸展動作が効果的に発揮されるようマットレス上に
ポリプロピレンのシートを敷いている。

さて、最終回となる次回は、SCD,MSA,CVAなど運動失調症の適合についてお話をいたします。
 
 
医療監修
小林貴代 森ノ宮医療大学 保健医療学部 作業療法学科長

 
参考文献
2000日本人体解剖学 金子勝治、穐田真澄 南山堂
2012 ぜんぶわかる筋肉・関節の動きとしくみ辞典 川島敏生 成美堂出版
 
関連文献
2016.9 重度障害者用意思伝達装置操作スイッチの適合マニュアル 三輪書店
2011. 7月号~12月号 地域リハビリテーション コミュニケーションをサポートする! 操作スイッチの適合技術三輪書店
2009.「重度障害者用意思伝達装置」導入ガイドライン 適合事例集 日本リハビリテーション工学協会
http://www.resja.or.jp/com-gl/case/index.html
2004.2 PPSスイッチのモニタリング報告 難病と在宅ケア
2006.2 状況に応じたコミュケーションの手法 難病と在宅ケア