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パシフィックニュース

V-trakで広がる可能性 事例報告

車椅子/姿勢保持

V-trakで広がる可能性  事例報告

(有)友の輪商事 シーティングエンジニア 望月 秀樹

2013-01-01

V-trakとの出会い

当社は静岡県藤枝市にあるオーダーメイド車椅子・座位保持装置・福祉用具販売レンタル業務をしている会社です。スタッフは営業5名、事務3名の8名で日々の業務を行っています。お客さまにとって最適な車椅子・座位保持装置を提供し、お客さまニーズに応えられるよう日々精進しております。

V-trakとの出会いは、営業先である(重度障害児・者)の生活介護事業所「でらーと」様から車椅子の依頼を受けたことから始まりました。各メーカーの車椅子(座位保持装置含む)を検討していたところタイミング良くパシフィックサプライ社の三好氏からV-trakの紹介をいただきました。今回は、V-trakの導入から今後の可能性までを販売店の立場から紹介させていただきます。

障害と求められる座位保持装置

利用者さまは四肢麻痺、四肢拘縮、脊柱右側湾、体温機能障害という障害を抱えており通常の車椅子では座位保持が困難です。また体温を常に34℃から35℃に保つ必要があります。季節の変化により衣類や毛布などで体温調整をしているので、型取りの時に一定の体幹部の幅を決めてしまうモールド型では、装置の適応条件が狭まり、アルミのソリッド背バックでは、モールド型のような立体的な形状が出来ません。

また、車椅子の背シートに後付けパッドを加えての支持は、パッドが体幹部の重さに負けてしまい支持しきれません。必要とされている装置は、季節ごとに体幹部分の幅を調整することが可能で且つ、モールド型のようにしっかり保持できるものでした。パシフィックサプライ社からV-trakを紹介された時、『利用者さまに適合出来るかも知れない!』と直感いたしました。

試乗と設定

早速デモ機を依頼し、試乗当日はV-trakインストラクター・杉本氏にも協力していただきました。V-trakの設定はモールド型の型取りを行う工程と似ている部分があります。『姿勢を決定する人』・『設定作業を行う人』と役割分担を決めて2時間程で終わりました。石膏を必要としないこと、ある程度の設定変更は車椅子に乗ったまま行えることが大きく違う点だと思います。その後1週間ほどV-trak装着の車椅子を試してもらいV-trakで適合できるという評価を受け、特例補装具として申請することが決まりました。

註: 一般社団法人日本車椅子シーティング協会が認定する「シーティングエンジニア」は、職業倫理やモラルの向上をはかるとともに、実践的な技術を高め、車椅子や姿勢保持装置などシーティングを適切に供給できる、より高い適合技術を持った技術者を養成することを目的としています。当協会が実施する養成講習会の課程を履修した後、同協会が施行する認定試験において、一定の合格基準に達したものにあたえられる協会認定資格です。

試乗の様子1

試乗の様子2

V-trakを装着した車椅子

姿勢保持的には問題なかったのですが納品・利用されて1年くらいで片側のバックシェルが破損したので圧が掛かる部分にサポート金具を追加しました(写真3)。デモ機で仮合わせする際圧力がかかったら弱いなと感じる箇所は分かるのでそれを見越して申請の際はサポート金具も忘れずに追加する必要があります。

写真1 分割バックサポート三連

写真2 骨盤後ろ部分に1つ腋下部分に1つとその下部分に1つ

写真3 バックサポート補強部品

その後の評価

実際にこのV-trakを利用されてから2年ほど経ちます。以前は長時間車椅子を使用すると姿勢の苦痛から泣き出すこともありましたが現在はそのようなことが無くなり、長時間の利用が可能になりました。また頭部が左に傾くことも無くなったそうです。特に、季節に応じて厚着や薄着になった時には、バックサポートの幅を微調整できることが最大の利点です。

車椅子・座位保持装置製作所から見たV-trak

どのような車椅子・座位保持装置も必ず長所・短所があります。私が感じたV-trakの利点はモールド型のように3次元での背形状の形成が可能であること、後々調整が可能であることです。

短所はバックサポート部分がプラスチック形状で出来ているためあまり圧が掛かると破損のおそれがあることです。(その箇所はサポート金具にて補強対応 上記写真3)設定の際には、初めに基準を決めて作業をしていかないと時間を要します。(講習会が定期的に各地で開催中です。)

やはり多数箇所調整が可能な分、耐久性は固定式のものより弱くなる面もありますが、今回の利用者さまは夏・冬と調整機能を上手に活用し、利用していただいています。

V-trakの可能性と完成用部品認可の期待

その後、モールド型での型取りが難しいユーザーさまへもご利用いただき、以前より体幹部、頭部が安定するようになったとの評価を受けています。分割バックサポートの組み合わせにより円背、側湾、また緊張の強い方の頭部支持まで、背部の正常な支持面を形成することが可能だと思われます。当地域では補装具の制度上、特例補装具として申請するため審査が通常の完成用部品より長くかかります。ユーザー様の為にも早く認可されることを願っております。

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