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脳血管障害患者へ下肢装具を使う組織的戦略

装具

脳血管障害患者へ下肢装具を使う組織的戦略

脳血管障害患者へ下肢装具を使う組織的戦略

~生活期まで見据えた連携~

大垣昌之 愛仁会リハビリテーション病院(理学療法士)

2014/12/15

はじめに

急性期医療機関でも、回復期医療機関でも日曜日祝日の稼動も多くなり、一人の理学療法士で患者を診る時代から複数の理学療法士で患者を診る時代に変わりつつある。そのような中、理学療法技術は個人の技術ではなく、どの理学療法士もチームとしての再現性がある技術として患者に提供しなければならない。脳卒中治療ガイドライン2009や理学療法診療ガイドライン第1版においても装具の有用性は述べられているが、装具を積極的に使用する理学療法士が決して多くはなく、施設内においても、装具の使用は、理学療法士の好き嫌いで随分左右されている現状がある。装具が患者にとって有益な道具である以上、理学療法士の好き嫌いで左右されることがあってはならない。

装具が有益な道具であっても、早期からの作製や使用に関しては、理学療法士の個人的判断や力量では限界や個人差があるため、施設内で標準化した組織的戦略が必要である。
また、装具は作りっぱなしではなく、生活期の装具に関しても現状を知り、退院後も一貫の流れとしてフォローアップできる体制を地域全体で構築していくことが必要である。
以下、当院における、装具回診、装具検討会、生活期の装具について述べる。

早期から装具使用の標準化-1

入院早期より、装具作製の可否が判断できず、装具作製が退院間近で行われていたり、装具作製が遅延することはないだろうか。その理由として①装具作製に関する知識不足②治療用装具としての知識不足③院内備品の過活用などがあげられる。

装具回診(図1)は、入院早期より装具必要の可否を判断し、装具検討会へ誘導することを目的に実施している。入院後2週間(2013年7月以降は入院1週間)を経過された脳卒中患者を対象に週1回行われる。回診者は医師(リハ医)、理学療法士、義肢装具士。

図1-1 装具回診

図1-2 装具回診

図1-3 装具回診

早期から装具使用の標準化-2

回診では発症からの期間、麻痺を含めた下肢体幹機能、理学療法の進捗状況などを確認し、回診にて装具作製の必要性を判断された症例を装具検討会(図2)へ誘導している。装具回診実施により、入院から装具検討会および装具作製までの日数が短縮し(図3)早期より自身の体にあった装具にて歩行練習を行うことが可能となった。装具回診の効果は(表1)を参考にされたい。


表1 装具回診の効果
①入院早期より装具作製の有無を確認することができる
②入院早期より装具を積極的に理学療法に取り入れることができる
③個人的な判断のみで装具検討会や装具作製になることがない
④他者(他専門職)の意見を確認することにより装具を積極的に理学療法に取り入れることが出来る
⑤退院間際に慌てて装具を作製することがない

装具検討会は、主治医から装具作製の処方があった場合や、理学療法士より装具適応と判断された場合や、装具回診により装具適応と判断された場合の全症例で実施している(図4)。装具検討会では、装具適応の有無、作製目的、装具種類などを確認する。参加者は、本人、医師(リハ医)、理学療法士、装具担当理学療法士、義肢装具士、医療ソーシャルワーカー(必要に応じ)である。1症例30分程度で実施している。

図2 装具検討会

図3 装具回診の効果

図4 当院による装具作成までの流れ

生活期の装具

在宅生活における装具の使用は、経過とともに下肢の状態が変化すると同時に装具も検討されるべきであるが、退院後も一貫してフォローアップできている病院および地域は少ない。
当院系列であるケアプランセンターの利用者457名のうち装具を使用している利用者数は44名(9.6%)であった。在宅生活では、プラスティックAFOの利用者が55.3%と多く見られた。また装具使用者のうち約1割が不適合性の問題を抱えていることも分かった。(図5)

実際に全国の在宅生活者においてどれぐらいの装具使用者が存在するかは定かではないが、在宅生活者の装具修理や装具再作製がすみやかに行われていないこともよく耳にする。在宅生活における装具使用は、経過とともに下肢の状態が変化すると同時に装具も再検討されるべきであり、退院後も一貫したフォローアップ体制が各地域で確立されることを望む。

その一つの手段として、装具に関する情報が共有できる装具ノート(図6)も有効であろう。装具ノート内には、装具作製病院、作製業者、作製年月日、利用制度などの装具に関する情報が記録されている。

装具に関する情報は、経過ともに希薄となりやすいため、患者、家族が、装具に関する情報を整理し保管していることで、再作製時や修理時などの必要時に過去の情報を伝達することで、円滑に対応できることに繋がる。地域内において、同じツールで装具に関する情報共有ができれば、地域内での在宅支援としても有効である。

入院中に、装具を効果的に使用するだけでなく、退院後も生活内にどのように装具を効果的に使用するのかを考えなければならない。このことは、理学療法士の個人的な努力では難しく、地域全体として考えなければならない。臨床効果とは、院内だけの効果ではなく、退院後も継続していることであり、その効果を確認することが今後一層求められるであろう。

図5 破損した装具

図6 装具ノート

まとめ

早期からの作製や使用に関しては、理学療法士の個人的判断にならないように、施設内で組織だった標準化が必要であろう。装具回診、装具検討会も、その一つの戦略であり、施設全体で議論する体制が重要である。

病院の機能分化が進み、地域連携が重要視されている中、装具に関する情報提供を含めた地域連携はまだまだ不十分である。装具に関する情報は、経過とともに希薄になりやすく、特に病院や作製業者が変わると、過去の情報が得られない中、装具の再作製や修理を検討しなければならない現状がある。地域内において、同じツールで装具に関する情報共有ができれば、地域内での在宅支援としても有用であると考える。患者、家族が、装具に関する情報を整理し保管していることで、再作製時や修理時などの必要時に、過去の情報を伝達し、円滑に対応できることに繋がることも期待できる。装具作製後のフォローアップとして装具ノートの役割は大きいものと考える。今後は、幅広く地域の病院や義肢装具作製会社と協力し、装具ノートを通じて装具に対する地域連携の一助になるような仕組みを更に構築していきたい。

今後ますます病病連携、病診連携、医療介護連携など様々な連携の重要性が謳われている。セラピストも一昔前より有資格者数が増え、介護老人保健施設や、訪問リハビリテーションなど生活期を対象に働くセラピストも増えつつある。病院や施設の機能分化が進むにつれて、一つの医療機関や施設のみでは対応できなくなってきており、患者・利用者のニーズに答えるためには、地域の専門職種同士において情報共有を含めた連携の在り方を検討しなければならない。

参考文献

1)大垣昌之:回復期医療機関における早期装具採型への試み~装具回診から装具検討会
へ 理学療法士の立場から~.脳血管障害への下肢装具カンファレンス2012論文集.
P6-7

2)大垣昌之:回復期医療機関における装具回診の効果.第28回日本義肢装具学会学術
大会講演集.P221

3)大垣昌之:在宅における装具使用の現状と課題.脳血管障害への下肢装具カンファレ
ンス2013論文集.P58-59

4)大垣昌之:装具における地域連携の在り方を考える~装具ノートの運用を通じて~.
第3回脳血管障害への下肢装具カンファレンス2014論文集.P52-53

5)大垣昌之:大阪府三島圏域地域リハビリテーション支援センターにおける連携~セラ
ピスト同士の取り組み~.大阪府理学療法士会誌.P43-47.2014.42

6)大垣昌之:下肢装具における地域連携のあり方 装具ノートを通じて.第30回義肢
装具学会学術大会講演集.P316.2014.30

 

第4回脳血管障害への下肢装具カンファレンス2015 演題発表募集のお知らせ

4回目の開催となる「脳血管障害への下肢装具カンファレンス」2015年は大阪会場と東京会場で開催いたします。装具療法の広がりに伴い、様々なリハビリテーション手法が提案・実践されるようになってきましたが、同時に問題点も挙げられるようになって来ました。皆様がリハビリテーション現場で得た成功事例、新しい提案等々様々なご発表をお待ちしております。

【大阪会場】
開催日:2015年2月21日(土)
会場: グランフロント大阪ナレッジキャピタル内 「ナレッジシアター」
JR大阪駅直結
募集演題数:16演題

【東京会場】
開催日:2015年3月28日(土)
会場: 現在調整中です。後日パシフィックサプライHP上でお知らせいたします。
募集演題数:16演題

申し込み手順詳細・演題発表お申込は、当社ホームページからお願い致します。
http://www.p-supply.co.jp/seminars/

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