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Ossur新世代の下腿義足製作技術

義肢

Ossur新世代の下腿義足製作技術

Ossurモジュラーソケットシステム(MSS)とIcecastアナトミーによる新世代の下腿義足製作技術

2010-01-01

現在、日本国内はもとより世界各国でIceross®(シリコーン製ソケットインターフェース)を用いた下腿義足ソケットが広く製作されています。糖尿病等の血行障害による切断者はもとより、外傷による活動的な切断者まで幅広い切断者に多くの効用をもたらしています。

Iceross®シリコーン製インターフェースは、義足ソケットの良好な懸垂装置として機能するだけでなく、断端全体の荷重支持性の向上、圧分散など力の伝達やソケット装着時の快適性を高めます。また、毎日の石鹸と水洗いにより常に清潔な状態を保つことができます。
最近では、切断者の日常生活動作や断端状況、断端長などの個々の要求事項に幅広く対応できるよう、材料であるシリコーンも様々な特性のものが用いられ、そのデザインや成型方法も多岐にわたっています。

Iceross®シナジーライナー
断端に直接接触する内層に軟らかなシリコーンを配置。その外側に硬いシリコーンを2層成型し、クッション性やはき心地の良さと断端の支持性向上、懸垂性能の獲得を両立しています。

Iceross®ウェーブデザイン
膝関節周辺部分を波型(ウェーブ形状)にデザインし、ライナーの伸縮性を20%増大しています。膝屈曲時の膝窩、膝蓋への負担や断端末部へのストレスを軽減します。

一方、シリコーンライナーは単独で機能を発揮するものではなく、義足ソケットとの組み合わせで様々な機能を発揮し、切断者に効用をもたらします。Iceross®はその特性から、下腿義足ではTSB(Total Surface Bearing 全表面荷重式)ソケットとの組み合わせが機能面でも、製品自体の耐久性(耐用期間)を高める上でも良好であるとされています。

本稿では、Ossurが開発したモジュラーソケットシステムとIcecastアナトミー加圧採型治具の組み合わせによる革新的なTSBソケット製作方法を紹介いたします。

Ossur MSSモジュラーソケットシステム

樹脂注型ソケットに用いる材料や製作手順を標準化し、常に均質なソケット製作を実現した革新的な下腿ソケット製作手法です。積層材として6層のガラス繊維(カーボン繊維仕様も有り)を用いています。ガラス繊維の遠位部分には予め専用の骨格構造義足部品接続アダプタが取り付けられています。ガラス繊維は縦方向には伸縮せず、横方向にのみ伸縮するように編まれていますので、1サイズでIceross®のサイズ18~36が適する断端に対応することができます。注型用樹脂としては2液混合タイプのポリウレタン樹脂を用いています。

MSSモジュラーソケットシステムによる効果
MSSは、医療用具の設計と製造基準であるISO13485の要求事項を満たしています。
例えば、二液混合により硬化を得るポリウレタン樹脂を用いることで、硬化時の温度を比較的低温に保つことができます。硬化温度を抑えることで有毒なガスを発生することがありませんので、病院内など換気能力が限られる施設環境でも安心してお使いいただけます。

また、義足部品として重要な強度についてもISO10328(A100+65%)を満たしており、体重160kgまでの全ての衝撃度(≒装着者の活動度)に耐えることができます。

このように、MSSモジュラーソケットシステムは、積層材料、注型用樹脂の標準化により、ソケット製作工程の安全性はもちろん、完成後のソケットの品質の安定も実現しています。

TSBソケット製作方法

このような手順により、陰性モデルが完成します。陰性モデルから陽性モデルを起こし、陽性モデルに修正を行います。
修正は断端の採寸値に対して、近位部3?4%、遠位部1?2%、断端末部0%というような容積の削り調整を主に行います。Iceross®シリコーンライナーとの組み合わせでは、ソケットとライナーとが全面接触をした上での、全表面荷重が好ましいとされていますので、腓骨頭周辺や脛骨稜、骨端など圧耐性が低く、従来であれば盛り修正を施した部分には、シリコーン製分圧パッドを貼り、そのかわりとします。

Icecastを用いた採型では、実際の切断端の容積と陰性モデルの容積との一致の確実さが増す。機構上の特性により採型中に断端をわずかに引き延ばすので、ピンなどの遠位懸垂機構を用いたソケット装着時の断端の長さを陰性モデルでとらえることができる。断端を適切に引き延ばすことで、断端軟部組織の支持性を向上することができる。
このような利点が得られます。

このような利点を持つIcecast加圧採型治具により、ハイドロスタティック(流体静力学)原理を応用したTSB全表面荷重式ソケットの実現に近づくことができます。

改良型のIcecastであるIcecastアナトミーでは、空気室を大きく二つに分け、断端にあたる内側の空気枕が断端軟部組織の形状を整え、それを包む外側の空気枕が空気圧を断端全体に加えます。

これにより、実際の切断端から、

  1. 断端の形状(輪郭)
  2. 断端の容積
  3. 断端の長さ

を直接とらえることができます。これは、陽性モデルの修正を通して、それぞれを設計していた従来の製作手法とは大きく異なるものです。

MSSモジュラーソケットシステムにIcecast加圧採型治具を組み合わせて用いることで、切断端への採型過程をそのまま下腿義足本ソケットの製作過程とすることが可能となります。

MSSダイレクトラミネーションソケットの製作手順


樹脂カートリッジを少し振り、専用のインジェクションガンにセットします。カートリッジの先端に取り付けた混合用チューブを樹脂が通過することで二つの樹脂が混ざり合い、硬化が始まります。
樹脂が一時的に硬化するまで10分以上の時間がありますので、落ち着いて作業することが可能です。

樹脂を注入し終えたら、注型作業を行います。
樹脂は下方に溜まりやすいので、前方近位に浸透するよう充分に作業を行います。加圧採型治具をかけ、あらかじめ確認した空気圧を加えます。10分ほど硬化するのを待ちます。加圧をしても樹脂は近位にはほとんど上がりませんので、しっかりと注型します。注型後、加圧までの作業を迅速に行うことが重要です。

硬化後、治具を取り外し余分なガラス繊維をカットし、上縁の処理を行います。2液混合により低温で硬化するため、上縁部に気泡などが出ていないため、ヤスリや耐水ペーパーで簡単に上縁を整えることができます。

樹脂の混合後、およそ1時間で荷重に耐える強度を持ちます。上縁の処理や義足部品の組み立てアライメント設定をその間に行います。

モジュラーソケットシステムとIcecastを組み合わせたMSSダイレクトラミネーションソケットを用いることで、採寸から試歩行までがわずか90分程で可能となります。短時間で義足製作が可能であるばかりでなく、MSSは病院内など、製作所以外の施設でも安全にお使いいただけることが国際規格に沿って確認されています。また、専用の採型治具以外には専用の加工設備機械なども必要としません。そういったことで、病院内での義足製作にとても適しています。

Iceross®シリコーンライナー、Icecast加圧採型治具との組み合わせにより、懸垂性能と荷重支持性に優れたソケットをコンスタントに製作することも可能になります。

このような特性は、義足リハビリテーションの可能性を広げ、義足供給サービスの品質を大きく高めるものといえます。

MSSダイレクトラミネーションソケットに組み合わせる最新の義足足部

フレックスフット アシュア
ゆっくりとした一定の速度での安全な歩行の実現を目的に設計した最新の義足足部です。従来のシュアフレックスの後継製品です。
足長は日本人にも使いやすいよう19㎝からそろえております。比較的安価で軟らかなカーボンをかかと、前足部ともに用いています。かかと接地時の衝撃吸収による歩行安定性の獲得とエネルギーの蓄積性能に優れるだけでなく、前足部つま先まで最大にカーボンを伸ばすことで、義足側の立脚末期まで確実に身体を支えます。左右のストライドがそろい歩行の効率が高まるだけでなく、非切断肢側への衝撃や負荷も軽減します。
高齢の末梢血行障害による切断者に特に適する足部です。

ヴァリフレックスEVO, Energy Vector Optimization
軽量で高性能、シンプルな設計で耐久性にも優れています。
非切断者と変わらない歩行の獲得を可能にする足部です。
高品質のカーボンを足部全体に用いることで、変形によるエネルギーの蓄積とその返還効率に大変優れています。
職場まで通勤し、様々な職種で働き、週末にも外出し余暇を楽しむ。そのような生活動作の中で起きる、歩く速さや歩き方の変化に追随できるよう設計した足部です。
新たに外側のカバーを全面改良し、EVO機能を加えることで、歩行効率がさらに高まりました。また、裸足歩行時の歩き心地の良さも向上し、これまで以上に多くの方にお勧めできる足部として、その完成度がさらに高まりました。